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和の伝統文化コース

2024年02月03日

【和の伝統文化コース】伝統文化をどのように研究するか〜卒業研究を振り返りながら

みなさん、こんにちは。和の伝統文化コース教員の葛西周です。本コースでは、伝統文化を実践的に学んで視野を広げ、さらに関心に応じて研究テーマを見つけて知見を深めて、研究成果の総括として「卒業研究」に取り組みます。例年12月に提出が締め切られ、1月はその口頭試問の時期です。

和の伝統文化コースの卒業研究は、非常にバラエティに富んでいます。今年度指導を担当した論文の研究対象も、和文様、和歌巻、柿渋、銘仙の買継商、菊の意匠、「道」の概念など、多岐にわたりました。本コースには、これまで茶道や謡を嗜まれていたり、着付けを仕事にされていたりと、もともと特定の伝統文化と接点があり、それに関する問題意識を持って入学する方も少なくありません。「何を研究するか」には迷いがない一方、「どのように研究するか」を検討するのに苦戦している様子もよく見られます。

文化の思想や歴史を研究する上で、資料を収集し考察する過程は不可欠と言えますが、書状や日記、記録、書物などの文字で記されたもの以外にも、さまざまなものが資料になり得ます。今秋の「伝統文化II-4 伝統文化の諸問題」という授業では、そのような「非文字資料」について扱いました。私が専門としている音楽・芸能研究の分野では、紙に書かれた資料としては楽譜が広く用いられてきましたし、楽器や装束も、それらが作られ、使われた時代・地域の技術や様式を伝える重要な資料です。音楽や舞踊、芝居の上演のような無形のもの、そしてその録音や録画も分析対象となります。

さらに、絵巻物や浮世絵、写真のような図像資料も、楽器の形状や上演慣習・機会の変化を視覚的に示してくれます。現在進めている研究プロジェクトでは、温泉地での芸能の実践をテーマとしていますが、その着想を得たのも、温泉を描いた浮世絵や錦絵で楽器を演奏する様子が目に留まったことがきっかけでした。

楊洲周延「上野国伊香保温泉浴客病痾全快祝宴(部分)」(1881年、東京大学総合図書館所蔵)



今年度の卒業研究でも、図像資料を効果的に活用した例が見られました。たとえば、茶道具類を入れる仕覆の結びの変遷をテーマにした論文では、室町時代から現代に至るまでの故実書や作法書、装飾結びの図説などにおける結び方の図解が比較検証されていました。また、ファッションにおける昭和初期の挿絵画家の役割に着目した論文では、当時の女性雑誌に掲載された着物の図案やコーディネートの挿絵を徹底的に集め、読者に影響力を持っていた人気挿絵画家たちが雑誌を介していかに流行を発信したかが論じられました。

関心のある対象と向き合い、それについてより豊かに思考するための方法には、限りがありません。数々の方法をまた来年度の受講生のみなさんと探求できることが、今から楽しみです。

オンライン入学説明会開催中(1月~3月毎月/コース別)

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