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2025年06月07日

【写真コース】在学生卒業生の活躍2025年度-1  KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 サテライトイベント「KG+」と京都市内のその他の展示

みなさんこんにちは。写真コースの勝又公仁彦です。春になり今年度も無事にスタートしました。スクーリングも始まり、慌ただしい日々が続いています。そんな中、写真コースの在学生卒業生たちの活躍を以前の私の投稿から引き続いてお送りいたします。今回は京都で開催された国際的な写真祭KYOTOGRAPHIEのサテライトイベント「KG+」での、写真コースの在学生や卒業生、そして大学院生、さらには講師・教員が行なった展覧会を紹介します。

■伊藤妹さん:「Intangible~カタチノナイモノ」

在学生の伊藤妹さんは、KG+ SPECIAL 2025にて「Intangible~カタチノナイモノ」と題した展覧会を、京都駅ビル7階 東広場北ピロティで開催しました。現代社会が視覚的な評価に傾倒しがちな中で、彼女は香りや記憶、感情といった「無形のもの」が持つ深い力に着目。香水を媒介として自身の記憶や感情と重ね合わせながら、目に見えない感覚的な存在を可視化するという実験的な試みを行いました。香りの持つ癒しや記憶の力、視覚を超えた美の世界を探求する、示唆に富んだ展示となりました。



作家による制作動機
幼い頃、祖母と歩いた道をふと思い出すことがあります。
その記憶は、どこか不確かで曖昧です。まるで誰かに植え付けられたような、他人の記憶のような輪郭をしていながら、祖母の香水の香りだけは、私の感覚に深く息づいていて、「これは私の記憶だ」と確信できるのです。

 これまで私は「見えないものを可視化する」ということを作品のテーマにしてきました。
しかし今回の制作では、そのベクトルを少しずらして、「見えないものを感じる」ということに意識を向けました。
視覚偏重のこの時代において、「見る」以前に「感じる」ことの力を問い直したかったのです。
「百聞は一見にしかず」という言葉が当たり前のように口にされる社会に、小さな揺さぶりを与えてみたかったのです。

 私は、自分自身の記憶をうまくアーカイブできないという感覚を持ち続けています。
だからこそ、視覚だけでなく、嗅覚、味覚、触覚、聴覚――五感すべてを用いて記憶を刻み込むような作品を作りたいと考えました。

 今回の作品では、まず友人に香水にまつわる話を聞くことから始めました。
そのときに食べた食事や飲んだコーヒーの味や香り、空気の温度、会話の速度や間、友人の表情といった身体的な情報も含めて、一つひとつ丁寧に記憶していきました。
その体験を持ち帰り、記憶をたぐり寄せるようにしてストーリーにまとめ、言葉に変換し、刺繍として縫いとめていきました。

 刺繍したのは、話を聞かせてくれた友人のうち数名のエピソードです。
言葉が刺繍として写真がプリントされた紙に留められることで、語られた記憶が視覚化されるだけでなく、紙に触れる、縫う、という行為を通して、より深く体に沁み込んでいくように感じました。

 また、友人にも刺繍制作に参加してもらいました。
他者の話を縫うこと、自らの記憶を手を動かしながらかたちにすること、そのプロセスそのものが「共有」の実感となり、作品の一部として存在すると思えました。
話を聞くという行為の複雑さ、解釈の揺らぎ、言葉が人を介して変容していく面白さ。それはまさに、人間そのものを映し出すように感じます。

 人は一人では生きていけません。
だからこそ、すれ違う誰かの言葉に立ち止まり、耳を澄ませ、香りや手ざわりのようなかすかな感覚と共に記憶を共有することの尊さを、私は信じたいと思っています。

 さらに私は、友人たちの香水ボトルを借り、その香りを身にまといながら一日を過ごし、写真に記録しました。
香りがふわりと立ち上るたびに、その持ち主のことを想起し、「もし自分がその人だったら」と想像する。その感覚は、他者へのまなざしを柔らかくする入口になりました。

