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2024年04月12日
【和の伝統文化コース】観劇レポート「逸青会」-尾上菊之丞・茂山逸平 二人会-
こんにちは。和の伝統文化コースの雨宮智花です。
桜前線の待ち遠しい今日この頃、いががお過ごしでしょうか。
今回は、本コースにて「伝統文化実践I-1(伝統芸能)E1」という日本舞踊のスクーリングをご担当頂いている、
尾上菊之丞先生の公演を見にいってきましたのでレポートさせてください。
「逸青会」とは、大蔵流・茂山千五郎家の狂言方能楽師である茂山逸平さんと、日本舞踊家である尾上先生がアイディアを持ち寄って、舞踊と狂言の新たな可能性を追求する会のことです。2009年に結成され今回は15周年とのことでした。
2023年12月、京都公演(金剛能楽堂)と東京公演(セルリアンタワー能楽堂)があり、本公演では横内謙介さんが原作、藤舎貴生さんが作曲を手がける新作「ひまわり」が、落語家の古今亭菊之丞さんがゲスト出演のもと、4公演全てで披露されました。
その他の演目では、京都公演では尾上先生と尾上京さんによる舞踊「粟餅」、茂山逸平さんと茂山茂さんによる狂言「栗焼」が披露されました。そして東京公演では尾上先生のご長男・羽鳥嘉人さんによる舞踊「末広狩」、茂山逸平さんと茂山茂さんによる狂言「無布施経」、尾上先生による舞踊「賤の苧環」、茂山逸平さん、茂山茂さん、茂山七五三さんによる狂言「茶壷」が披露されました。つまり公演された4公演全ての内容が違うというものでした。
舞踊「末広狩(長唄)」では、羽鳥嘉人さんは登場から愛らしく、思わず笑みがこぼれました。しかし、いざ踊りはじめると、その美しさや切れ味に大変驚きました。腕を大きく空にあげるしぐさでは、腕の角度がまっすぐで翼のように見えました。見られることを意識されていらっしゃるのだろうと、大変感激いたしました。また2022年8月には尾上右近さん率いる「第七回 研の會」の『夏祭浪花鑑』では、尾上右近さんが演じる団七九郎兵衛の倅市松役を羽鳥嘉人さんが演じられていました。堂々とした台詞を覚えています。尾上流の初代家元の訓示「品格、新鮮、意外性」が大切に受け継がれているように感じました。
新作「ひまわり」は、
実話をベースにインパクトのあるお話でした。ロシアによるウクライナへの侵攻が開始された2022年の2月、ウクライナ南部ヘルソン州ヘニチェスクでロシア兵と対峙するウクライナ人女性がニュースになりました。「何しに来たの?」と尋ね、兵士のポケットにひまわりの種を入れるよう促します。そして「あなたがウクライナの土地で死んだ時に助けはこないだろう。少なくともひまわりの花が咲くだけだ。」と伝えます。このエピソードを軸にお話しが展開します。
現在もなお紛争のなかにあるウクライナ人、ロシア兵、日本人が能舞台に現れる内容でした。タイトルにひまわりとあるように、残念ながら兵士に渡したひまわりの種が成長してしまう過程があったということです。能舞台の上でそれぞれが心の内を話し合います。憎み合ってなどいない、見てみぬふりは出来ないと、気づいた時、ひまわりに変化が訪れます。茂山逸平さんによる「このあたりの者」、古今亭菊之丞さんによる「ひまわり」、尾上先生による「ウクライナの女性」、三者はもがき苦しみながらも、解決へ向けて考え続ける姿を私達に見せて下さいました。
当日の会場では、スクーリングを受講された学生さんに数名お会いしました。「授業内容とリンクする場面もあり、スクーリングの仕上げをした気分です。」と仰っていました。2024年も尾上先生のスクーリングは開講予定となっています。現在、尾上先生の講義が受講できるコースは、和の伝統文化コースだけとなっています。貴重な機会をお見逃しないように、お伝えいたします。
≪参考文献≫
株式会社グローヴィス「Qualitas ―第17号特集FEATURE 大いなる継承―」2022年、星雲社
Web Premium Japan 「Premium Salon尾上菊之丞日記~よきことをきく~2023.12.30
https://www.premium-j.jp/premiumsalon/20231230_33271/#page-1
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