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和の伝統文化コース

2026年08月06日

【和の伝統文化コース】「煎茶」の真髄に触れる、風雅な旅 ― スクーリング科目のご紹介

夏の盛り、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
和の伝統文化コース、非常勤講師の大森です。

本コースの魅力のひとつは、文献や映像をたどるだけでなく、長年その道を歩んでこられた「実践者」の先生から、生きたお言葉や佇まいを通して直接学べることです。
今回は、煎茶小川流・小川後楽先生をお迎えして開催されたスクーリングの様子をご紹介いたします。
講義では、大陸から日本へ受け継がれてきた長い歴史をたどりながら、煎茶の真髄に深く迫る豊かな時間が流れました。

講義風景。祭礼や文学、近代の絵画など、様々な資料から「煎茶」の世界を学びました。



授業ではまず、私たちが普段何気なく飲んでいる緑茶と、作法や作術を伴う茶道としての「煎茶」の違いについて、語りかけるようにお話しいただきました。
同じ茶道でも、厳しい禅の修行を背景に持つ「抹茶(茶の湯)」に対し、「煎茶」は道教や老荘思想と深く結びつき、無為自然で自由な生き方を大切にしてきた文化です。講義では、上田秋成の『清風瑣言』や夏目漱石の『草枕』などに描かれた煎茶の心を丁寧に紐解いてくださいました。
そして、江戸後期から明治にかけて、西郷隆盛、頼山陽、青木木米、田能村竹田といった文人や志士たちが、なぜ煎茶の自由で清々しい世界に惹かれたのか。歴史の裏側にある人間味あふれるエピソードに、受講生たちも深く頷きながら耳を傾けていました。

小川流煎茶で用いられる道具の数々。



また、小川流煎茶の流祖・小川可進(おがわかしん)の足跡についても語られました。
もと御典医であった小川可進は、医者ならではの視点から科学的で衛生的な煎茶法をあみ出しました。「茶には法あって式なし、式はその法中にあり」という言葉の通り、四季の巡りを考慮し、一番美味しい茶味を引き出すための手順を積み重ねたものが、煎茶の手前(作法)となったといいます。
先生は、煎茶の手前について、道具や手順の形にとらわれるのではなく、相手に美味しいお茶をさしあげたいという真心が根本にあるのだと、優しくあたたかな語り口でお話ししてくださいました。

講義風景。先生の言葉の端々から、深い愛と真摯な情熱が伝わってきます。



授業の最後には、岡倉天心の『茶の本』で紹介される、唐代の詩人・盧仝(ろどう)の『七碗茶歌』を読み解きました。一杯ごとに心が解き放たれ、仙境へと至る茶の精神性を描いた名詩として知られていますが、先生はこの詩の最後に茶の過酷な採集に苦しむ百姓の暮らしを想い、政権や権力者を暗に批判する強い直言が込められていることを紹介されました。
ただの風雅な趣味にとどまらず、社会の理不尽に心を痛め、民衆への温かい情を持った文人たちの「骨のある精神」。江戸から幕末の志士たち、そして現代の実践者に至るまで惹きつけてやまない煎茶の神髄が、まっすぐに伝わってきました。

スクーリングは、同じ分野に興味をもつ仲間たちとともに第一線の先生のお話に耳を澄ませ、驚きや発見を共有できるかけがえのない時間です。
静かで豊かな言葉に包まれたこの日の学びも、きっと学生の皆さんの心に深く残る思い出となったことでしょう。

温かく味わい深いご講義をいただきました小川後楽先生、そして受講生のみなさん、本当にありがとうございました。

和の伝統文化コース|学科・コース紹介

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