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2023年12月26日

【アートライティングコース】「書物は熟しきった果実のように私の手のなかではじけ、あるいは、魔法の花のように花びらをひろげて行く」エイゼンシュテイン

こんにちは。アートライティングコース教員の大辻都です。
我がコースは完全オンラインでどこにいても学習できるのが最大の特徴……なのですが、今月ついに学生同士が顔を合わせて学べる機会が訪れました。今日は初めて開催された藝術学舎講座「アートライティングと届けるかたち」の様子をレポートします。


「アートライティング」とは文字通り、アート=芸術や文化など人の営みについて文章にまとめることです。コースでは文章を書くことを学ぶのはもちろん、これをいかに発信するかという視点でも考えを進めていきます。
今回の2日間の講座では、各自が書いたアートライティングを思い思いの紙の媒体カレンダーやZINE(ジン:個人的な規模で自由に作る小冊子)にして完成させるということを目指しました。
担当はコース主任の大辻と美術作家でデザイナーでもあるかなもりゆうこ先生の2人体制。それぞれ文章執筆と紙媒体制作の指導にあたりました。
1日目は主に文章執筆と個別添削、推敲の時間です。
嬉しいことにコースの学生・卒業生だけでなく、他コースの学生、一般の方も参加されたので、冒頭ではアートライティングについて、また文章を書くコツについて導入の講義を行い、大辻がカレンダー用に用意した文章例を解説しました。
やはり見本となる文章があった方がイメージが湧きやすいと思い、講義の前の週から、月ごとの季語をテーマに、好きな俳句、その俳句や季語を解釈したミニエッセイ、同じ季語を使った自作の俳句で構成する250字から300字程度の文章を12種類、必死で仕上げました。
またかなもり先生は、数々のご自身のお仕事を紹介しつつ、紙の豊かさや種類の違い、それらがどんなかたちに変身するのか、豊富な材料を見せながら教えてくださいました。
学生はそれぞれカレンダー用の12種類の短い文章か、ZINEの記事としての文章いずれかの素案、あるいは下書きを準備しています。
完成した方から順に、教員が1対1で仕上がった文章を読み、添削していきます。なるべく持ち味を活かしながら、効果的な表現に直したり、文のリズムを整えたり、あるいは読者を惹きつけるようなタイトルをつけたり。その場で20人分のテキスト全文を読み、コメントするのはなかなかスリリングな作業でした。
面談が終わったら各自自分の文章をブラッシュアップし、入稿できるまで整えていきます。
全員が入稿を済ませたところで1日目終了。
2日目の朝、テーブルの上には、かなもり先生がインデザインで体裁を整えてくださったそれぞれの原稿が数種類、ずらりと並んでいます。
2日目はかなもり先生による「紙もの」講座がメインです。手仕事が中心となるので、私も前夜からハンドクリームを塗り込み、指先をなめらかにして臨みました。
まずは紙もの作りに慣れるための練習として、全員でミニノートを作成。表紙用の紙を切り、ページを構成する白い紙と合わせて作っていきます。白い紙は一枚ずつ種類もさまざま。重ねて折りながら、色や手触り、透け感など微妙な違いが味わえました。ページの中心に目打ちで穴を開け、そこに思い思いの色糸を通して綴じ、ノートを完成させます。
持参した別紙や小物で独自の装飾を施す人たちもいました。
次には折り紙を使って、ZINEにするための朝顔型の折りを練習しました。何だか小学生時代の工作の時間を思い出す時間です。3回練習しましたが、かなもり先生のような、余計な線のつかないきれいな朝顔型に仕上げるには、もうちょっと多くの練習が必要そうです。
このウォームアップを経て、いよいよカレンダー、ZINE作りの開始です。私はカレンダーを選びましたので、擦り出された紙を前に、トンボの内側の線を間違えないようにプロ仕様の刃に付け替えたカッターでカットしていきます。
最大限注意したにもかかわらず、1ヶ月分だけなぜか寸足らずとなりましたが、そこはご愛嬌……
まずはブックスタイルのカレンダーを一冊完成。次に1ヶ月ごとに独立しているカレンダーとカバーに挑戦していきます。封筒型と長方形のケース型、それぞれの型紙が用意されており、1枚の色用紙を綿密に測りながら切って作ります。
数人グループのテーブルで作業しますが、皆さんどんどん作業が進んでいる様子。もたもたしながら迷っていると、すかさず手助けの声がかかります。いつしか「大辻先生」ではなく「大辻学生」と呼ばれている始末……
ZINE作成の様子を見ると、そちらも皆素敵な仕上がり。「そっちもやりたかった!」と目移りする瞬間でした。
2日目の夕方、テーブルに並んだ全員の作品は色もかたちもさまざまで「壮観」のひと言でした。
少し鑑賞タイムを設けて他の受講者の作品を手に取って見たあと、一人ひとりが2日間の講座と自作に関する思いを順にコメントしていきます。
アートライティングコースの学生、卒業生はもちろん、他コースの学生、一般の方々、書くことと自らの手を使っての発信について、それぞれの視線や考えを交換できた時間でした。
今回初めての試みで、全員が文章を書き上げ、作品を作り上げるところまで漕ぎ着けたのはよかったと思います。さらにそれぞれの作品をじっくり鑑賞し、合評まで進めるのを目標にしたいですね。来年の講座に向け、またアイディアを練っていきます。
今回強く意識したのは、書く行為の身体性ということでした。手作業での媒体作りももちろんですが、「書く」ことそのものも決して頭の中だけの作業ではなく、手を使ったり、歩いたり、人と喋ったりする身体的な経験が、出てくる言葉の質や量に影響してくるように感じています。
そしてあらためて紙の本の価値について。インターネット、電子書籍の普及が著しい世の中ですが、こんな時代だからこそ、それ以前の時代にはさほど意識していなかった紙の本の物質的意味について意識が行くようになった気がします。
1枚1枚の紙の違い、それぞれの個性や美しさ、インクとのバランスなどに目を留めると、中身の文章だけでなく本そのものへの愛着が深まっていきます。
自分らしい文章と発信、両者が結び合わされた視点で、さらに「書くこと」について考え続けたいと思う2日間でした。

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