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グラフィックデザインコース

2019年01月21日

【情報デザインコース】特別講義報告! 「イラストレーションはどう変わったか」京都編

この特別講義は学生からのリクエストもあり京都と東京の2ヶ所で開講しました。少し遅くなりましたが、今回は2018年10月27日に開催された京都での特別講義の様子を振り返ります。

都築潤先生は本学情報デザイン学科教授であり、イラストレーター/デザイナーとして活躍されています。一方、美術出版社から出版された『日本イラストレーション史』の監修と執筆を行われるなどイラストレーション研究者としての側面もあります。講義はイラストレーションの定義や語源からはじまり、日本のイラストレーションの転換を年代順に紹介しながら進行されましたが、その内容は日本イラストレーション史の解説にとどまらず、ビジュアル表現領域全般での現象や職業としてのイラストレーターなど幅広く言及されました。





講義の膨大な情報量をこの場でまとめることはとてもできそうにありませんが、以下に簡単にピックアップしてみました。重要なのはイラストレーションが指し示すものが時代と共に大きく変化してきたことです。

  • イラストレーションの語源、定義。印刷された図版。

  • 1950年代:「日本宣伝美術会」 …広告業界におけるイラストレーション。

  • 1964年:「東京イラストレーターズ・クラブ」の結成。

  • 1960年代~ 80年代:「テレビCM」「レコードジャケット」「ビデオゲーム」など、イラストレーションの領域拡大や漫画家によるイラストレーションの台頭 …「イラストレーター」の多様化。

  • 1980年代:コンペブームの到来。イラストレーションのアート化、イラストレーションブーム、80年代グラフィズム …イラストレーションの枠を超えて日本のビジュアルデザイン領域を塗りかえていく。

  • 1990年代以降:オタク、サブカルチャーと現代美術の接近。イラストレーションのコミッカーズ化 …飽和したイラストレーターと現在のイノベーティブなイラストレーション。


これらの項目を眺めると、年代を追うごとにイラストレーションの領域が広がっていくことがわかります。なかでもコンペブームは職業がイラストレーターではない、もしくはイラストレーションの領域を超えた「イラストレーション」が発信されました。ここで都築先生の語られた「イラストレーション」はビジュアルデザインの一部ではなく、ビジュアルデザインを考えるうえでの一つの視点であり、ビジュアルデザインの枠に収まらない視野であったことは驚きでした。

 



グラフィックデザインの視座からは、1950年代の日宣美が発行した『日本グラフィック体系』において、「抽象的なイラストレーションと、具象的なイラストレーションという2つの項目に分けられ、後に前者がグラフィックデザイナー、後者がイラストレーターとして活躍」と、語られた点はグラフィックデザイナーとイラストレーターの発展の経緯を考える上で非常に興味深いポイントでした。現在は具象的なイラストレーションで活躍するグラフィックデザイナーも多く存在していることで、グラフィックデザインの領域の変化もうかがえます。

イラストレーションの歴史と同時に、100名近い作家(イラストレーター/デザイナー/美術作家/漫画家/写真家など)や作品の紹介、先生自ら行われた作家へのインタビューも含めたお話はとてもリアリティがありました。最後に語られた「現代ではイラストレーターのライバルはイラストレーターだけではなく、全てのクリエーターだから」という言葉はとても印象的でした。イラストレーションの領域は全てのクリエーターに開かれていて、けっして閉じられた世界の話ではないことが伝わってきました。

 



1時間40分という時間に対して、濃密でジェットコースターのような講義をありがとうございました。講義が終わると情報量の多さに驚きの言葉を口にするなど、受講者の方々は「イラストレーション」の意識が変化したのではと思います。

情報デザインコース 非常勤講師 山田

 

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