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建築デザインコース

2026年08月05日

【建築デザインコース】丹下健三の建築を読む──若人の広場

こんにちは、建築デザインコースの池田久司です。
今年の夏もアスファルトが溶けそうな暑い日が続いていますが、暑さに負けぬよう、水分と睡眠をたっぷり取って過ごしましょう。

先日、兵庫県南あわじ市にある「若人の広場公園」を訪れました。この施設は太平洋戦争の最中、軍需工場等に動員され、そこで亡くなった動員学徒を追悼し、その記憶を後世に伝えるために1967年に建設されました。国立代々木競技場(旧 国立屋内総合競技場)や東京都庁舎などで知られる建築家・丹下健三による設計です。1995年の阪神・淡路大震災によって被災し、長らく閉鎖を余儀なくされていましたが、恒久平和を願い、市民が憩える公園として再整備され、2015年に再び開園しました。

石垣のような外観の展示棟



建築は、城郭の石垣のような外観の展示棟と、学生を象徴する「ペン」をモチーフとした高さ25メートルの記念塔で構成されています。
展示棟の内部は、石垣のような壁の上に力強いコンクリート製のアーチが連続する空間となっています。不思議なのは、連続アーチと記念塔へ向かう軸線の角度が約20度傾いていることです。丹下の代表作である広島平和記念資料館本館(旧 広島平和会館原爆記念陳列館)では、原爆ドームへ向かう軸線と資料館が直交しているのとは対照的です。なぜこのようなデザインになっているのでしょうか。

天井アーチが壁や床の段差に対して斜めになっている



答えは、分かりません。……と書くと肩透かしになりますが、デザインの解釈は誰にでも開かれています。私は、丹下は記念塔だけでなく、空間を巡る中で出会う動員学徒の遺品や資料も大切に思っていたのではないかと考えています。広島平和記念資料館本館では、圧倒的な象徴として存在する原爆ドームに対し、資料館は平和の象徴を支えるための、いわば付属的な存在として軸線に対して直交しています。一方で約20度の角度のついたアーチ天井の下を歩く時、自然と身体はアーチに誘われて展示空間へと向かっていました。軸線に従属するというよりも、展示空間と記念塔が互いに独立しながら共存しているように感じられたのです。

記念塔へ向かうアプローチにも不思議なデザインが施されている



また、記念塔に向かうアプローチにも興味深いデザインがありました。
資料館から記念塔へは細い一本道を通ることになるのですが、その道は緩やかな下り坂になっています。同時に、道幅は資料館側では狭く、記念塔に近づくにつれてだんだん広くなっています。近いものを大きく、遠いものを小さく描くのが遠近法のお約束ですが、その反対のことをしているのです。するとどうなるでしょうか。
そうです。遠くのものが近く感じるようになります。そして緩やかな下り坂の効果もあり、足取りは軽く、距離も短く感じるというわけです。身体感覚と空間を結びつけるデザイン、面白いですね。もちろん、帰り道は長く感じました。

建築を学ぶと、こうした空間と身体の関係を感覚だけでなく、仕組みを読み取って理解できるようになります。つまり、世界の解像度が上がるということです。そして、その目をもって新しい空間をつくることができるようになります。

興味のある方はぜひ実際に訪れて、本当にそう感じるのか確かめてみてください。

 

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