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空間演出デザインコース

2019年11月20日

【空間演出デザインコース】秋のエクスカーション2019(関東)レポート

皆さんこんにちは。空間演出デザインコース(空デ)の川合です。お元気にお過ごしでしょうか?今回は、毎年秋に開催する空デエクスカーションという課外学習について、11/9(土)に開催された関東の様子をレポートいたします。

■     空デエクスカーション(関東)「空間演出デザインの現場から」


住宅をはじめとして、大型商業施設やオフィスの空間デザインなど、国内外でご活躍の建築家・大野力先生(空間演出デザインコース非常勤講師)をゲスト講師にお招きして、講義+現場見学ツアーという豪華2本立てでエクスカーションを行いました。
まずは、外苑キャンパスに集合して、1時間の講義です。講義の後に見学する、大野先生の手がけた、JR新宿駅新南エリアのコンコースやSuicaのペンギン広場、NEWoManという商業施設を中心に、そのデザインコンセプトや設計の勘所、裏話などをたっぷりとうかがいました。



JR新宿駅は言わずと知れた日本最大級の駅舎で、ひっきりなしに電車の通っている線路がある地面の上に人工地盤が作られて、さらにその上に駅舎がのっているという、土木技術の英知の結晶のような構造になっています。そうした特異な構造を持つ場所に駅舎、広場、商業施設を一体的な環境として、グラデーショナルにつなぐため、それぞれの空間の密度や質を調整して、場の連続性をつくりながら、各用途固有の課題解決を実現されました。

Suicaのペンギン広場の設計では、当初の計画では2000平米を超える大きな空間に、ベンチがポツポツと置かれていただけですが、「ただ広いだけでは、人々が広場全体を使いこなせない」と、日本人の広場リテラシーのなさを見抜き、都市的なスケールの広場に対して、建築的、インテリア的なスケールを挿入し、円形の足湯場のようなベンチや線路を見下ろしながら一人で座れる椅子、ステージやひな壇など、さまざまな居場所が設えられています。また、敷地東西の約2mの高低差を利用して、スロープやアンジェレーション(起伏)を設えて、抑揚のある空間を創り出されました。こうした断面的な操作と平面的な空間の分節を行うことが、ペンギン広場の成功につながったそうです。ただ、現在のペンギン広場は(ここには書けないユニークな理由で)改修工事中ということで、一旦解体されて、また別の形に生まれ変わるということです。講義では、新しいペンギン広場のエスキス過程や、完成予想図など詳しく説明いただきました。

ペンギン広場:http://www.sinato.jp/works/suicas-penguin-park/

また、NEWoManの設計では、これまで日本中の商業施設で挑戦されてきた「専有部(ショップ)と共有部(通路など)の境界をあいまいにする」というテーマからさらに一歩踏み込んだ3つの手法に挑戦されたということです。一つ目は、リースラインと呼ばれる専有部と共用部の境界を意図的にずらしたデザイン。一般的に専有部はそれぞれ固有のデザイナーたちが設計するため、全体の意匠統一を図ることが難しいのですが、共用部の意匠が専有部に入り込んだり、隣接するショップ同士の間仕切りの一部を透明ガラスにしたりといった細かなレギュレーションを定め、施設全体が混ざり合い、一つの大きな店と感じられることを目指したそうです。二つ目は、共用部に多彩な仕上げ材料とカラーリングを導入し、専有部と共用部の視覚的な情報量のバランスをとり、視覚的にショップと通路の境界線を意識されにくくしたそうです。三つ目は、共用部に隠れている小さなデッドスペースを情報カウンターや休憩スペース、飾り棚などの小さなパブリックスペースに設えて顕在化し、施設全体に街並みのような雰囲気を生み出したそうです。そうした手法がうまく機能し、ショップ側にとっても、施設側にとってもメリットのある効果を生み出しているとのこと。大野先生のデザイン力が存分に発揮されています。

NEWoMan:http://www.sinato.jp/works/newoman/#anc01

さて、ここで一旦講義を終了し、JR新宿駅に向かいました。
雑踏の中でのツアーですので、イヤホンガイドを装着し、各自の耳元で大野先生の解説を聞きながらスタートです。まずは、駅舎のコンコース天井を見上げます。天井に無垢の木材が使用されていますが、これは半年かけて協議を重ねられた産物とのこと。駅舎というのは電車の通行により常に振動しているため、天井材の選択や構法にも厳しい検証が必要ということで、そうした難題にもこだわりを貫き、目的を達成する大野先生の姿勢に一同驚嘆。明日から駅の天井を見る目が変わります。また、コンコースから改札口まで歩みを進めるたびに解説いただくサイン計画や家具計画、商空間の計画にも「なるほど!」の連続でした。


続けて、ペンギン広場に移動して、工事現場をガラス越しに上から眺めます。大都会のパノラマの下に先ほどの講義で触れられていた光景が目の前に現れて、手に取るように理解が進みます。まだデッキの張られていない下地状態の工事現場をこれほど興奮しながらまじまじと眺める集団もいないでしょう。



「雨水を流す方法はどうしているのですか?」と言った具体的な質問も飛び出して、皆さん前のめりに見学していました。



最後は、NEWoManです。まずは外から眺めます。写真にある大きな庇は実は大型バスが通行しているスロープだそう。まさかバスが頭上を通って、店内の中も走っているとは思いもよりませんね。商業施設の内部空間のみならず、施設を囲む歩道や道路などの公共空間を有効利用するためのアイデアも行政との相談を重ねながら、社会実験としても進められているとのこと。賑わいを生み出す工夫が随所に散りばめられていました。

店内は大混雑のため、3班に分かれて15分ごとのツアーを行いました。商業施設のため内部写真はNGですが、ここでも先ほどの講義で触れられていたリースラインのレギュレーションが見事に機能している様子を目の当たりにし、その理論と実践の完成度に感服です。明らかに空間を見る学生の皆さんの目つきが変わったことを実感しました。最後には外に出て全員集合、記念撮影をしてエクスカーション終了。大野先生はこのあともお仕事とのことで残念ながらここでお別れし、有志たちで懇親会場へと向かいました。(参考資料:『商店建築』2016年6月号)



当日はお天気にも恵まれて、素晴らしいエクスカーションとなりました。大野先生、貴重な機会を本当にありがとうございました!そして、参加された皆さんお疲れさまでした!このエクスカーションで蓄えた様々な空間の気づきを次の課題制作に活かしていきましょう!それでは、ここまで読んでくださった皆さんもありがとうございました。

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