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和の伝統文化コース

2019年10月19日

【和の伝統文化コース】「秋の京都ー大徳寺の非公開塔頭三寺院をめぐる」

こんにちは。秋も深まってきて、行楽日和の時期となってきました。今回は今秋行われている大徳寺の特別一般公開の様子をレポートしたいと思います。

大徳寺は、臨済宗大徳寺派の大本山で山号を龍寶山といいます。鎌倉末期の1315年に禅僧の大燈国師宗峰妙超が紫野に小堂を建立したのが始まりとされていますが、1325年、花園天皇の院宣により祈願所とされた際、正式に建立されました。この後、室町時代に応仁の乱で多くの建物が焼失しますが、荒廃した大徳寺を堺の豪商の支援を受けて復興したのがあの有名な一休宗純です。桃山時代には豊臣秀吉が織田信長を弔うために総見院を建立し、寺領を寄進したことを機に戦国武将の塔頭建立が相次ぎます。
境内には別院2寺、塔頭22寺があり、国宝や重要文化財に指定された建築、庭園、美術工芸品を多数有しています。本坊の方丈庭園は江戸時代初期を代表する枯山水であり、方丈内の襖絵はすべてが狩野探幽筆です。その他にも国宝の牧谿筆観音猿鶴図、絹本着色大燈国師頂相他、墨跡が多数保存されています。
大徳寺はまた、茶の湯にたいへん縁の深い場所でもあります。侘茶の祖、珠光を始め多くの茶人が参禅したと考えられ、また千利休がその上層部の造立に携わったという山門や、「きれいさび」で有名な大名茶人、小堀遠州の作とされる孤篷庵もあります。

今回の特別公開では非公開塔頭の三寺院を見ることができます。興臨院、黄梅院、総見院それぞれの見どころをご紹介しましょう。
まず、最も古い興臨院は、大永年間(1521~1528年)に能登の守護大名畠山義総が創建しました。興臨院の名は畠山義総の法名から付けられています。1581年に前田利家によって屋根の葺き替えが行われ、それ以後畠山家に加えて前田家の菩提寺になりました。特別公開では、室町期の建築様式を残した本堂、方丈庭園、唐門、茶室「涵虚亭」などが見られます。
続く黄梅院は、1562年に織田信長が父・信秀の追善菩提のために建立した小庵「黄梅庵」がその始まりでした。信長の死後、秀吉が増築し、1589年に「黄梅院」と改めました。雲谷等顔筆の襖絵、加藤清正が朝鮮出兵の際に持ち帰ったとされる釣鐘、千利休が作庭したといわれる「直中庭」、紹鴎の作とされる茶室「作夢軒」など見どころはたくさんあります。
最後は総見院。信長の一周忌に、秀吉が追善菩提のために建立しました。秀吉が奉納した木造織田信長坐像や信長の墓碑などがあります。茶の湯とゆかりの深い総見院には、三つの茶室が並んでおり、総見院方丈で秀吉が茶を点てたという記録も残っています。

私が行った10月10日には、まだ総見院は公開されていなかったので、興臨院と黄梅院の二寺院を見てきましたが、とくに黄梅院は大変広く、二か所見るだけでもかなりの満足が得られました。寺院の内部は原則撮影禁止なので、外部の写真だけですが雰囲気を味わっていただければと思います。



北大路大宮の交差点を右折し、少し北へ行ったところに大宮通沿いの入り口があります。黄梅院は、入って比較的すぐの道を左折し、しばらく行ったところにあります。正面はこんな感じです。





門をくぐってすぐの前庭は撮影可能でした。この釣鐘が加藤清正が持ち帰ったとされる鐘でしょうか。



長い廊下をぐるっと回って本堂のほうへ向かう途中には、ひょうたん型の池がある「直中庭」、そして細長い形の方丈庭園があります。また、重要文化財に指定されている雲谷等顔筆の襖絵も見ることができました。本堂を抜けたところにある僧侶の居住空間、庫裡は禅宗寺院の最古と言われるもの。薄暗い建物の中に入ると当時の雰囲気が伝わってくるようでした。もう一つ印象に残ったのは大徳寺開山の祖、大燈国師の書かれた「自休」という遺墨でした。一休も千利休もここから一字をとったそうです。

次に行った興臨院は、元の道に戻り西にしばらく歩いたところ。ここもそう遠くはなく、5分ほどで着きました。写真の表門は、重要文化財で大徳寺でも有数の古い門です。



方丈前の庭園は中国の蓬莱山をイメージして作られたという枯山水庭園です。時間があればゆっくり座って眺めたいと思うような美しいお庭でした。このお寺で一番印象に残ったのは、茶室「涵虚亭」でした。蘇東坡の詩から名づけられたとされる四畳台目のこじんまりとした部屋ですが、貴人口のある織部好みの茶室で、天井の高さが三か所で違ったり、袖壁が出ていて洞のように見えることから洞床と呼ばれている床の間など変わった風情のある茶室でした。

興臨院は12月15日まで、黄梅院は12月8日まで、総見院は11月30日までそれぞれ一般公開されています。春と秋、二回しかないこの機会にぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょう。

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