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2024年09月02日
【和の伝統文化コース】スクーリングでの宝塚歌劇『ベルサイユのばら』観劇
みなさん、こんにちは。和の伝統文化コース教員の葛西周です。先日、「伝統文化実践I-1(鑑賞と批評)」というスクーリング科目の一環として、受講生のみなさんと宝塚大劇場へ観劇に行きました。

この科目は、日本の舞台芸能についての基礎知識を身につけ、実際に公演を鑑賞して考察し、レポートをつうじてそれを言語化できるようになることを目的としています。「面白かった」「出演者が素敵だった」「この演目が好きだ」というような主観や印象を超えて、公演を客観的に捉える目や耳を養うことは、芸能研究への第一歩です。とりわけ生の公演では、一秒一秒、舞台の端から端まで、ときには客席通路も使って絶えずさまざまなことが同時進行します。したがって、たとえ専門家であろうと、その場で起こるあらゆる出来事を把握できるわけではありません。これが公演の記録映像であれば、その映像の作り手がフォーカスする部分を選び、切り取ったあとのものを私たちは視聴することになります。しかし、生の公演を鑑賞する際には、何に注目するかを各自で取捨選択しなければならない、というわけです。そこで事前講義では、公演をどのような切り口で批評する可能性があるか、いくつか例を紹介しながら検討する時間を持ち、それを手がかりに自分なりの見どころ・聴きどころや論点を探すことを課題としました。
この科目で学外スクーリングを担当することが決まった際に、和の伝統文化コースのみなさんにぜひ鑑賞してほしいと選んだのが宝塚歌劇でした。なぜ伝統文化のコースで宝塚歌劇を扱うのか、と疑問に思われるかもしれません。今回初めて宝塚歌劇を観劇したという受講生も多く、授業を受けるまで宝塚歌劇は華やかなドレスを着て歌ったり踊ったりする西洋風のミュージカル劇団という印象で、「和の伝統文化」とは対極のように感じていたという声もありました。しかし、大正初期に生まれた宝塚歌劇は、そもそも歌舞伎をモデルとしつつ世界に通ずる「国民劇」へと改良することを目指しており、今もなお歌舞伎の影響が端々に表れています。そして、西洋の音楽・舞踊を吸収し、それまでの日本の芸能と接続させながら独自のスタイルを確立してきたという点で、近代日本における舞台芸能の歴史的展開を象徴する存在のひとつと言えます。

今年は宝塚歌劇110周年、そして『ベルサイユのばら』を宝塚歌劇で初演してから50周年の記念すべき年にあたり、今回幸運にも私たちは雪組公演『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』を観られました。観劇後、話に花を咲かせる受講生のみなさんには、生の舞台に圧倒される驚きや喜びが満ち溢れていました。興奮冷めやらぬまま、劇場内の展示施設「宝塚歌劇の殿堂」にて事前講義で紹介した革新的な演出家やスターの展示を見学したり、フィナーレで背負われる大羽根の大きさを実感したりと、思い思いに余韻を味わいました。

事後レポートでは、歌舞伎との舞台機構や心情表現の比較、女性が男役を演じることでの発声の工夫、同一楽曲の場面による使い分け、マンガを舞台化することでのキャラクター造形の独創性、物語の展開に即したメイクや衣装の変化など、バラエティに富んだ力作が集まりました。
本コースでは、このように多様な芸能に生で触れられる授業を用意しています。学生のみなさんがそこからより多くを読み取って、自分のことばで表現できるようになることが目標です。これまで観劇には縁がなかったという方こそ、入学をきっかけに挑戦して、ときに圧倒されながら、視野を広げられることを期待しています。

阪急宝塚駅前の宝塚歌劇100周年記念像(以下、写真はすべて葛西撮影)
この科目は、日本の舞台芸能についての基礎知識を身につけ、実際に公演を鑑賞して考察し、レポートをつうじてそれを言語化できるようになることを目的としています。「面白かった」「出演者が素敵だった」「この演目が好きだ」というような主観や印象を超えて、公演を客観的に捉える目や耳を養うことは、芸能研究への第一歩です。とりわけ生の公演では、一秒一秒、舞台の端から端まで、ときには客席通路も使って絶えずさまざまなことが同時進行します。したがって、たとえ専門家であろうと、その場で起こるあらゆる出来事を把握できるわけではありません。これが公演の記録映像であれば、その映像の作り手がフォーカスする部分を選び、切り取ったあとのものを私たちは視聴することになります。しかし、生の公演を鑑賞する際には、何に注目するかを各自で取捨選択しなければならない、というわけです。そこで事前講義では、公演をどのような切り口で批評する可能性があるか、いくつか例を紹介しながら検討する時間を持ち、それを手がかりに自分なりの見どころ・聴きどころや論点を探すことを課題としました。
この科目で学外スクーリングを担当することが決まった際に、和の伝統文化コースのみなさんにぜひ鑑賞してほしいと選んだのが宝塚歌劇でした。なぜ伝統文化のコースで宝塚歌劇を扱うのか、と疑問に思われるかもしれません。今回初めて宝塚歌劇を観劇したという受講生も多く、授業を受けるまで宝塚歌劇は華やかなドレスを着て歌ったり踊ったりする西洋風のミュージカル劇団という印象で、「和の伝統文化」とは対極のように感じていたという声もありました。しかし、大正初期に生まれた宝塚歌劇は、そもそも歌舞伎をモデルとしつつ世界に通ずる「国民劇」へと改良することを目指しており、今もなお歌舞伎の影響が端々に表れています。そして、西洋の音楽・舞踊を吸収し、それまでの日本の芸能と接続させながら独自のスタイルを確立してきたという点で、近代日本における舞台芸能の歴史的展開を象徴する存在のひとつと言えます。

宝塚大劇場外観
今年は宝塚歌劇110周年、そして『ベルサイユのばら』を宝塚歌劇で初演してから50周年の記念すべき年にあたり、今回幸運にも私たちは雪組公演『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』を観られました。観劇後、話に花を咲かせる受講生のみなさんには、生の舞台に圧倒される驚きや喜びが満ち溢れていました。興奮冷めやらぬまま、劇場内の展示施設「宝塚歌劇の殿堂」にて事前講義で紹介した革新的な演出家やスターの展示を見学したり、フィナーレで背負われる大羽根の大きさを実感したりと、思い思いに余韻を味わいました。

宝塚歌劇の殿堂での大羽根体験(モデルは事務局職員・山本さん)
事後レポートでは、歌舞伎との舞台機構や心情表現の比較、女性が男役を演じることでの発声の工夫、同一楽曲の場面による使い分け、マンガを舞台化することでのキャラクター造形の独創性、物語の展開に即したメイクや衣装の変化など、バラエティに富んだ力作が集まりました。
本コースでは、このように多様な芸能に生で触れられる授業を用意しています。学生のみなさんがそこからより多くを読み取って、自分のことばで表現できるようになることが目標です。これまで観劇には縁がなかったという方こそ、入学をきっかけに挑戦して、ときに圧倒されながら、視野を広げられることを期待しています。
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