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和の伝統文化コース

2024年04月09日

【和の伝統文化コース】大河ドラマ「光る君へ」でわかる平安時代の建物

みなさま、こんにちは。和の伝統文化コース非常勤講師の叉東(さとう)愛です。
今年の大河ドラマ「光る君へ」の舞台は、平安時代ですね。
江戸時代や戦国時代に比べ、平安時代を再現したドラマはそう多くはありません。
この機会に映像で平安時代の文化を観てみましょう。

そこで今回は「光る君へ」に登場する平安時代の貴族邸宅について、少しご紹介させていただきます。
吉高由里子さん演じる紫式部や、貴族たちが住んでいる邸宅は、寝殿造(しんでんづくり)と呼ばれる建物です。なかでも段田安則さん演じる藤原兼家の邸宅、東三条殿(ひがしさんじょうどの)は、寝殿造の代表的なものです。次の画像は、国立歴史民俗博物館の東三条殿の模型です。



大きいですよね。
まず建物群は、中心となる寝殿という建物を中心に、渡り廊下で他の建物と繋がります。敷地内には中庭や、寝殿の南側に広場状の南庭、そして東三条殿くらい大きい邸宅になると、船遊びや楽舞の舞台となる池がありました。寝殿造の構造は、靴を脱いで上がる高床の板間で、外側の柱と柱の間は蔀戸(しとみど)という板戸が、内側の柱と柱の間は、障子(襖障子)と呼ばれるパネル状の壁がはめ込まれています。
蔀戸というのは、次の画像のように、上部を跳ね上げ、下部は取り外して別の場所に置くか、上部だけ跳ね上げて下部をそのままにする、といった開け方をする戸です。
画像は大覚寺の蔀戸ですが、上部だけ跳ね上げた様子です(障子は現在の仕様)。



「光る君へ」をもうご覧になった方は、この邸宅をどう思われたでしょうか?開放的な感じがしませんでしたか?蔀戸を全て開け放った室内は、柱と床だけのとても開放的な空間となるのです。

そしてこの開放的な室内空間は、御簾(みす)や屏風、衝立(ついたて)などの調度品で仕切られていました。
この時代にはまだ引戸や、和紙を貼った明障子、床の間などはなく、天井も張られていません。畳は、位の高い人が座る場所にだけ敷かれました。
寝殿造で見られる私たちがイメージする和風住宅の特徴は、高床くらいでしょうか。平安時代ならではの空間構成や、美しい調度品にも注目して、「光る君へ」を観てほしいと思います。

次に屋根に目を向けると、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根だったとされています。
檜皮葺とは、針葉樹であるヒノキの樹皮を利用したものです。樹皮を葺いた屋根は海外にもありますが、日本ほど美しく昇華させた建築はなかなかありません。次の画像は、2020年に屋根の葺き替え修理を終えたばかりの京都清水寺本堂の檜皮葺屋根です。



とても優美な檜皮葺屋根て、私はしばらく見入ってしまいました。
日本の建物の屋根には、みなさんもよくご存知の瓦葺屋根があります。瓦葺屋根は、飛鳥時代に寺院の建築技術のひとつとして伝来し、奈良時代、平安時代の公的な建物は瓦葺で、檜皮葺は私的な建物に用いられました。しかし平安時代中期以降になると、次第に檜皮葺が最も格式の高い葺き方となり、今では多くの国宝や重要文化財等の屋根に使用されています。

以上、ほんの少しですが、大河ドラマで観ることができる平安時代の建物についてお話しさせていただきました。建物の他にも衣装や食文化など、時代考証がされた映像を、ぜひ楽しんでほしいと思います。

参考:世界大百科事典

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