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2026年10月23日
【芸術学コース】Weiß Weihnachten? oder Grün Weihnachten?? 〜ホワイトクリスマス?緑のクリスマス??〜
今年度より業務担当非常勤講師に着任いたしました市ヶ関です。
専門分野はドイツ哲学、文学、美学。とりわけ20世紀ドイツの批評家ヴァルター・ベンヤミンが専門で、今年度から博士後期課程に進学したぴかぴかの1年生です。修士課程の後半から1年と少しドイツ・ベルリンに留学しており、今回の記事ではその懐かしいクリスマスの想い出を呼び起こしつつ、少しばかりの教養を皆さまに共有したいと思います。ハロウィンすらまだ迎えておりませんが、どんどん季節を先取っていきましょう!宜しくお願いいたします😉
さて、皆さまはクリスマスマーケットというものへ行ったことがありますでしょうか?
東京でも毎年行われておりますので、名前くらいはご存知かと思います。クリスマスマーケットの発祥には諸説ありますが13世紀のオーストリア、あるいは14世紀ごろのドイツと言われており、現代でもクリスマスマーケットといえばドイツ!と何となくイメージされるでしょう。実際、私はドイツ滞在中に各地のクリスマーケットをめぐり歩いておりましたが、行く先々で本当に多くの日本人旅行者を見かけました。若い女性グループやご家族で来られている方々が多く、聞くところによるとクリスマスマーケットのためにわざわざドイツまで日本から足を運ぶ人も珍しくないようです。
1.世界三大クリスマスマーケット
日本の記事ではよくニュルンベルク(世界一有名)、ドレスデン(世界最古)、シュトゥットガルト(世界最大)が世界三大マーケットとして名を連ねますが、本場ドイツでは諸説あります(友人談)。というのも、自分たちの住む街ごとにマーケットが開催されるので(ベルリンだと50〜80ものスポットがありました)、効率重視のドイツ人らしく、わざわざ遠方まで出かけて同じようなマーケットを見る、という発想がそもそもないのだそうです。ただ、ドイツ人の共通認識としてニュルンベルクのNürnberger Christkindlesmarkt、そしてドレスデンのStriezelmarktは有名だそう。

左:ニュルンベルグのクリスマスマーケット(Nürnberger Christkindlesmarkt)、ニュルンベルグ(2024年筆者撮影)
右:ニュルンベルグの街並み、ニュルンベルグ(2024年筆者撮影)
ドイツ人の認識通り、確かにクリスマスマーケットの内容はどこも大体一緒です。でもやはり、外国人の身として各地のクリスマスマーケットめぐりは本当に面白い。とりわけ私はご当地の「ワインマグカップ」と「レープクーヘン」収集を楽しんでいました。次章にてご紹介いたします。
2.クリスマスマーケットの名物:レープクーヘンとグリューワイン
私が初めて行ったクリスマスマーケットは、ベルリンの中心部で開催されていたマーケットで、当時通っていた大学の講義終わりに、先生がその日出席していた何人かの留学生たちを観光がてら連れて行ってくれました。その(酒好きの)ドイツ人教師から教えられたのが、「クリスマスマーケットで味わうべきは、グリューワインと焼きアーモンドだ」という名言であり、これが実際本当の本当に美味しい。ドイツのグリューワイン(Glühwein)は、シナモンや柑橘類、そしてハチミツなどを入れて温めたホットワインで、寒空の中で飲むとなんともロマンチックでエモーショナルな気分になります。そしてそのお供として最高なのが、焼きアーモンド。ドイツの焼きアーモンド(Gebrannte Mandeln)は砂糖とスパイスでコーティングされており、おつまみというより甘いお菓子という感じなので、フルーティなグリューワインとよく合うのです。
そして、そのグリューワインを楽しんだあとには、また別の楽しみがあります。それが先ほどご紹介した「ワインマグカップ集め」です。グリューワインは通常、地域ごとあるいはお店ごとに異なるデザインのマグカップで提供されます。
その街の名前と年号、そしてその街で有名な建物が描かれており、質感も形状も様々。更に興味深いのが、プファンド(Pfand)という制度です。グリューワインの料金にはマグカップの代金も上乗せされていて、飲んだ後のマグカップをお店に返却することで、プファンド(通常3〜5ユーロ)が返金されるというドイツらしいリサイクルシステムがあります。ドイツ人はほとんど返却するようですが、我々旅行者にとってはお手頃で可愛いお土産になります。
そして、私がクリスマスマーケット巡りへ出かける際、ドイツの友人からおすすめされたのが、「レープクーヘン」です。レープクーヘン(Lebkuchen)はシュトレン(Stollen)と同じくクリスマスの伝統菓子で、ずっしりと重く、スパイシーなしっとりとした食感が特徴です(が、日本人の間では好みがかなり分かれるようです)。レープクーヘンはクリスマスの時期のみ、スーパーでも普通に売っていますが、最も有名なシュミット社の「ニュルンベルガーレープクーヘン」は比べ物にならないほど味わい深いものでした。

