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和の伝統文化コース

2019年09月13日

【和の伝統文化コース】真如の月とは??

9月に入ってもまだまだ残暑が厳しい日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。9月13日は中秋の名月ですね。テレビのCMでもお月見に合わせて商品が宣伝されています。昔から日本は月を愛でる文化があります。

月を愛でて、歌に歌われるようになったのは、『古今和歌集』の頃からのようです。有名な在原業平も「月やあらぬ春は昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」と、月を歌に読み込んでいます。この和歌は、能『雲林院』や『井筒』にも引用されており、月は人の心に問いかけるような魅力を持ち合わせているのかもしれません。『古今和歌集』でも、「月見れば千々にものこそかなしけれわが身一つの秋にはあらねど(古今集・巻第四秋歌上・大江千里)」と読んでいます。秋の月はどこか自分の内面と向き合うようなそんな輝きを放っているのかもしれません。また、臨床心理学者であり、ユング派分析家でもあった河合隼雄は、西洋では太陽と心を重ね合わせて観る傾向があるのに対して、日本人は月に心を重ね合わせて観る傾向があると考えました。太陽のように全てを明るみのもとに晒すのではなく、月明かりの中でひっそりと考えるような物事の考え方が、日本の文化の中で培われてきたのだと思います。また、月はいつも同じように昇る太陽とは異なり、満ちたり欠けたりしながら、その形を変えて空に昇って行きます。その姿は、仏教の諸行無常の考えと重なります。また、仏教では悟りの姿を月に見立てて、「真如の月」と言ったりもします。「真如」という言葉は、ありのままの姿、万物本体としての、永久不変の真理という意味があります。そして、「真如の月」と言った場合には、仏の教えの言葉となって、真如(永久不変の真理)によって煩悩の迷いが晴れるという意味になります。月の光は仏の慈悲の光と同じように考えられていたのかもしれませんね。



昔の人は、月の美しさを鑑賞することで、日々の悩みや迷いを晴らしていたのでしょう。現在でもお月見は各寺社などで観月祭として行われています。京都では、9月13日から15日にかけて、上賀茂神社、下鴨神社、大覚寺、松尾大社などで、観月祭が行われています。

上賀茂神社



 

下鴨神社



大覚寺



松尾大社



その中でも大覚寺の観月の夕べは1200年前より行われている由緒ある行事です。

大覚寺 観月の夕べ



嵯峨天皇が中秋の名月に大沢池に舟を浮かべて遊ばれたのが始まりと言われています。

大覚寺 大沢池



夜空の月を眺めるのも良いですが、大沢池に映った月を見るのもまた良いものだと思います。月を見ながら芸術の秋に浸ってみるのも良いですね。

 

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