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書画コース

2024年03月23日

【書画コース】展覧会をやってみよう!…でもどうやるの?編

みなさん、こんにちは。書画研究室の松岡です。春の兆しを感じつつもまだまだ寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

/16は卒業式。書画コースの一期生の方々が卒業されました新コース設立後、初の卒業生の晴れやかな笑顔と学友の方々・先生方との交流を拝見し胸が熱くなりました。完全遠隔コースということもあり、学びの不安や創作のもどかしさを感じた時もあると思います。そんな時、air-Uコミュニティなどを活用し、励まし、意見交換しながら一緒に成長されていることを実感しました。素晴らしい出逢いですね。

私から卒業生、在学生の皆さんにお伝えしたいことは、出逢いを大切にして欲しいと言うことです。学友との出逢い・心にグッとくる作品との出逢い・自らの創作のいたらなさとの出逢い・新たな表現との出逢い。創作は、自分の心に正直になることで自然と生まれるものです。これからも沢山の出逢いを大切にして、学友と切磋琢磨しながら楽しく創作を続けていただけますと幸いです。

さて、卒業ということは…「これまでの学びを発表したい!」「夢であった個展を開催するぞ!」と決意を実行される方もいらっしゃるのではないかと存じます。在学生も自主企画展を計画されているかも知れません。

今回のブログでは、「展覧会をやってみよう!…でもどうやるの?編」と題しまして、不肖ながら画家として活動しております私の展覧会準備の流れを簡潔にご紹介いたします。概要ではございますが、初めて展覧会をされる方、展示ってどうやるの?と不安を感じておられる方のご参考と活動の一助になれますと幸いです。お見苦しいメモばかりですが、ご愛嬌と言うことでお許しください。

―展覧会を開く大まかな流れ


コンセプトを決める−創作の骨格をしっかり作ろう



作品を作る−コンセプトに応じた素材、技法、サイズ、展示方法を考える



会場を探す−立地・設備・費用・期間を検討。※会場を決めてから制作を始めてもOK



ダイレクトメール(DM)を作成−料金別納郵便やSNSのみでの広報



キャプション・作品リスト・ステイトメントなど印刷物を作成



DM発送、SNSなどで広報



会場に搬入−自主搬入・業者搬入、展示サポートスタッフをお願いする



開催−芳名録・接客・展覧会の記録撮影etc. 新しい出逢いを大切に!



会場から搬出−搬入と合わせて依頼しておくとスムーズ

学生生活はあっという間です。せっかく出逢えたのですから、air-Uコミュニティで先輩方や経験者に相談、情報共有をしてより良い展覧会にしていきましょう!

―コンセプトを決める−創作の骨格をしっかり作ろう


どんなテーマで何を展示するかを決めます。書画の歴史や文脈を踏まえて、今を生きる自分は何を表現するのか。これが一番大切なポイントです。まさに骨格です。コースで学んできたことを活かし、何度も練り直して組み立てましょう。また、いつ開催するのか予定を立て、予算や作品数なども計画しましょう。

―作品を作る−コンセプトに応じた素材、技法、サイズ、展示方法を考える


決めたコンセプトを軸に制作をしましょう。まずは紙に描くのか、軸物に仕立てるのか、屏風を発注して直書きするのか、展示方法、創作のアイデアスケッチ・写生などの「入力」に力を入れましょう。

ちょっとしたアイデアも、メモに残すことで意外な結びつきでひらめくこともあります。先人らの創作のチャレンジに学び、形式に囚われず自由に発想しましょう。

アイデアがまとまったら、次は「出力」です。

紙一つでも画仙紙、楮、三椏、雁皮、麻、ブレンドと性質が異なります。表現に応じた画材選びも大切ですが、失敗はつきものです。想定と違うこともしばしば、全ては経験と考えて軌道修正しながら制作を進めましょう。

額装や表具は時間がかかるため、2週間程度を見込んでおきましょう。依頼するお店の方に事前に相談しておくことが必須です!!また、作品のサイズ、点数も意識しましょう。小さな作品も魅力的ではありますが、ぜひ、大作にも挑んでいただきたいです。

私は基本が大作主義のため、最大7mの巻物や2m〜160cm程度の作品(大きい割にアトリエは無く、3畳ほどの部屋で制作と生活をともにしています…)が多いのですが、初めての方は、パネル規格であれば50号(1167×910mm)、3尺×6尺(900×1810mm)、全紙(700×1360mm)などからチャレンジしてみると良いでしょう。

大作制作では、より下図が重要になります。同じ比率にした紙を用意し、構図構成など熟考することをオススメします!私も何枚も描き、日を置きながら手直しして練り上げていきます。自分の領域を超える大作は刺激的で楽しいですよ!

