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2026年05月27日
【書画コース】京都で書画を楽しむこと
「なったそうです」などと言うのは、私は足を運んでいないためです。決して、不人情だからではなく、関東で勤労学生をしている私は、年度初めにあって時間と金が許さなかったからです。それ以上の理由は、無い。
この書画展に参加された卒業生および在学生の皆さんは、京都だけでなく、それこそ全国にお住まいです。各地の方々が、京都を拠点に書画を楽しむというのは、一種いうべからざる趣があるように思うのですが、いかがでしょうか。
京都は色々と伝統的な文化が根付いている所だと言って、大きな間違いは無いと思いますが、それ以上に想い起こされるのは、近代において、京都を中心とした書画文墨趣味のネットワークが形成されていたことです。
この文墨趣味ネットワークの主立った文人たちを、その書画作品(いずれも個人蔵)を通して見てみたいと思います。

漢学者・書家 長尾雨山(1864―1942)「梅竹図軸」

書家 山本竟山(1863―1934)「清而舒扁額」

考証学者 羅振玉(1866―1940)「集契文七言対句軸」

文科大学教授(東洋史学) 内藤湖南(1866―1934)「劉禹錫詩短冊」

文科大学教授(漢学) 狩野君山(1868―1947)「楷書書論軸」

画家 富岡鉄斎(1837―1924)「墨牡丹図」

政治家 犬養毅(1855―1932)「墨竹図扇面」
このうち羅振玉は中国の人で、京都に客寓していましたが帰国の際、文墨趣味ネットワークの人々は彼のために送別会を開きました。
松村茂樹「書画文墨趣味のネットワーク」(『書と画を論じる』2019.10.25 研文出版)には、その時の記念写真について以下のように述べられています(p.202)。
この写真に写っている人たちは、中国の書画を好み、それがゆえにつながっている。そこにはもとより政治的意図はないが、当時のいわゆる極端な欧化主義へのアンチテーゼとして、一定の理性的役割を果たしたのではないか。
今の私たちには、例えばAIをどう受け止めるかや、西洋の良いものをいかに取り入れるかといった課題があるように思いますが、そのような情況下で、中国の、あるいは中国的な書画の楽しさを味わうことは、東洋としての主体性を保ちつつ、より良い変化を求めるための手掛かりになりそうです。
また、昔の文人のように、自分の楽しみとして一人で書画を味わうのも良いでしょうし、時に書画を通して人々と関わり、互いを理解し合えるならば、これはまた貴いことではないでしょうか。
* * *
ところで、冒頭で言及した、書画コースの方々の有志展「百花繚亂」には、私も、貴重な展示スペースをあまり領有しないで済む小品を展示させて頂いていました。私は書も画もウマ過ぎるんですが、そんなことはさておき、本作に書いた詩には、上記の長尾雨山と書画文墨趣味ネットワークのことを詠み込んでいますので、本当は私としては気が進まないながら、作品を挙げて、結びに代えたいと思います。

筆者「墨蘭図」
狂瀾逆倒何人量、一片征帆破浪昂。七子寓公懐自適、双清別墅忘他郷。丁東満酌彝尊馥、乙巳中秋文字芳。海上詩莚于此始、継修故事返扶桑。
〔狂瀾 逆しまに倒れん 何人か量らん、一片の征帆 波を破りて昂る。七子の寓公 懐ひ自適、双清別墅に他郷を忘る。丁東 満酌 彝尊馥り、乙巳の中秋に文字芳し。海上の詩莚は此において始む、故事を継修して扶桑に返る。〕
1905年の中秋、長尾雨山は上海に滞在しており、中国の文人たちと「徐園」に集まって、上海初の詩会を開きました(松村茂樹『長尾雨山研究』2024.10.10 研文出版)。
2025年は1905年と同じ乙巳の年に当たりましたので、雨山が上記の詩会で作った詩と同じ韻を用いて、彼を讃える七言律詩を作り、その文徳を偲びました。
雨山が日本で無実の罪を着せられ、一念発起して中国へ渡ったこと、当初はただ酒宴であった集まりで雨山が即興の詩を作り、中国の文人たちが同じ韻を用いて詩を作ったため、それが上海初の詩会となったこと、そしてこの例を日本に持ち帰り、京都で「寿蘇会」や「赤壁会」といった雅会を開いて、中国で学んだ文墨趣味の本質を日本の人々に伝えたことを、詠んでいます。
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