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建築デザインコース

2026年05月11日

【建築デザインコース】「良い建築」の学び方2_連関編

こんにちは、建築デザインコースの山口陽平です。建築に興味を持ち始めた方や、学びを始めたいと思っている方に向けて、「まずは何から始められるか」「どんな学び方があるか」について、私自身の経験から書いてみたいと思います。
【建築デザインコース】「良い建築」の学び方


以前概要としてご紹介した「7つの学び」は、単独で存在するのではなく、実際には行き来しながら深まっていき、独自性の高い学びになっていきます。情報のインプット手段が発達するなか、オリジナルな学びの重要性が高まっているように感じます。今回は私が味わった学びの連関の1例をお伝えします。

展覧会から
この一連の学びの始まりは2018年に何気なく訪れた展覧会でした。タイトルは「没後50年 河井寬次郎展」で、フライヤーには器が載っていました。建築の展覧会ではないというのがポイントです。建築という領域は人の住や生に関わるのでどんなことからも繋がっていくのだなと思ったきっかけにもなりました。経歴、多彩ぶり、モノへの態度、書、、、全てが刺激的で河井寛次郎という人間に魅了されたのですが、1枚の写真が印象的でした。それは古い民家の居間の写真のように見えて、妙に洗練され、全てが調和している様に思えました。私はイームズ自邸の写真(夫妻が床座しているもの)を思い出しました。解説をみると河井寛次郎自邸とのことで、こういう人はこういう空間で生活しているのだなと腑に落ちる感覚でした。
河井寛次郎を知らない方はまずは便利に調べて頂きたいのですが、民藝運動の中心人物で陶芸家という枠には収まらない、日本のプロダクトデザイン、アノニマスデザインの重要人物と私は捉えています。



読書で深める
展覧会では書もとても印象的だったので、本を読むことにしました。私が手に取ったのは、書やエッセイがまとまった「火の誓い」という一冊です。仕事やモノに対する熱意がこもったお勧めの1冊です。いくつかの書をご紹介すると、

「焼けてかたまれ、火の願い」
「誰が動いているのだ これこの手」
「はだかはたらく 仕事すっぱだか 
「新しい自分が見たいのだ 仕事する」
「暮らしが仕事 仕事が暮らし」
「ひとりの仕事でありながらひとりの仕事でない仕事」
「物買ってくる 自分勝手くる」

いかがでしょうか。
エッセイの部分ではさまざまな美の裏側に隠された真理が語られているのですが、その内容は後述します。

実物を体感する
しばらく経って、2020年にまとまった休みの際に京都を訪れました。旅先を京都とした理由の一つは河井寛次郎自邸が記念館として現存しているからでした。あの展覧会で見た写真の空間が現存していると知り、体験せずにはいられませんでした。実物はやはり想像以上でした。写真でみた空間もよかったですし、その多彩ぶりを発揮して自ら設計したという空間は、建築だけで完結せず、椅子や器、さまざまなモノが置かれることを前提としたような設計で、モノに対する信頼のようなものが伝わってきました。古い寺から現代建築まで、1週間朝から晩まで様々見て回りましたが個人的ベスト3には入る空間です。



領域を横断する_(応用編)
京都滞在中に関西に住む旧友と内藤廣さん設計の虎屋京都店で建築鑑賞と甘味を楽しみました。その際に甘味が好きなら、と紹介してもらったのが鍵善良房の葛切りです。早速翌日に訪れたのですが、衝撃的なおいしさでした。私の祖母が京都にルーツを持つのですが、甘味が好きなら京都に行かないと食べられないものがある、と昔教えてくれたのを思い出しました。直感的にコレのことではと思い、後日確認を取ったところ、それはやはり鍵善良房の葛切りのことでした。その後2021年の「民藝の100年」という展覧会で河井寛次郎を含む民芸運動グループのルーティンとして、すき焼きを食べながら芸術談義、締めにこの葛切りを出前で食べる、というものが写真とともに紹介されていました。民藝運動メンバーから庶民まで愛される味を守りつづけているというのも凄まじい仕事だなと思います。ちなみに鍵善良房の器や岡持は木工家の黒田辰秋によるデザインです。



余談が過ぎてしまいましたが、今回の経験を振り返ると、学びは次のように連なっていました。
・展覧会で興味を持つ(別の領域から)
・読書で思想に触れる
・実物を体験する
・別の領域(食・工芸)から理解を深める

このように、ひとつの関心を起点に、分野を横断しながら往復することで、理解は深まっていきます。この後も「火の誓い」を再読し、エッセイ部分で登場する美しい村を訪れる、という様にもう1週さまざまな学びを横断、繰り返しながら深めていくのですが、それはまた別の機会にお伝えしたいと思います。身近な体験を起点に、分野を横断しながら往復すること。そうした積み重ねが、自分なりの学び方を形づくっていくのかなと思っています。展覧会に行って旅行して甘い物を食べただけじゃないか、と言われそうですが、これから建築に入門しようと思っている方が難しく考えずに、身近なところから足を踏み入れる一助になれば幸いです。建築はまさに「暮らしが仕事仕事が暮らし」の領域ですので。

 

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