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2025年12月04日
【建築デザインコース】光と建築
こんにちは。建築デザインコースの吉池です。
今月は建築空間を構成する重要な要素である「光」について考えてみようと思います。
人間の根源的な気持ちよさにつながる自然光の取り込み方や、生活や作業などのために必要な機能的な明るさを確保する人工照明のデザインに加えて、建築の魅力をより一層引き立てるための光のデザインが数多くあります。
今日はいくつかの事例を紹介しながら、建築家が考えたであろう光のデザインについて考察してみようと思います。
(以下、写真は著者撮影)
この図書館は街に向かって開く全面ガラスのファサードから、2層吹抜けの本棚に囲まれた空間
に、カーテン越しの柔らかい自然光が溢れるデザインとなっています。
伸びやかで開放的な空間で本を楽しむことができます。
先ほどの空間全体が明るい光環境に比べて、この空間は手前から奥にかけて、明暗のグラデーションが作られています。中央壁の左側が明るいことで、手前右側の空間は相対的に暗く感じます。また、奥に向かって明るくなっていくことで、奥に自然と導かれるような空間となっています。
この青森県立美術館のホールにはひとつの床の中に性格の異なる2種類の光環境があります。
左側は高天井の白い天井を照らす間接照明、右側は床をポツポツと照らすダウンライトによって、明るく上に広がる空間(左)と下に潜っていくような空間(右)ができています。
さらに奥には壁を照らす間接照明によって、先に進んで行きたくなるような空間もあり、照明計画のバリエーションも楽しい要素となっています。
美術館の地下展示室入り口にはコンクリートの壁1面に抑えられた光が差し込みます。
空間の1面のみが明るいことで、逆に他の面の暗さが際立ち、静謐な空気感を生み出しています。
このように、明るさだけでなく、光と影の両方をデザインすることが光のデザインでは重要です。
光と影を組み合わせるとこのように一定のリズムを生むこともできます。
光の指すピロティに扁平の列柱を設けることで、空間にメリハリとスケール感が生まれています。
繰り返す一定のリズムは、この建築をより抽象的な「物」として感じさせます。
空に向かったピクチャウィンドウさながら、自然光を切り取るデザインです。
ランダムに差し込む光の矩形は軽やかなリズムを生み出しています。
ここに来た人が思い思いの場所に佇むことのできる大らかさも感じます。
光は透過して室内に明るさをもたらすだけでなく、反射して周りの景色や物を映し込むこともできます。この軒下空間では、ガラス面や軒下面に周囲の緑が反射し、まるでこの建築が周囲に溶け込んでいくようなデザインとなっています。
こちらの空間も床への映り込みが印象的ですが、光の取り込み方を操作することができます。
アラブの伝統的なデザインを取り入れたファサードはカメラの絞りのように採光の量を調整することができます。
光と影によって描かれる伝統的な模様が建築技術によって変化する様は圧巻です。
ここまで、猪名川霊園礼拝堂・休憩棟以外は色のついていない光を取り上げてきましたが、光こそ建築に色彩を与える根源的な要素となります。
古来からステンドグラスはありますが、ガウディはダイナミックに各窓に色を取り入れています。時間によって空間が異なる彩りに染まります。
ここまで、私の好きな光のデザインを紹介してみました。
みなさんの好きな空間はあったでしょうか。
自身の五感が刺激され、心地よいと思う空間をぜひ探究してみてください。
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今月は建築空間を構成する重要な要素である「光」について考えてみようと思います。
人間の根源的な気持ちよさにつながる自然光の取り込み方や、生活や作業などのために必要な機能的な明るさを確保する人工照明のデザインに加えて、建築の魅力をより一層引き立てるための光のデザインが数多くあります。
今日はいくつかの事例を紹介しながら、建築家が考えたであろう光のデザインについて考察してみようと思います。
(以下、写真は著者撮影)
①溢れる光 那須塩原市図書館みるる/UAo
この図書館は街に向かって開く全面ガラスのファサードから、2層吹抜けの本棚に囲まれた空間
に、カーテン越しの柔らかい自然光が溢れるデザインとなっています。
伸びやかで開放的な空間で本を楽しむことができます。
②導く光 猪名川霊園礼拝堂・休憩棟/デイヴィッド・チッパーフィールド・アーキテクツ
先ほどの空間全体が明るい光環境に比べて、この空間は手前から奥にかけて、明暗のグラデーションが作られています。中央壁の左側が明るいことで、手前右側の空間は相対的に暗く感じます。また、奥に向かって明るくなっていくことで、奥に自然と導かれるような空間となっています。
③多様な空間を生む光 青森県立美術館/青木淳建築計画事務所
この青森県立美術館のホールにはひとつの床の中に性格の異なる2種類の光環境があります。
左側は高天井の白い天井を照らす間接照明、右側は床をポツポツと照らすダウンライトによって、明るく上に広がる空間(左)と下に潜っていくような空間(右)ができています。
さらに奥には壁を照らす間接照明によって、先に進んで行きたくなるような空間もあり、照明計画のバリエーションも楽しい要素となっています。
④暗さを引き立てる光 佐川美術館/竹中工務店
美術館の地下展示室入り口にはコンクリートの壁1面に抑えられた光が差し込みます。
空間の1面のみが明るいことで、逆に他の面の暗さが際立ち、静謐な空気感を生み出しています。
このように、明るさだけでなく、光と影の両方をデザインすることが光のデザインでは重要です。
⑤リズムを作る光 ガララテーゼの集合住宅/アルド・ロッシ
光と影を組み合わせるとこのように一定のリズムを生むこともできます。
光の指すピロティに扁平の列柱を設けることで、空間にメリハリとスケール感が生まれています。
繰り返す一定のリズムは、この建築をより抽象的な「物」として感じさせます。
⑥切り取られた光 神奈川工科大学KAIT広場/石上純也建築設計事務所
空に向かったピクチャウィンドウさながら、自然光を切り取るデザインです。
ランダムに差し込む光の矩形は軽やかなリズムを生み出しています。
ここに来た人が思い思いの場所に佇むことのできる大らかさも感じます。
⑦反射する光 江之浦測候所/新素材研究所
光は透過して室内に明るさをもたらすだけでなく、反射して周りの景色や物を映し込むこともできます。この軒下空間では、ガラス面や軒下面に周囲の緑が反射し、まるでこの建築が周囲に溶け込んでいくようなデザインとなっています。
⑧操作される光 アラブ世界研究所/ジャン・ヌーヴェル
こちらの空間も床への映り込みが印象的ですが、光の取り込み方を操作することができます。
アラブの伝統的なデザインを取り入れたファサードはカメラの絞りのように採光の量を調整することができます。
光と影によって描かれる伝統的な模様が建築技術によって変化する様は圧巻です。
⑨彩られる光 サグラダ・ファミリア/アントニオ・ガウディ
ここまで、猪名川霊園礼拝堂・休憩棟以外は色のついていない光を取り上げてきましたが、光こそ建築に色彩を与える根源的な要素となります。
古来からステンドグラスはありますが、ガウディはダイナミックに各窓に色を取り入れています。時間によって空間が異なる彩りに染まります。
ここまで、私の好きな光のデザインを紹介してみました。みなさんの好きな空間はあったでしょうか。
自身の五感が刺激され、心地よいと思う空間をぜひ探究してみてください。
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