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2026年03月17日
【芸術学コース】大山崎山荘美術館
みなさん、こんにちは。芸術学コース業務担当非常勤講師の遠藤太良でございます。
少しずつ春めいてきましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?花粉症が苦しい季節でもありますので、くれぐれもご体調にはお気をつけくださいね。
さて、もうしばらく前になってしまいましたが、年初のお出かけとして、大山崎山荘美術館を訪れました。この美術館は、ご存じの方も多いかと思いますが、京都府と大阪府の府境にある天王山に位置しています(ちなみにギリギリ京都府内です)。民藝運動ゆかりの作品やクロード・モネの絵画など、素晴らしいコレクションが収蔵されていますが、やはり見逃すことができないのは、空間としての魅力、建物それ自体の魅力です。今回はそんな大山崎山荘美術館について少しお話ししたいと思います。
大山崎山荘美術館には、主な建物として、「本館」、「地中の宝石箱(地中館)」、「夢の箱(山の手館)」の三つがあります。このうち、「本館」は、この美術館の名前の由来でもある「大山崎山荘」と呼ばれていたところであり、実業家である加賀正太郎の別荘として、幾度かの改築などを経つつ1932年頃に現在の姿になったようです。加賀は証券業などで財を成し、ニッカウヰスキーの創業に参画したことでも知られています。同時に、蘭の栽培や登山など、多趣味な人でもありました。そんな加賀の趣向が存分に反映された「本館」は、イギリスのチューダー・ゴシック様式にハーフティンバー様式を取り入れたものであり、民藝運動をはじめとする陳列された作品群とも相まって、西洋的でありながらもどことない懐かしさを訪れる者に感じさせてくれます。
古き良き風情を今に伝える「本館」に対して、「地中の宝石箱(地中館)」と「夢の箱(山の手館)」は打って変わってモダンな空間となっています。どちらも安藤忠雄の設計によるものであり、木のぬくもりが感じれる「本館」とは異なって、コンクリートの質感や白の色彩が強いインパクトを与えます。対照的ともいえるこれらの建物が不思議と調和して存在しているところに、この美術館の魅力があると言えるのではないでしょうか。
ところで、大山崎山荘美術館には、民藝運動ゆかりの作品が多数収蔵されていますが、これらは加賀とも親交が深かった山本為三郎のコレクションに由来するものです。山本はアサヒビールや現在のリーガロイヤルホテルの社長を歴任した戦後の関西を代表する実業家の一人であり、「関西のビール王」や「関西のホテル王」とも称されていましたが、濱田庄司をはじめとする民藝運動の同人達とも親しく交流しており、民藝運動の初期からの有力なパトロンの一人でもありました。上記のリーガロイヤルホテルには、開業時より民藝運動の関係者らがデザインしたバー「リーチバー」が設けられ、現在に至るまで根強い人気を博していますが、このバーも実は山本のアイデアによるものであり、まさに彼と民藝との強い結びつきの賜物といえます。
大山崎山荘美術館に寄贈された山本のコレクションは、その活動の初期より支え続けた実業家と民藝運動との関係性を伺い知れるものとして、数ある民藝のコレクションの中でも特に興味深いものであるといえます。折しも、このブログが公開された少し後、3月の後半からは、このコレクションに基づく河井寬次郎と濱田庄司の展覧会が始まるそうです。また、その頃には庭園の桜の花が美しく咲き誇っていることでしょう。春のお出かけとして、ぜひ訪れていただけましたら幸いです。

さて、ここまで述べてきたように、大山崎山荘美術館は、その作品群だけでなく建築それ自体も魅力的な空間を構成していました。また、その建築やコレクションには、現在もよく知られているような企業とも所縁の深い実業家たちが関与していました。このように、芸術を考える上では、作品を鑑賞するのみならず、それを展示する空間や制度や歴史を知るということが、とても重要になってきます。芸術学コースは、それらについての様々な学びの機会を用意しており、みなさんの芸術を巡るご経験をさらに実り豊かなものへと変えてゆくお手伝いができればと考えております。ご興味を持たれた方は下記のリンクよりぜひ詳細をご参照くださいませ。
主要参考文献
大山崎山荘美術館HP https://www.asahigroup-oyamazaki.com/(2026年3月10日閲覧)
山本爲三郎翁傳編纂委員会編『山本爲三郎翁傳』朝日麦酒株式会社、1970年。
芸術学コース|学科・コース紹介
