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2020年02月05日
【文芸コース】櫻井秀勲氏による特別講義


櫻井さんは最新刊「誰も見ていない書斎の松本清張」を昨年末に上梓、200冊を超える著書の創作活動は今年88歳になる2020年も精力的です。没後50年を記念して、三島由紀夫本の出版を予定しています。
特別講義は、編集者、出版社社長そして作家という出版界に欠かせない3つの重要な仕事をこなす櫻井さんならではのお話をたっぷりと聴くことができました。
お話しに登場する作家の名前は多士済々。旅先で出会った太宰治にはじまり、出版社の同期で直木賞作家となった色川武大、自宅で編集者と会う場所を4種類持っていた三島由紀夫など、文豪といわれた明治から昭和、平成に渡る綺羅星のような文豪たちとのエピソードは、興味深い面白いものばかりでした。
会場の受講生へのメッセージも数多く聴かせていただきました。
五味康祐は12000字という少ない文字数で芥川賞を取ったエピソードから賞狙いで書くのもよいと話は続きます。「編集者の考えていることは、後世に残す作品を出版したいということにつきる。賞をとるまでは作家ひとりだが、賞をとった後は作家と編集者と二人三脚になる。作家を目指す人はよい編集者とつながることが大切」。
「2本作品を応募して、どちらか1本でも佳作に通ったら作家をめざしてよい。ダメだったら、プロになるのはあきらめる」と厳しい言葉が出た時には会場がざわめきました。
「文章表現なのか、物語なのか、メッセージなのか、歴史の解釈なのか。作家が何を大切にどう書こうとしているかがはっきりしていれば、編集者はそれを際立たせるためのアドバイスをすることができる。人としての特徴、生き方が面白いことはベストセラーの条件なので、当たり前ではない生活をしている人、面白い発想や行動をする人の方が、作家に向いている」と編集者の眼を語ります。

作家を目指す受講生にむけて、ご自身が55歳の時に最初の著書「女がわからないでめしがくえるか」をサンマーク出版から出した経験からのアドバイスもありました。
「続けて5冊出し「女の心がわからなくて」シリーズとなった。よく売れれば最初の出版社が離さない。「本を書きたい」「本を出したい」から「本を売りたい」へと発想をかえることはベストセラー作家への道でもある」。
さらに「これから作家を目指す人には電子書籍の方が可能性がある。作品とともにSNSを活用してファンを作りその人たちが買ってくれる仕組みを作ることができれば成功する」と、努力を惜しまぬ姿勢を教わりました。


長年午前3時就寝、午前9時起床を続けるという櫻井さんの衰えぬ創作意欲と活力の秘密は、「極力タクシーを使わず歩く」「あたりを見渡して、一番速く歩いている人をみつけ88歳の今も、その人よりも速く歩くようにしている」「来年4月に90歳のYouTuberとしてデビューする予定で準備を進めている。それを考えただけで、ワクワクする」など身近な目標を持つことで健康でいられるのかと納得できることばかりです。

伊藤宏子
【事務局よりお知らせ】
2月11日(火・祝)京都で特別講義を開催します。
今回はインタビュアーとして活躍中でもあり、また文芸コース提供の学科専門スクーリング科目「インタビューの取材と方法論」(東京)をご担当されている木村俊介(きむら しゅんすけ)さんをお招きすることとなりました。
木村さんは東京大学在籍中に『奇抜の人ー埴谷雄高のことを27人はこう語った』(平凡社)を出版し、その後『インタビュー』、『善き書店員』(共にミシマ社)、『漫画編集者』(フィルムアート社)など刊行しました。聞き書きとして『調理場という戦場』(朝日出版社)や、2019年10月20日にはロックバンド「クリープハイプ」が10年間を語るノンフィクション『バンド』(ミシマ社)を出版しました。様々なインタビュイーの声を聴いて作品として完成させてきた木村さんに、声や音と言葉の関係についてお話を聞きたいと思います。
今回の特別講義シリーズは通学部文芸表現学科の文芸イベント「Storyville」との共催で、おもに通学部学生・卒業生による朗読とトークイベントの2部構成となります。また学外の会場での開催を予定しています。
日時:2月11日(火・祝)17:00〜20:00(予定)
会場:恵文社Cottage
開場:16:30
17:00 第1部 朗読
19:00 第2部 トーク 木村俊介(インタビュアー)
※事前申込不要。
※参加費
一般:500円(1ドリンク付き)
通信教育部学生:無料(かならず学生証をご持参ください)
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