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染織コース

2025年02月21日

【染織コース】今年度の卒業制作スクーリングが終わりました

皆さんこんにちは。染織コースの久田多恵です。今年度の卒業制作に関する授業がすべて終わりました。今は3月に開催される卒業・修了制作展の準備を進めています。大学内を大きな美術館のようにして通信教育課程、学部の卒業制作、大学院の修了制作が展示されます。インターネットで作品を見ることができるWEB卒業・修了制作展もあります。ぜひ今年度の力作をご覧ください。

2024年度「京都芸術大学 通信教育課程 卒業・修了制作展」

卒業・修了制作展の案内状



さて展覧会に先立っていくつか作品をご紹介したいと思います。ウェブサイトでの公開を承諾されている方を中心にご紹介します。また染織コースの卒業制作に関する授業は染の技術を使った作品を制作するクラスと、織の技術を使った作品を制作するクラスに分かれているのですが、私は織の授業に関わっているので織作品を取り上げます。(制作者が書かれた作品コメントを参考にしています)

作品:こころ模様



こちらは「こころ模様」と題された作品です。細い幅で織った布を多数縫い合わせています。感性と理性が支え合い、せめぎ合い、折り重なって刻々と移りゆくこころの姿を織作品として制作したかったということです。赤い色は感性を、青い色は理性を象徴しています。二つがせめぎ合い混ざり合って全体の色を構成しています。丹念な手作業が迫力となっています。

 

作品:確かなる自我



こちらは「確かなる自我」です。綴織ですが立体的に織られています。織物は平面ではなく立体的な構造を持っているのですが、この作品ではワイヤーを骨組みとしてさらにレリーフ状の構造を形作っています。環境的要因によって生まれる自我を表現しました。綴織で彫刻のようなレリーフを作りたいという構想は、試作を通して実現されました。

 

作品:紫にのみこまれゆく大夕焼



こちらは着物と帯、帯揚げ、帯締め、半衿、草履がセットになった作品「紫にのみこまれゆく大夕焼」です。ウォーキングの時に見た壮大な夕空が紫色に変化していくさまを着物一式で表現されました。織や染だけではなく組紐の技術も学んで制作されました。

 

作品:思い出の



こちらは「思い出の」という題名です。フサフサと糸が織り目から出ています。たて糸によこ糸を結びつけるようにして織っていくノッティングという技法です。生まれ育った家の記憶、いつか形はなくなってしまうのですが織作品として残すことができました。四つのパートに分かれていて、上下の形がピッタリと合うようにできているのが工夫された点です。

 

作品:よせる波 −liberté・forme traditionnelle(きらめき・夜明け前・日が暮れて)−



沖縄の海のイメージをテーマに制作された「よせる波 −libertéforme traditionnelle(きらめき・夜明け前・日が暮れて)−」です。壁にかける作品と帯三点を組み合わせています。自分の中にある海の印象をどのようにしたら表現できるかを探究されました。平織に加え、ロートン織やななこ織、たて糸に染めた絣をずらす方法など、多彩な技法を使われました。

 

作品:黒い花は黒い花



「黒い花は黒い花」という不思議な題名です。織る前のたて糸にスクリーンプリントで黒い花を先染め(さきぞめ)しています。連続して同じ黒い色の花を染め、その後でいろいろな色を使ってよこ糸を織り込みました。同じ黒い色の花も、周りの色によって見え方が変わる。見え方が変わっても黒い花であることに変わりはない。物の見え方と心のありようを重ねて表現されました。

 

作品:入り江の村



この広々と広がる風景の綴織(つづれおり)は宇和島の入り江をモチーフした「入り江の村」です。生まれ故郷の自然と村の変化を懐かしく思い出しながら織り上げられました。輝く海の色や山々の連なり、明るく暖かな空気の粒子まで表現されているようです。

 

作品:冬を着る −シロ−



こちらは「冬を着る −シロ−」です。長く厳しい北海道の冬が見せる素晴らしい景色を半纏の形に表現されました。白い色の中にもさまざまな色味を使い、背中と袖には織組織の模様が入っています。後ろに掛かっているのは膝掛けで、すべて手紡ぎの羊毛糸が使われています。

 

作品:青の記憶



こちらは「青の記憶」という題名の着物です。普段見慣れた海だけれど、その色や波の動きの変化で刻一刻と移り変わる姿を見せてくれます。たて糸のグラデーションで深い色味を追求し、よこ糸の大胆な構成を組み合わせることで広がりや動き、輝きを表現されました。

 

作品:桜 −浅春の空にたたずむ−



こちらの着物は「桜 −浅春の空にたたずむ−」です。信州の厳しい冬を耐え忍び、凛とたたずむ桜の木がモチーフです。清々しい空色の中に、ほころびかけたつぼみをイメージした花の色がたて絣の技法で染められています。淡い黄色と緑の絣も春のおとずれを感じさせます。

 さてさて他の作品も力作揃いなのですが、こちらで紹介する作品はここまでとします。実物を展示する展覧会では間近に織り目の細かいところまでご覧ください。展示の工夫も見どころの一つです。WEB展では教員による作品解説も掲載する予定です。どうぞお楽しみに!

 



 

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