―会場を探す−立地・設備・費用・期間を検討。※会場を決めてから制作を始めてもOK


展示のイメージが出来上がって来ると、会場を探しやすくなります。会場は貸しギャラリーが中心ですが、美術館の貸館(予約がすぐに埋まるため要注意)などもあります。近年ではカフェでの展示など様々です。普段からアンテナを張って候補をリストアップしておくと良いでしょう。

その中から、展示イメージや空間・予算が合うところを選びます。何より実際に会場を見に行くことが大切です!!イメージを掴んだり、立地、雰囲気、想定した展示ができるのか、実際に展覧会を見たり、図面、設備、使用規約を確認することが大事です。

①図面から実際に展示した場合の面積などを出して、作品がどれだけ飾れるか把握しておきましょう。

②料金は賃料だけの場合と、売上の何%かを支払う場合などがあるため、オーナーさんや規約を確認し、予算に合わせて検討します。

③会場の予約は1年前、少なくとも数か月前にはしておきます。人気のところは2年前から予約で埋まっている場合もあり、情報収集しておきましょう。

④会場でレンタルできる備品や展示作業の確認をしましょう。壁面に釘やピンを打てるのか、テープの使用はできるのか、ピクチャーレールや展示台は使えるのか、持ち込めるもの、飲食の可否などの確認もします。

⑤会場の写真を撮らせてもらい、作品のレイアウトを考えるときに図面だけでは分からない部分を補いましょう。

⑥搬入搬出の日時を確認。

⑦梱包資材を預かってもらえるか、持ち帰るかを確認。

⑧自分が在廊できないときに接客をしてもらえるのか、サポートスタッフを依頼しないといけないのか確認

下見だけでもチエックすべきことがたくさんあります…大変ですが実現のためめげずに確認しましょう。

―ダイレクトメール(DM)を作成−料金別納郵便やSNSのみでの広報


案内状(ダイレクトメール・DM)を作ります。デザインは自作し印刷会社に入稿する場合の他に、デザインから印刷まで外注の場合があります。書画コースにはDMをデザインされた方もいらっしゃいますし、air-Uコミュニティを通じて他の専攻の方に依頼するのもいいでしょう。

DMの内容としてはタイトル・作品写真・日時・開催場所・地図・連絡先などを記載します。実際に作るとなったとき、何気なく手にしてきた案内状を見る目が変わります。情報を詰め込み過ぎず、展示コンセプトがシンプルに伝わるデザインをしましょう。

「料金別納郵便」とデザインで入れてもらうと切手が不要になり、郵便局でまとめて支払えます。詳しくは郵便局でご確認ください。

次に枚数の決め方ですが、郵送する分+手渡しする分+会場に置く分などです。余裕をもった発注がオススメです。また、私はSNSでの有料広告を使用しています。拡散力も費用対効果も高いため、ミックスした広報を心がけています。

―キャプション・作品リスト・ステイトメントなど印刷物を作成


キャプションは作品のタイトル、ふりがな、使用した画材、制作年、金額などを選んで書きます。手書きの方もいらっしゃいますし、形式は様々です。大きさは自由ですが、私はエクセルでA4用紙一枚に数枚分レイアウトして印刷し、ハレパネ※1に貼ってからカットしています。      

(※1ハレパネ:発泡スチロール製のボードで粘着面があり、印刷した紙を簡単に貼ることができるものです。100均などで簡単に入手できます。)

ステイトメントは展覧会の骨格を伝えるものです。会場入口に設置しておくと、在廊の有無によらず展覧会のコンセプトや作家の想いを知りたいと感じられた方が読んでくださいます。作品リストは搬入出など作品管理のために用意しておくと混乱なく行えます。

