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日本画コース

2020年01月08日

【日本画コース】卒業生紹介 生きてゆく画

通信教育部のパンフレットでは毎年卒業生の方に直接お会いして在学時のお話をお伺いしていますが、その内容をこちらのブログでも紹介いたします。
本日は日本画コース。ほぼ50年ぶりに絵筆をとった米沢さん。そこで学んだ日本画で描くものとは。

ほぼ50年ぶりに絵筆をとった米沢さん。芸術とは無縁の公務員として生きてきたが、還暦を前に「小学校の先生に自画像を褒められた」思い出に導かれ、入学を決めた。「どうせなら大学で体系的に教わろうと、退職の数年前から学費を貯めました」。緊張しながら訪れた説明会で、先生方の人柄に惹かれ、つい選んだのは未知の日本画。画材の扱い方から線の描き方まで、やることすべてが初体験のなか、とにかくスクーリングで筆の運びや色づかいを見習い、テキスト科目で復習を繰り返した。

「授業中、迷っていたらザバッと先生に画を洗われて、エエッと仰天したこともあります」。思いのままに塗り重ね、違ったら洗い流してもいい。これまでのイメージを覆す日本画の大胆さを知り、ワクワクする一方で、ついていけないもどかしさを感じた。「堅い仕事の習性か、どうしても細部に集中して、全体を見られなくなるんです」。しかし、そんな実直さこそ上達への近道。あらゆるデッサン系科目をとり、だれよりも長く教室で過ごし、描きつづけた米沢さんの筆は、徐々に成長を遂げていった。「卒業制作は、これまでの課題になかったものを描きたくて」選んだのは、大好きな動物であるゴリラ。

箔を焼き、胡粉を盛りあげ、毛描きだけで彩色をほどこす。「ここで教わった技法のすべてを注ぎました」という作品は、卒業制作展で元同僚たちの目を見はらせた。「こんな日本画もあるんだね、と言われて、なんともうれしい気持ちになりました」。さらに、得たのは技だけではない。「ものでも人でも、〝よく見ること〞の大切さを教わり、この歳にして生き方が広がりました」。ただ唯一の心残りは、描くきっかけをくれた恩師に、この世で画を見せられなかったこと。「ひとこと、御礼を言えたらよかった」とつぶやく米沢さん。万感をたたえたゴリラの眼差しは、これからを生きる強さで、見る者の心を捉える。



米沢 弘治さん
日本画コース(3年次編入学) ’18年度卒業 大阪府在住 64歳

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