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歴史遺産コース

2019年10月02日

【歴史遺産コース】民具の取り扱いとその調べ方〜民俗資料調査方法論b〜


9月28日(土)・29日(日)の週末は、東京外苑キャンパスでは歴史遺産Ⅲ-2(民俗資料調査方法論)bが開講されました。

この授業では、地域に残る信仰や年中行事などの風俗や民俗芸能、あるいは先人たちが生活のなかで創出し用いてきた民俗技術やその道具などについて学習し、実際にそれらを調査などで取り扱う際の技術とマナーを身につけるために実習をおこないました。

まず初日の座学では、民俗学という学問がどのような学問であるかを具体的に説明していただき、その学問的特徴を把握しました。

続いて、民俗学の手法を用いた研究に取り組むにあたり、具体的にどのような文献や検索ツールを使用して、どのように調べていけば良いのか、実際の事例を紹介しながら示していただきました。

その上で、民俗文化財という文化財の法律的立ち位置とその保存・活用をめぐる今日的課題を提示していただきました。


第2日目は、学外会場として、東京都大田区の大森海苔のふるさと館に場所を移して、実際に民具の保存・活用の現場をみて、民具の取り扱いにも挑戦しました。

大森という地域で海苔の養殖が始まったのは、江戸時代のことでした。やがて江戸時代後期には、この地域における海苔生産の技術が日本各地へと伝播していったのです。このような経緯で以後も明治、大正、昭和と東京湾岸における海苔の生産量第一位の座にあり続けました。


ところが、昭和前半期に港湾計画(京浜運河計画)が持ち上がり、沿岸における工場建設が盛んになると漁場環境が悪くなりました。その後、港湾整備計画が本格化するにともなって、約300年間にわたる海苔養殖業に幕を下ろすことになったのです。このとき海苔生産業者は、東京全体で約4,000軒あり、そのうち半数にあたる約2,000軒が大森の生産者だったといわれています。

かつて海苔の生産に従事した人びとは、その漁業権を放棄し、さまざまな業種へと転業します。
しかし、そのうち海苔生産用具が消滅してしまうことを憂えた有志により保存活動が起こり、やがて海苔資料を中心とした「郷土資料室」が開設され、区によって「大田区郷土博物館」が設置されました。そして親水公園整備事業の一環として海苔関連資料館である「大森 海苔のふるさと館」の開館へと至るのです。


民具を取り巻く激動の歴史を学んだところで、実際に使用されていた海苔生産用具の資料群を拝観しました。収蔵庫にも入らせていただき、貴重な経験となったことと思います。

その後、「海苔付け」に使用する重箱と海苔付けを成形する付け枠について、その採寸と調査カードの作成に取り組みました。


この講義では、民俗学的なモノやコトに興味関心を持っている人、あるいは今後卒業研究で民具や民俗芸能・儀礼などを取り上げたいと考えている方にとっては、民俗学とその勉強の方法にかんしてまとまった知識を得ることができる内容といえます。みなさんの受講をお待ちしております。

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