 香水ボトルの写真、刺繍された言葉、香り、手ざわり、そして語られたストーリー。

 私はカタチノナイモノを静かに取り戻し、再構築しようと試みました。
その行為そのものが、生きていくための確かな力にならないだろうか。



タシロユウキさんのブログより
https://www.hyperneko.com/entry/2025/04/12/100000?fbclid=IwY2xjawKkAXJleHRuA2FlbQIxMQBicmlkETFqelBxaGNBd09KRmI2SnhQAR5FqNnfQC67pBMcB2HbPYUGt69jsTWfAOrbgtdiVlZTxvYUbsKuSg7G4FORkQ_aem_yQ7bbBS1Rkx32FXxIuaNDg

伊藤妹さんの今後の展示予定
①個展
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202504/20250423.html
HAKODATE LOVE ART」第2弾 ~函館へ、アートを探しに~
タイトル:カタチノナイモノ
会期:6/21(土)~6/29(日)
会場:金森赤レンガ倉庫・BAYはこだて BAYギャラリー ※営業時間:09:30-19:00

②個展
タイトル:未定
実施期間:9/1(月)~9/28(日)
実施場所:ふるもと珈琲店
神戸市中央区多聞通4-4-11

③アートフェアー参加
KIAF SEOUL2025 出展予定
2025/09/03-2025/09/7
https://www.coexcenter.com/events/kiaf-seoul-2024-korea-international-art-fair-2/

 

■尾山直子さん:「耳をすます」

2020年度卒業生で現在大学院生の尾山直子さんは、KG+にて個展「耳をすます」をGOOD NATURE STATION 4F GALLERYで開催しました。

この作品は、「最期に聞きたい音は何か」という問いを50名以上の幅広い年代の人々に投げかけ、彼らの「耳」の写真を撮影するというユニークなアプローチで制作されました。

それぞれの問いかけから引き出された、多様で豊かな死生観が語りとして紡がれ、二つとない「耳」の写真と並置されることで、その語りに確かな存在感を与えていました。

かつては暮らしの中にあった「老いや死」が現代では遠ざけられがちな中で、尾山さんは市井の人々の「生と死の物語」を表現として社会に提示し、多様な死生観との出会いを通じて豊かな時間と思考を育むきっかけとなることを願う、深く問いかける作品でした。

展覧会に合わせて、写真集も発刊されています。

『耳をすます』 書籍販売web|https://mimi-sumasu.stores.jp/

尾山直子さんofficial webhttps://oyamanaoko.studio.site/

 

■セノオシノブさん:「Ritual」

2024年度卒業生のセノオシノブさんは、KG+にて個展「Ritual」をArt Spot Korinで開催しました。

この作品は、長年の共同生活の中で互いに影響し合い、同質化していく夫婦関係を深く考察したものです。鏡に映る自分の顔が妻の顔のように見えてくるほど心地よい関係が、本当に理想的なのかという問いを立て、その答えを探るために互いを写真に撮り合ったり、協力して一枚の写真を作り上げたりする行為を続けました。

数年間続いたこの行為は、まるで答えが外側から降ってくることを願う「儀式」のようでもあり、二人の関係性を記録し、記憶を積み重ねていく日常の「習慣」のようでもあったと語られています。夫婦の関係性とその中で生まれる無意識の変化を、写真を通して表現した示唆に富む展示でした。

展示に合わせて、写真集も発刊されました。作品コンセプトに合わせて、ご夫婦で手製本されたそうです。

セノオシノブ web https://shinobu.senoo.art

東京でも個展が開催されるそうです。ぜひご覧ください。
セノオシノブ写真展「Ritual
新宿 北村写真機店 B1F ベースメントギャラリー
2025
531()-202566() 10:00-21:00
https://www.kitamuracamera.jp/ja/information/exhibition/senoo-shinobu-ritual/

 

