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書画コース

2025年08月30日

【書画コース】なら工藝館へ!

書画コースでは、「書」と「水墨画」を体系的に学び、 実践と理論の両面から東洋の叡智に根ざした美への意識を高めていきます。今回は書画コースのなかでも「理論」にあたる科目に眼差しを向けてみたいと思います。担当は書画研究室の奥田です。

書画コースの専門教育科目の一つに TR(テキストレポート)科目《書画講義 1~4》というものがあります。
ここではレポート課題に取り組み、単位修得試験を受けることになります。TR 科目のうち私は《書画講義 3:素材と表現》の添削を担当する一人ですが、入学後 1~2 年目に取り組まれることをおすすめしたい科目です。なぜならここでの学びは実践に繋がる知見を得られ、3 年次以上の専門教育科目や発展的な学習で大いに役立つと思うからです。書歴や画歴のある方にとっても、新たな表現性の発見に繋がると思っています。

この科目では筆墨硯紙といった道具の歴史や文化、素材性、表現性等について学びを深めていきます。道具の歴史は古く、現在に至るまで人々の生活とともに素材や形を変えてきましたが、今も筆墨硯紙は書や水墨画には欠かせない道具として強く根付いています。書画の伝統的表現に限らず、現代的表現に使用される道具も、筆墨硯紙の素材性を手引きに発展したものが多く存在しているといえます。

とはいえ「教科書を読む気にならない」「かく(書く・描く)ことは好きだけど道具はそんなに」「何から手をつけていいか分からない」という声もお聞きします。そこで今回は筆墨硯紙をはじめ書画に関する道具に、まず関心を寄せるきっかけを提案したいと思います。
そこで現在開催中の企画展を一つご紹介致します。

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なら工藝館 企画展「なら すみ きがた できるまで」
会 期:2025 年 7 月 24 日(木)~10 月 19 日(日)
場 所:なら工藝館 1 階常設展示室
観覧料:無料
(休館日等の詳細はなら工藝館 Nara Craft Museym ホームページ
https://nara-kogeikan.city.nara.nara.jp よりご確認下さい)
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なら工藝館外観



近鉄奈良駅から徒歩 10 分程の「なら工藝館」は、長い歴史の中で研ぎ澄まされてきた奈良工芸の一層の振興発展を図るために「1.受け継ぐ 2.創作する 3.開放する」を基本理念とした施設です。現在は奈良の墨にまつわる企画展「なら すみ きがた できるまで」が開催されています。多様な意匠の奈良墨、墨造りに欠かせない木型、代々受け継がれてきた墨譜(ぼくふ)の一部などを鑑賞することができます。また常設展示品として様々な種類の奈良筆の他、奈良漆器、古楽面、奈良団扇、奈良晒、奈良一刀彫等も会場内で観ることもできます。書画コースとしては鹿の角でつくられた矢立(やたて)や天平筆(てんぴょうひつ)、墨の絵付けに使われる絵具材料等を鑑賞できることも魅力的です。

企画展会場内(2025 年 8 月)



この企画展の見どころは稀少な墨の数々がその木型とともに鑑賞できることです。それだけでも十分贅沢な空間ですが、黄綬褒章を受章された墨型彫刻師の中村雅峯氏の木型・墨譜・江戸時代の墨等、大変貴重な資料も出陳されています。比較的近くにお住まいの方には匠の技の数々をぜひご覧いただきたいと思います。これらが無料で観られるの?と私は驚きながら釘付けになりました。

中村雅峯氏所蔵 墨譜(部分)



株式会社墨運堂所蔵 墨『寿』 木型・墨譜



筆の原料



今回”書画に関する道具に関心を寄せるきっかけ”として、現在開催中の企画展を一つご紹介しました。その理由は、何か一つでも興味や関心を持てる道具に出会えると、この科目の学びの糸口になると思うからです。

この企画展に限らず、書画に関する展示は作品のほかに道具も並ぶことがありますからご自身で展覧会情報を集めてみるのも良いですね。また筆墨硯紙は今もなお私たちが目でみて、手でふれることのできる道具ですから、書画材の専門店へ足を運んでみるのはいかがでしょうか。筆の種類が多い店、珍しい硯がある店、紙の試し書きができる店等それぞれ特長があると思いますので、何軒か見てまわることをおすすめします。近くにない場合は、文房四宝を取り扱う店や美術館のWebサイト等を通じて書画の道具に出会うことも可能でしょう。これまで目にしたことのある道具、使ったことのある道具は、ほんの一部でしかないことに気づくことがまずは大切なように思います。

人々とともに文化を築き、歴史を伝え、そしてその優れた素材性・表現性によりこれまで数えきれないほどの書画活動に寄り添ってきた筆墨硯紙について、この科目を学ぶことで興味・関心が高まると嬉しく思います。またその結果、筆墨硯紙といった書画材の維持、そしてさらなる発展に繋がることを願っています。

 

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