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2020年05月25日
【和の伝統文化コース】行けば何かがわかる。中国庭園における現地の学びの大切さ

今回は、私が2017年に訪れた中国庭園の様子を紹介したいと思います。
私の専門領域は「日本の空間文化」全般なのですが、そのなかに日本庭園があります。日本庭園の最初期の形は、古代に中国や朝鮮の大陸形式を輸入したものとされており、そこから日本らしい庭園形式に展開していきました。そこで、日本の庭園文化に多大な影響を与えた中国庭園とは、一体どのようなものだろうと見て回ることにしたのです。
中国庭園の詳細は授業で触れることにして、ここでは現地の様子をほんの一部ですがご紹介します。
来園者のほとんどは中国の方で、大抵が数人のグループで訪れています。そして昼時になると園内のあちこちで楽しそうにみんなお弁当を広げます。時には来園者だけでなく庭手入れの女性たちまでが、施設内の四阿(あずまや)でお弁当を広げて楽しそうに語らっていることもありました。また中国庭園には、太湖石などの奇石を庭に設えて愛でる文化があるのですが、2~3mの高さに奇石を積み上げた洞窟や築山を、まるで公園のジャングルジムで遊ぶ子どものように、中高年の大人たちが楽しそうに登ったりくぐったりしてはしゃいでいました。
文献から中国庭園の予備知識はあったものの日本庭園を主にしていた私には、これらの光景を目の当たりにして正直面食らいました。日本庭園のように静かに庭を眺めたり、手入れがされた苔を踏まないように気を付けて歩いたりといった、ちょっとした緊張感などはありません。「ここは人々が思い思いに楽しむ空間であり、そのために池や建物や植栽や奇石が存在している。中国庭園は人が主役なのだ」と私は理解したのです。また園内の建物や造形物においても、細工の細かさ完成度の高さが見事で、それに比べると日本のそれらはよく言われるように、簡素で未完成といった感じに眼に映ることも理解できました。
現代はインターネットの普及によって、様々なウェブ媒体から世界各地を自宅に居ながら閲覧することができます。ただそれでもやはり、現地で体験しなければ知り得ない情報や、五感で理解する文化の根っこのようなものがそこにはあります。例えば、自然環境や風土、人々の風習や生活文化などがそうです。また、外部からの目線だからこそ目に留まるモノやコト、他国の文化を知ることで却って日本文化を理解することもあります。自分の眼で見て、耳で聞き肌で感じて、納得したり発見したりすることは、楽しいだけでなく、自分だけの有意義な学びとなります。
状況が落ち着いた折には、学習や研究方法のひとつとして現地へ足を運ぶことを取り入れてほしいと思います。訪れる場所の計画を立てると、そのための事前学習にも自然と力が注がれるはずです。
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