■ダニー・モリオカさん:「境界のない余白」

2020年度卒業生のダニー・モリオカさんは、KG+にて「境界のない余白」を鴨葱書店で開催しました。日本最古の学生自治寮である京都大学吉田寮を舞台に、2017年から通い続け、宿泊も重ねて撮影した作品群です。一人ひとりの独立した個性が緩やかに繋がり、多様な価値観が共生する吉田寮の独特な時間と暮らしの一端を丁寧に捉えました。寮生や集う人々との対話は、彼に自分と他者、内部と外部の曖昧な関係性や、その境界がはっきりしない「余白」の心地よさという多くの気づきをもたらしたと言います。本展示では、写真の隣に「寮生たちの言葉」が展示され、鑑賞者は寮生たちとの対話を通じて、吉田寮に流れる独特な時間と居心地の良さを体感する機会となりました。

 

■松本紀子さん + フジタカツミさん:「Sweet Strange Symphony」

2024年度卒業生の松本紀子さんとフジタカツミさんは、ユニット「pianoise」としてKG+にて「Sweet Strange Symphony」をANTIQUEbelle ギャラリーで展示しました。

リリカルなピアノ曲を愛聴する松本さんと、ノイズミュージックを愛聴するフジタカツミさん、二人の異なる音楽的嗜好がそれぞれの写真に溶け合い、独自の視覚世界を創り上げました。

音の対比が視覚を通して表現された、ユニークなコラボレーションでした。

本展のために制作されたサウンドトラック(全4曲)
『 soundtrack for Sweet Strange Symphony Vol.1 by pianoise』https://fkxmusic1.bandcamp.com/album/soundtrack-for-sweet-strange-symphony-vol-1

フジタカツミさんは2025年6月下旬 初写真集「レシート・モンスター・ショー」を、みらいパプリッシンクの新レーベル・keuより発売。書店、Amazon等で販売の予定です。

松本紀子さんは写真展『Looking for the beauty. #植物編』 を開催予定です。
日時:2025年6月6日(金)ー 9日(月)12:00 ~ 19:00
場所:Flower Atelier Sai Sai Ka   岡山県岡山市北区内山下1丁目14-19畠瀬ビル1階

松本紀子さんのインスタグラム
https://www.instagram.com/noriquita/

 

■明森弘和さん、楠瀬美樹さん、風香さん、楡金由美子さん、オオキヨシマサさん:「絵画と写真の交わり ─ 視覚芸術としての共通性の探究」



2023年度卒業生の楠瀬美樹さんと2024年度卒業生の明森弘和さん、風香さん、楡金由美子さん、オオキヨシマサさんの5名は、KG+にて「絵画と写真の交わり ─ 視覚芸術としての共通性の探究」を堀川新文化ビルヂング Gallery NEUTRALで開催しました。

この展示では、古くから相互に影響し合ってきた絵画と写真の共通性とその進化を深く探求しました。

写真が現実を捉える手段として発展する中で絵画の理論が応用され、逆に写真の写実性が絵画を抽象や個性へと向かわせた歴史的背景に触れつつ、現代における両者の境界を超えた融合による多層的な表現が紹介されました。

絵画の主観性と写真の写実性が組み合わさることで生まれる新しい芸術表現の可能性を示す展示となりました。

akemori hirokazuさん、楠瀬美樹さん、オオキヨシマサさんによるグループ
A place for photographers.
https://apfp.myportfolio.com/

風香さん、楡金由美子さん、オオキヨシマサさんが参加する卒業生在学生によるグループ展
DOT.s」会期:2025.7.1()~7.6() 会場:名古屋市民ギャラリー