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少しずつ春めいてきましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?花粉症が苦しい季節でもありますので、くれぐれもご体調にはお気をつけくださいね。
さて、もうしばらく前になってしまいましたが、年初のお出かけとして、大山崎山荘美術館を訪れました。この美術館は、ご存じの方も多いかと思いますが、京都府と大阪府の府境にある天王山に位置しています(ちなみにギリギリ京都府内です)。民藝運動ゆかりの作品やクロード・モネの絵画など、素晴らしいコレクションが収蔵されていますが、やはり見逃すことができないのは、空間としての魅力、建物それ自体の魅力です。今回はそんな大山崎山荘美術館について少しお話ししたいと思います。
大山崎山荘美術館には、主な建物として、「本館」、「地中の宝石箱(地中館)」、「夢の箱(山の手館)」の三つがあります。このうち、「本館」は、この美術館の名前の由来でもある「大山崎山荘」と呼ばれていたところであり、実業家である加賀正太郎の別荘として、幾度かの改築などを経つつ1932年頃に現在の姿になったようです。加賀は証券業などで財を成し、ニッカウヰスキーの創業に参画したことでも知られています。同時に、蘭の栽培や登山など、多趣味な人でもありました。そんな加賀の趣向が存分に反映された「本館」は、イギリスのチューダー・ゴシック様式にハーフティンバー様式を取り入れたものであり、民藝運動をはじめとする陳列された作品群とも相まって、西洋的でありながらもどことない懐かしさを訪れる者に感じさせてくれます。古き良き風情を今に伝える「本館」に対して、「地中の宝石箱(地中館)」と「夢の箱(山の手館)」は打って変わってモダンな空間となっています。どちらも安藤忠雄の設計によるものであり、木のぬくもりが感じれる「本館」とは異なって、コンクリートの質感や白の色彩が強いインパクトを与えます。対照的ともいえるこれらの建物が不思議と調和して存在しているところに、この美術館の魅力があると言えるのではないでしょうか。
ところで、大山崎山荘美術館には、民藝運動ゆかりの作品が多数収蔵されていますが、これらは加賀とも親交が深かった山本為三郎のコレクションに由来するものです。山本はアサヒビールや現在のリーガロイヤルホテルの社長を歴任した戦後の関西を代表する実業家の一人であり、「関西のビール王」や「関西のホテル王」とも称されていましたが、濱田庄司をはじめとする民藝運動の同人達とも親しく交流しており、民藝運動の初期からの有力なパトロンの一人でもありました。上記のリーガロイヤルホテルには、開業時より民藝運動の関係者らがデザインしたバー「リーチバー」が設けられ、現在に至るまで根強い人気を博していますが、このバーも実は山本のアイデアによるものであり、まさに彼と民藝との強い結びつきの賜物といえます。
大山崎山荘美術館に寄贈された山本のコレクションは、その活動の初期より支え続けた実業家と民藝運動との関係性を伺い知れるものとして、数ある民藝のコレクションの中でも特に興味深いものであるといえます。折しも、このブログが公開された少し後、3月の後半からは、このコレクションに基づく河井寬次郎と濱田庄司の展覧会が始まるそうです。また、その頃には庭園の桜の花が美しく咲き誇っていることでしょう。春のお出かけとして、ぜひ訪れていただけましたら幸いです。

撮影したのが1月でしたので殺風景ですが、春には花々が美しく咲き誇ります
さて、ここまで述べてきたように、大山崎山荘美術館は、その作品群だけでなく建築それ自体も魅力的な空間を構成していました。また、その建築やコレクションには、現在もよく知られているような企業とも所縁の深い実業家たちが関与していました。このように、芸術を考える上では、作品を鑑賞するのみならず、それを展示する空間や制度や歴史を知るということが、とても重要になってきます。芸術学コースは、それらについての様々な学びの機会を用意しており、みなさんの芸術を巡るご経験をさらに実り豊かなものへと変えてゆくお手伝いができればと考えております。ご興味を持たれた方は下記のリンクよりぜひ詳細をご参照くださいませ。
主要参考文献
大山崎山荘美術館HP https://www.asahigroup-oyamazaki.com/(2026年3月10日閲覧)
山本爲三郎翁傳編纂委員会編『山本爲三郎翁傳』朝日麦酒株式会社、1970年。
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