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文芸コース

2019年01月09日

【文芸コース】新しい年の初めに

新年明けましておめでとうございます。
今年も文芸コースのみなさんと一緒に、教職員ともども切磋琢磨していきたいと思います。どうぞよろしくお願い申しあげます。



近年、国内外には不安を抱かせるようなことが頻発していますね。
こんなときこそ古今東西の名著にじっくりと向き合ってみることが大切ではないか──。年初にあたりそんなことを考えています。

昨年末のことになってしまいますが、朝日新聞の連載「語る──人生の贈りもの」で、思想史家・渡辺京二さんの言葉に目がとまりました。

「文章を読むとは、自分の魂のなかを他者の魂が通過していくこと。忘れたと思っても、もう自分の一部になってしまっています」

渡辺さんは1940年代に旧満州の大連で徳冨蘆花や島崎藤村、バイロンなどを夢中になって読み、「富や地位といった現実的価値を超越して、美と崇高なるものを求める詩人こそが人間のほんとうのありかただ」と思ったそうです。

13、4歳の頃の、初々しくも激しい思春期の想念ですね。
文章を読むとは、書物を読むとは、自分を他者に開け放つこと。ドキリとする言葉です。
小説を読むと他者の人生(の一部)を生きることになりますし、哲学・思想書を読めば自分の脳みそに新しい考え方を注入することにもなる。

私は科学書が大好きですが、進化論や宇宙論、科学史を読むと、「人間とは何か、自分とは何か」という問いかけ以前の、広大無辺の真理を垣間見たような気になってしまいます。
渡辺さんが言う「崇高なるもの」がこれではないか、と私は勝手に思っています。

渡辺さんの言葉で大切なのは「通過していくこと」という部分。
決して、自分の魂のなかに他者の魂をとどまらせることではない、通過させ、忘れてもいい、ということです。

渡辺京二さんは名著『苦界浄土』の石牟礼道子さんを支えた編集者であるとともに、『逝きし世の面影』を著した思想史家・歴史家でもあります。

文芸コースのみなさん、今年も、たくさんの文章、書物を読んで、自分の魂のなかを通過させていきましょう。

文芸コース教員 門崎敬一



【文芸コース】特別講義のお知らせ

各分野で活躍する方をお招きし、〈いま、ここでしか聞けない話〉を聞く「文芸コース 特別講義シリーズ」。2018 年度は、小説家で季刊誌『考える人』と月刊『芸術新潮』の元編集長だった松家仁之さんを講師としてお招きします。

松家さんは新潮社の編集者時代に、海外文学シリーズ「新潮クレスト・ブックス」と季刊総合誌『考える人』を企画、創刊しました。数多くの作家から厚く信頼される編集者で、特に村上春樹さんからは絶大な信頼を寄せられていることでも知られます。

今回は、トルーマン・カポーティの『冷血』(新潮文庫)と、松家さんの短篇「眠る杓文字」(『文学界』2018 年8月号掲載)の2作品を題材にして、自身の創作方法などについて語ります。ひとつの小説(短篇)ができあがるまでの間、どのような取材をおこない、取材協力者にはどのような対応をしたのか。作品完成までの過程について、具体的にお話しいただきます。

日時:2019年1月19日(土)17:30〜19:30(会場17:00)
場所:京都造形芸術大学     東京・外苑キャンパス
— 入場無料 どなたでも聴講していただけます ―



【松家仁之(まついえ・まさし)氏プロフィール】

1958 年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、1982 年、新潮社に入社。
『小説新潮』『SINRA』編集部を経て出版部へ。1998 年、「新潮クレスト・ブックス」を創刊し、2002 年には季刊総合誌『考える人』を創刊。2006 年から『考える人』と『芸術新潮』の編集長を兼務したのち、2010 年に新潮社を退社。2012 年、デビュー長編『火山のふもとで』で第 64 回読売文学賞を受賞。2017 年に刊行した『光の犬』で芸術選奨文部科学大臣賞と河合隼雄物語賞をダブル受賞。そのほかの作品に、『沈むフランシス』『優雅なのかどうか、わからない』。編著・共著に『伊丹十三の本』『新しい須賀敦子』『須賀敦子の手紙』など。

 
冬の1日体験入学を開催!

「芸術によって変わる、私たちの暮らし」をテーマに、4学科13コース・資格課程の教員による体験授業を開催します。本格的な学びをとおして、実際に体験してみなければわからない発見や喜びが芽生える1日になるはずです。もちろん未経験の方も大歓迎です。
新しい1年の幕開けに、芸大の学びを体験してみませんか。
皆さんと一緒に楽しい学びの時間を過ごせることを、教職員一同心よりお待ちしています。

京都会場:1月13日(日)・14日(月・祝)
東京会場:1月19日(土)・20日(日)

詳しくはこちら
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/1day_winter/

 

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