楠瀬美樹さんwebsitte
https://miki-feeling.org/work

風香さんwebsitte
http://fuka-photo.com/

楡金由美子さんwebsitte
https://yumikoniregane.myportfolio.com/

オオキヨシマサさんwebsitte
https://ysms1214.myportfolio.com/

オオキヨシマサさん写真集「Artifacts in the mountains
https://mugensha.blue



■京都芸術大学大学院 写真・映像領域 修了生展

京都芸術大学大学院(通信教育)写真・映像領域の第1期生有志13名による修了制作展が、同時代ギャラリー(ギャラリーA &コラージュプリュス)で開催されました。この中には、学部写真コースの卒業生である日向秀史さん、菊地真之さん、嶋岡恭司さん、norimasa ejiriさん、森屋早苗さんも含まれていました。コロナ禍を経て新設された本領域で2年間学び、切磋琢磨しながら完成させた作品群は、彼らの学びの集大成であると同時に、現代社会へと新たな問いを投げかける挑戦となりました。本展では、「人間の生によって変容する風景」「ポートレートが生み出す新たな関係性」「写真・映像装置を介した知覚の拡張」という3つのテーマの連関が提示され、各自が個人の作家として追求した表現を通じて、現代社会の多様な側面を鮮やかに浮かび上がらせました。多彩な視点と鋭い洞察が凝縮されたこの修了生展は、私たちの時代を捉える新たな光となりました。

https://www.dohjidai.com/gallery/exhibition/a20250429/

 

■京都芸術大学大学院 写真・映像領域 修了生のその他の展示

京都芸術大学大学院(通信教育)写真・映像領域の修了生の中には、KG+において他にも個別の展示を行った方がいました。

宮下五郎さんは、eN artsにて、キュレーター清水穣氏による「showcase#13 “ひとの気配 – Human signs”」展に出品されました(山崎雄策さんとの二人展)。

また、松岡克幸さんは、大徳寺塔頭龍源院にて「松風を抜けて」と題した展示を行いました。

 

■講師・教員の展示

写真コースの講師や大学院教員もKG+に参加し、その活動を広げました。

講師の澄毅さんは、node hotelにて「Les fantasies – かつて / そこに / あったもの-」を展示し、岩橋優花さんはPURPLEにて「光の根」と題した個展と同名の写真集を発刊されました。

大学院教員の菅実花先生は、顏鵬峻さんと共にKurasu HQ UGにて「Unreal-Real 輪廻重生」を展示しました。

 

■KG+期間中に京都市内で行われた在学生・卒業生のグループ展

KG+の期間中、京都市内ではKG+には含まれないものの、写真コースの在学生・卒業生によるグループ展「untitled」がギャラリーマロニエで開催されました。

このグループ展には、Akiko Nakamuraさん、すばるさん、八木勝己さん、Y.Miyashitaさん、2nd halfさん、雨露咲花さん、池田真由美さん、井上真理子さん、emikoさん、SATOKOさん、そしてHiromi Moritaさんといった在学生や卒業生が参加し、それぞれの表現を追求した作品を発表して京都市内の芸術シーンを彩りました。

http://www.gallery-maronie.com/exhibitions/space5/8958/

 

いかがでしたでしょうか。まだまだここに紹介することができない多くの卒業生、在校生が、個展やグループ展や出版活動にて作品を発表したり、展覧会のキュレーションやコンペの審査員に指名されたり、ギャラリーの運営と企画をしたり、イベントへの登壇やワークショップの開催などをしています。今後もそんな卒業生、在校生の活躍をお届けしていきます。

他にも活躍する先輩多数。写真コースの卒業生インタビューは以下に。
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/course/photo/?_ga=2.251434950.1778354707.1617178840-1378375267.1408769619&_gac=1.254429946.1617601289.CjwKCAjwx6WDBhBQEiwA_dP8raqQtZkQxKUhxjrjmFXFMTaS1EHOrFyEEujTKjfIoktVQhiEH5w9lhoCtjIQAvD_BwE

写真コースブログでも学生や教員の活動の情報を発信しています。
https://tsuushinsyashin.blogspot.com

学生卒業生も投稿している公開のFacebook グループはこちら。https://www.facebook.com/groups/376701939181733/

 

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