DM発送、SNSなどで広報


展覧会の1ヶ月前を目処に発送・広報します。早く出しすぎると展示予定を忘れられてしまいますし、遅すぎると他の予定が入ってしまって来ていただけないこともあります。

また、DMの送付者リストを作っておきます。どなたに出したか分からなくなるのを防止と宛名印刷ができるためです。新しい方を追加して使えるので便利です。

―会場に搬入−自主搬入・業者搬入、展示サポートスタッフをお願いする


いよいよ展示です。搬入出では梱包が重要です。エアキャップや紙管、図面ケースなどに入れて運びましょう。大事な作品なので破損などないよう、隙間を埋めるなど細心の注意を払いましょう。

梱包すると中身がわからないので、作品画像を貼る又は養生テープに名前や作品名を書いて貼っておくと積み忘れや紛失のリスクを減らせます。

設営に必要なメジャー、水平器、釘やピン、ハンマー、マスキングテープなど必要と思われる道具も持参します。(ギャラリーの備品でお借りできる場合もあります。)

そして、あらかじめ決めておいた作品レイアウト図も忘れずに持っていきます。設営時間も決められていますので、設営計画を作ることでスムーズに設営できます。ですが、実際に設営してみるとイメージと違うこともよくあります。先日ARTISTS FAIR KYOTOでは大作中心であったために4時間ほどかかりました。現場でライティングや配置を修正できる時間を組み込んでおくと安心です。

―開催−芳名録・接客・展覧会の記録撮影etc. 新しい出逢いを大切に!


いよいよ開催です。緊張と不安を感じますが、これまでの結晶が形にできたのですから、まず楽しむことが一番です。知人が来てくださると嬉しいですが、せっかくの機会ですから新たな人との出会いを大切にしましょう。思いもよらない出会いがありますし、嬉しいコメント、手厳しいコメントもあります。作品を世に出した時点で避けられないことです。全て受け入れる必要はありませんが、自作を客観視するための参考にしましょう。

ですが、要注意なのは不当な要求や悪意あるコメントをする方です。残念なことですが、近年ようやく話題になった「ギャラリーストーカー」などの問題もあります。作家の性別や年齢に関係なく問題になっていますし、しつこく連絡先を求められたり、買うような素振りをしながら長時間居座る、プライベートで会おうとするなどがあります。私も被害にあっています。

この場合は、おかしいな、こわいな、などと感じたら、ギャラリーの方に用事があるふりをして現場を離れたり、報告するなどしましょう。対応力のレベルアップと考えると気持ちが落ち込まずに済ます。

展覧会の記録撮影は忘れてはいけない大切な作業です。展示の様子がわかるように人がいないバージョンと開館中のバージョン、作品単体で撮影しましょう。

スマートフォンのカメラ性能も高いため、問題なく撮影できます。記録のし忘れだけは要注意です。

―会場から搬出−搬入と合わせて依頼しておくとスムーズ


展示が終わったら決められた時間内で搬出します。梱包が大変ですが、ここで手を抜かず、慌てずに梱包しましょう。

自分の作品すべてを梱包し終えたか確認し、清掃します。ゴミが出ますのでゴミ袋を持参して片づけます。壁に空いた穴は穴埋め用パテで修繕するなど、会場規約に沿って行いましょう。

―まとめ


長文になりましたが、以上が基本的な流れとポイントです。

ほとんどのことを一人でやらなければならないので段取りが全てです。グループ展をしたい・個展をしたいと思っている方の参考になれば嬉しいです。

まだまだ深掘りはできますが、百聞は一見に如かず。まず体験し、肌感覚で得た感覚を大切にしていただきたいと思います。はじめは締め切りに追われ、慌てるでしょうが、展示を成功されるためのステップと考えてクリアしていきましょう。

最後になりましたが、卒業生の皆さんがコースで学び育てた「自分のものさし」を信じ、創作を続けていただきたいと思います。仕事や子育てなどそれぞれのご事情もあるかと思います。なかなか理解を得られないことや自分で続けていく難しさを感じもするでしょう。

そんなときは、これまで自分がやり遂げてきたこと、作品を振り返ってみてください。作品たちがきっと支えてくれます。そして、手を動かし、創る中で得られる発見は何よりも大切です。そこに創る喜びと救いがあると信じています。他人の拍手を求めるのではなく、自分自身で拍手を贈れるようにしましょう。 

少しでも卒業後の活動(在学中の方の活動にも)の一助になることを願っています。それではまた逢う日まで。

 

【WEB卒業・修了制作展】
日時:2024年3月10日(日)~3月31日(日)
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/graduationworks/

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