PHOTO

PHOTO

芸術学コース

2019年12月25日

【芸術学コース】卒業生紹介 貴方は二十歳

通信教育部のパンフレットでは毎年卒業生の方に直接お会いして在学時のお話をお伺いしていますが、その内容をこちらのブログでも紹介いたします。

本日は芸術学コース。「ある人物」に誘われ入学した松田さん。入学後の学びの広がりと深まりについてお話いただきました。

松田さんを本コースへと誘った、その男性の名は関根正二。いまから100年前に夭折した洋画家である。「いつか芸術を本格的に学びたい」という長年の希望と、この作家との出会いに背中を押され、本学の扉を開いた。「親も高齢になるので、やりたいことをできるうちに、という気持ちもありました」。

絵の好きな父に手を引かれ、美術館に通いはじめたのは幼稚園の頃。それなりに詳しいつもりでいたが、入学して、自分よりずっと若い先生方の知識に圧倒された。「どれだけ数多くの作品を見ようと、それぞれを個別に捉えていては、理解したとは言えないんですね。時代の傾向や文化、政治など、すべてがつながって、ひとつの作品が生まれるのだと教わりました」。さらに、写真やデッサンなどの実技科目にも挑戦。「制作系の学生さんとも知り合えて、作り手の気持ちに少し近づけた気がします」。孤独だと思っていた通信教育で、驚くほど豊かに広がっていった人の輪。ちょっとした学習の相談から芸術論まで、世代を超えて熱く語り合える学友との出会いは、他では得られない貴重なものだったという。

多くの人や学びにふれ、見る絵のジャンルも広がり、それでも松田さんに心変わりはなかった。関根についての数少ない文献を何度も読み返し、どこの店に通っていたかまで調べ尽くす。「まるで恋する乙女、いやストーカーだね、なんて学友にからかわれました」。その甲斐あって、図録の小さな写真から、持論の裏付けとなる証拠を発見。「頑張る人には、いつかそういうご褒美が降ってくるものです」と、偶然をつかんだ粘り強い努力を、先生に讃えられた。

「いまは大学院で、関根を直接知る人の資料を集めて整理を試みています。記憶や記録が失われてしまう前に、なんとか後世に残したくて」。貴方を忘れない。忘れさせない。松田さんの情熱は、短すぎた画家の生き様を、末長く人々の心に刻みつけていく。卒業したいまも、学友たちとメールやSNSで近況を伝えあい、飲み会などを開催。「気に入った展覧会や作家について、夢中で話し込んでいると、青春時代に戻ったようです」。



松田 佳子さん
芸術学コース(3年次編入学) ’18年度卒業 神奈川県在住 56歳

芸術学コース|学科・コース紹介

この記事をシェアする