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2025年06月27日
【染織コース】ハイドロサルファイトコンクとは
皆さんこんにちは。染織コースの久田多恵です。つい先ごろ自宅で本を整理していて『ハイドロサルファイト・コンク』をふと手に取りました。花村萬月さんが書かれた本です。(2022年 集英社)普段、小説はあまり読まないのですがこちらは書名が気になって購入しました。

なぜ気になったかというとハイドロサルファイトコンクは染色でよく使う薬品だからです。私たちはハイドロと省略して呼ぶことがほとんどです。染色以外でもハイドロハイターという花王の商品がありました。還元漂白を行うための漂白剤です。(2025年3月末をもって製造は終了)

染色では還元漂白剤として、またスレン染料や藍染の還元剤として使います。酸化と還元については習った覚えはありますが詳しく説明できる自信はありません。酸化は物質が酸素と結びつく反応。還元は逆で物質から酸素が奪われる反応です。酸化型の漂白剤も還元型の漂白剤もあるのでややこしいですね。

スレン染料や藍は、染色できる状態にするためにハイドロを入れます。還元して染められる状態にすることを「建てる」と言います。藍染ではハイドロを使わず微生物の働きを利用して「発酵建て」も行われます。昨年度から行われている「藍の學校(実践型アートマネジメント・人材育成プログラム)」では発酵建ての藍染を体験するプログラムもあります。
info@ainogakko.jp

漂白することと染色することは逆のような気がしませんか。不思議ですね。還元させて染色できる状態にする染料では酸素を取る目的で還元剤を使います。還元剤として、また漂白剤としての性質を利用する「着色抜染(ちゃくしょくばっせん)」という方法もあります。

これはあらかじめ直接染料や反応染料などで染めておいた布をスレン染料で染め重ねることで得られる効果です。もともと染まっていた色を抜きながら別の色で染めるので、色が重なることはありません。通常は赤く染めてから青で染め重ねると紫色になります。多くの染色技法では重なる色を考えながら染めていきます。着色抜染では赤に染め重ねても青になるのです。補色(反対色)に近い色でも隣同士で染められるので興味深い効果です。通信教育部染織コースの授業では着色抜染を行うものはないのですが、 数年前の卒業制作でこの技法に取り組んだ人がいました。

着色抜染ではなくてもスレン染料はとても堅牢な(色落ちしにくい)染料であり、授業でも使っています。織の授業で絣を学ぶ科目では、糸を染めるのにスレン染料を使っています。


今年度も6月末にこの授業の1回目があります。受講する皆さんは染色に先立って糸の準備をする事前課題に取り組んでいる頃でしょう。準備では糸をデザインにそって括ります。括られている部分は染まらず、染め分けができます。この糸を使って織り上げるのが絣です。

スレン染料で染めるにはハイドロを入れるのですが、ハイドロは放置しておくと効力がなくなってしまい、手順通り作業を行なっても染まらないことがあります。綺麗な色を想像していたのに色が落ちてしまうと本当にがっかりします。密封しておけば効力はなくならないので、私はビニール袋で何重にも包んでいます。

さて花村萬月さんの『ハイドロサルファイト・コンク』は瓜生山キャンパス近くの左京区あたりが舞台の一部になっています。よく知っているスーパーマーケットで買い物する場面が出てきます。同じ風景を見ている方が書いているので親近感が湧くかといえばそうでもなく、内容はかなりヘビーです。本を整理していたのはもう読まないだろうと思う本を選び出していたのです。この本はどうしましょうか。芸術文化情報センター(大学の図書館)に蔵書がないので寄贈する手もありますね。今回パラパラと拾い読みをしていたらまた読みたくなってきました。本の整理は進まないですね。興味のある方は読んでみてください。
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本の表紙
なぜ気になったかというとハイドロサルファイトコンクは染色でよく使う薬品だからです。私たちはハイドロと省略して呼ぶことがほとんどです。染色以外でもハイドロハイターという花王の商品がありました。還元漂白を行うための漂白剤です。(2025年3月末をもって製造は終了)

ハイドロ
染色では還元漂白剤として、またスレン染料や藍染の還元剤として使います。酸化と還元については習った覚えはありますが詳しく説明できる自信はありません。酸化は物質が酸素と結びつく反応。還元は逆で物質から酸素が奪われる反応です。酸化型の漂白剤も還元型の漂白剤もあるのでややこしいですね。

塩素系漂白剤と酸素系漂白剤 どちらも酸化漂白です
スレン染料や藍は、染色できる状態にするためにハイドロを入れます。還元して染められる状態にすることを「建てる」と言います。藍染ではハイドロを使わず微生物の働きを利用して「発酵建て」も行われます。昨年度から行われている「藍の學校(実践型アートマネジメント・人材育成プログラム)」では発酵建ての藍染を体験するプログラムもあります。
info@ainogakko.jp

藍の學校パンフレット
漂白することと染色することは逆のような気がしませんか。不思議ですね。還元させて染色できる状態にする染料では酸素を取る目的で還元剤を使います。還元剤として、また漂白剤としての性質を利用する「着色抜染(ちゃくしょくばっせん)」という方法もあります。

着色抜染 雪花絞りの作例(通学部)
これはあらかじめ直接染料や反応染料などで染めておいた布をスレン染料で染め重ねることで得られる効果です。もともと染まっていた色を抜きながら別の色で染めるので、色が重なることはありません。通常は赤く染めてから青で染め重ねると紫色になります。多くの染色技法では重なる色を考えながら染めていきます。着色抜染では赤に染め重ねても青になるのです。補色(反対色)に近い色でも隣同士で染められるので興味深い効果です。通信教育部染織コースの授業では着色抜染を行うものはないのですが、 数年前の卒業制作でこの技法に取り組んだ人がいました。

長谷川さんの作品「うつろう」(WEB卒業・修了制作展より)
着色抜染ではなくてもスレン染料はとても堅牢な(色落ちしにくい)染料であり、授業でも使っています。織の授業で絣を学ぶ科目では、糸を染めるのにスレン染料を使っています。

対面授業の様子

遠隔授業の配信
今年度も6月末にこの授業の1回目があります。受講する皆さんは染色に先立って糸の準備をする事前課題に取り組んでいる頃でしょう。準備では糸をデザインにそって括ります。括られている部分は染まらず、染め分けができます。この糸を使って織り上げるのが絣です。

括りの練習
スレン染料で染めるにはハイドロを入れるのですが、ハイドロは放置しておくと効力がなくなってしまい、手順通り作業を行なっても染まらないことがあります。綺麗な色を想像していたのに色が落ちてしまうと本当にがっかりします。密封しておけば効力はなくならないので、私はビニール袋で何重にも包んでいます。

密閉して保存
さて花村萬月さんの『ハイドロサルファイト・コンク』は瓜生山キャンパス近くの左京区あたりが舞台の一部になっています。よく知っているスーパーマーケットで買い物する場面が出てきます。同じ風景を見ている方が書いているので親近感が湧くかといえばそうでもなく、内容はかなりヘビーです。本を整理していたのはもう読まないだろうと思う本を選び出していたのです。この本はどうしましょうか。芸術文化情報センター(大学の図書館)に蔵書がないので寄贈する手もありますね。今回パラパラと拾い読みをしていたらまた読みたくなってきました。本の整理は進まないですね。興味のある方は読んでみてください。
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