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2025年11月17日
【文芸コース】年末は100均で手帳を買おう!──長編小説を最後まで書き上げるために──
文芸コースの麻宮ゆり子です。今回は「どうすれば長編小説を最後まで書き上げられるのか」というテーマでお話したいと思います。ここでいう長編小説とは、400字詰原稿用紙換算で250~500枚(あるいはそれ以上)の作品を指します。もちろん、これから紹介する方法は250枚以下の中編や短編にも応用できます。この方法を使えば、これまで書けなかった人や途中で挫折した経験のある方でも、必ず最後まで小説を書き切ることができると私は思っています。
小説を書くうえで大切なのは「締め切りがあること」
「400字詰原稿用紙換算で500枚の小説を書いてください」と言われたら、多くの人は「どうやって書くの? 無理でしょ」と思うのではないでしょうか。けれど思い出してみてください。小学校から中学、あるいは高校まで、ほとんど毎日のように学校へ通ってきましたよね。会社員の「勤続30年です」という言葉を聞いて「そんなの無理!」と思う人もいるでしょうが、実はそれも日々の積み重ねで成り立っています。結局小説も同じで、毎日少しずつ書き進めていけば、500枚でも1000枚でも到達することは可能なのです。
ただし漠然と書き始めるのではなく、明確な目標をもって取り組むことが大切で、そのほうがはるかに意欲を保ちやすくなります。「500枚の長編を書く!」といきなり思うから「無理!」と感じてしまう。大切なのは目標を細分化し、それを日々手帳に記録しながら、段階的に進めること。そして、その前に重要なのが「締め切りを決めること」です。
これは大学に提出する作品でも、新人賞への応募でも同じです。締め切りがあるからこそ、人は「小説を書く」という、ある種無防備で得体の知れない不思議な行為に没頭できるのです。命に期限があるからこそ人生が輝くように、締め切りがあるからこそ作品もまた、作者が注いだ情熱のきらめきを封じ込めるように完成するのだと私は思っています。
締め切りを決めたらどうするか
①100均の手帳を買う
まずはこれです。普段使っているスケジュール手帳とは別に、「小説執筆専用の手帳」を用意しましょう。スケジュール管理できるアプリやカレンダーでも構いませんが、私のおすすめは月間予定が一目で見渡せる100円ショップのマンスリー手帳です。
②手帳に締め切りを書き込む
繰り返しますが、締め切りがないまま長編小説を書くことはできても、冗長にならずに完成させるのは難しいのではないかと私は思っています。なお、この締め切りは、新人賞などの実際の締め切り日よりも早めに設定しておくのがポイントです。予定というのはたいてい遅れるものですから、十分に余裕をもたせておくようにしましょう。
③登場人物表とプロットを作る
次に、登場人物の生年月日や趣味、仕事、口癖などをまとめた「人物表」と、物語の流れを示す「プロット」を作成します。なお余談ですが、本文を書き進める際に、登場人物が思いもしない方向へ動き出したり、プロットが当初の予定とは異なる展開を見せることがあります。けれど、それは人物が活きているからこそ起きる現象ですので、そのつど矛盾が生じないよう、全体を柔軟に修正していけば問題ありません。
④必要枚数を逆算し、1日ごとの目標と実績を記録する
たとえば「300枚の小説を3カ月で完成させたい」なら、1日10枚ずつ書いていけば30日で達成できる計算になります。しかし現実には「毎日は無理」「10枚も書けなかった」「体調が悪かった」「今日は推敲だけで終わった」など、思うようにいかない日もあるでしょう。だからこそ、締め切りは実際の日程よりも前倒しに設定しておくことが大切です。
そして手帳には「目標10枚/実際5枚」といったかたちで毎日記録します。「目標10/実際3/推敲10」と、推敲した枚数を含めて書いてもいいでしょう。これによって自分の執筆のリズムや癖が見えてきますし、「次こそ10枚書くぞ!」という意欲にもつながります。さらに、この積み重ねた記録は、今後の執筆に役立つ貴重なデータにもなっていきます。
数字を記録することで生まれる「作業興奮」
小説は書き始めが最もエネルギーを必要とします。けれど手帳にその日の「目標枚数/実際の枚数」を記入していくうちに、不安を先取りすることなく、「今日一日の目標を達成しよう」と、目の前のことだけに集中できるようになっていきます。そしてこの集中している状態こそが、執筆以外の興奮を抑制し、創作への没頭を促す「作業興奮」と呼ばれる心理的な働きを生み出します。さらに数字を記録することで、自分の執筆のペースを客観的に把握できるようになり、後からその数字を見返したときには、「よくここまで書いてきたな」と自分の歩みに対する達成感を味わうこともできるのです。
それでも書けなくなったときは
それでも筆が止まってしまったときは、無理に書き進めようとせず、「人物表やプロットを作成する」以前の段階に立ち返ってみるのがおすすめです。たとえば「500枚の小説が書けなかった」とするなら、同じくらいの分量(500枚前後)の長編小説を何冊か読んでみる。するとその中に自分の課題や、ヒントになりそうなものがたいてい見つかるはずです。そしてその気づきを糧に、もう一度登場人物を練ってプロットを立て直し、新たな締め切りを設定して再び書き始める。これを繰り返せば、途中で完全に意欲や目的を失わない限り、どんな作品でもいずれは完成へとたどり着けるようになります。
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