前列がワインマグカップ、後列がレープクーヘン、ニュルンベルグ(2024年筆者撮影)
ひとつ学術的な話をしますと、Lebkuchenの”kuchen”は「ケーキ」という意味なのですが、”Leb”の起源は不明とされています。現代ではLeben「人生、生命」のケーキ!と解釈されることもあり、他にもいくつかの派生元が囁かれているようです。例えば、中世ラテン語の”lībum”、つまり「神々へ捧げる宗教的な供物、特別な菓子」からの借用という説や、中高ドイツ語の”leib”、すなわち「酵母の入っていないパン」という意味からの派生とする解釈など、実に様々な説があります。トンネルという語から由来する単純明快なシュトレンとは全く対照的で謎めいたレープクーヘンですが、どちらもドイツのクリスマスを代表する伝統菓子です。
3.名物?:絶品のキノコ料理シャンピニオンプファンネ
もう一つ、筆者が非常にお勧めする現地料理がドイツの定番キノコ料理、シャンピニオンプファンネ(Champignonpfanne)です。”Champignon”という名の通り、マッシュルームの煮込み料理なのですが(”Pfanne”は、フライパンという意)、現地の人たちはこれとビールを一緒に味わうというのが定番なのだそう。ソーセージやプレッツェルはもちろん定番中の定番ですが、このシャンピニオンプファンネは本場ドイツ人からの人気が厚く、屋台の近くを通りかかるととにかく焦げニンニクと玉ねぎの絶妙な良い香りがするのです。ドイツの屋台料理は見た目も味付けも素朴かつシンプルなものが多いのですが、そのような現地料理からも、倹約家で合理的なドイツ人の国民性が垣間見えます。
ドイツではギルド(Gilde)やマイスター(Meister)というその歴史上、製品の品質には非常に厳しい法律があり、その伝統は現代においてもなお守られ続けています。例えば先ほどのレープクーヘンも、国が規定した分量を少しでも超えた素材を使ってしまうとレープクーヘンを名乗ることが許されなかったり、またドイツビールもビール純粋令(Reinheitsgebot)という法律の下、添加物が一切認められなかったりなど、規則を厳守する文化が根強く残っているのです。しかしあらゆる規定は、粗悪な製品の流通を防ぎ「ものの本質」を生かすという側面においては、非常に理に適った伝統であり、であるからこそ、そのようなドイツの伝統は、同じく品質に徹底的にこだわり続ける日本人の精神と共鳴する部分が多いのだろうと思います。
すなわち、ドイツ料理は日本人の味覚に合うものが多い!ということです。
4.最後に
さて、タイトルにさせていただいた文言について、「ホワイトクリスマスはわかるが緑のクリスマスとは?」と思われるでしょう。実はこれには、「理想のクリスマス」とかけ離れた「現実のクリスマス」というドイツの悲しい歴史が関係しています。
クリスマスカードや絵本に描かれるクリスマスは大抵、真っ白な雪景色に覆われた幻想的なイメージが多いですが、ドイツのクリスマス時期に雪が降ることはほとんどありません。とはいえ、やはり皆ロマンチックなホワイトクリスマスに憧れを抱いており、ドイツでは毎年のように「今年のクリスマスはホワイトクリスマスになるか」という気象記事が書かれ、ホワイトクリスマスになる可能性が低い年は「緑のクリスマス」、つまり「地面の草が丸見えのクリスマス」という悲しい名称で呼ばれることになるのです。ちなみに、ドイツの新聞Tagesspiegelが2024年に公開した、ベルリンの「ホワイトクリスマス」状況は以下の通り。ベルリンは北ドイツに位置しますが、そもそも降雪量が少ないため「緑のクリスマス」だらけです。

画像引用元記事(注:有料記事)https://www.tagesspiegel.de/wissen/weisse-weihnachten-2024-das-sagt-die-klimavorhersage-12733910.html
参考記事(BerlinerZeitungの記事)「ホワイトクリスマス?これがベルリンのホリデーシーズン中の雪の確率です」 https://www.berliner-zeitung.de/article/weisse-weihnachten-in-berlin-so-wahrscheinlich-ist-schnee-zu-den-feiertagen-10008172
ドイツのクリスマスは英米ほど派手なものではありませんが、教会や演奏会に足を運んだり、家族一緒に夕食やプレゼント交換、おしゃべりを楽しんだりしながら、居間で静かにゆったりと過ごす冬の風物詩なのです。他にも、4本のロウソク(Adventskranz)やブーツにお菓子が入っている日(Nikolaustag)など、非常に興味深い文化がドイツにはありますので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
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