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和の伝統文化コース

2020年11月24日

【和の伝統文化コース】『茶と花』の世界・伝統文化を覗いてみましょう!

皆さん、こんにちは。和の伝統文化コース非常勤講師の黒河星子です。

11月も半ばを過ぎ、いよいよ冬の気配が色濃くなってきました。
このブログが公開される頃には、各地で紅葉も見ごろとなってきていることでしょう。気が付けば今年もあと1ヶ月余りですが、体調に気を付けて気持ちよく新年を迎えられるようにしたいものですね。

さて今回は、和の伝統文化コースの主任、井上治准教授の著書をご紹介したいと思います。

歴史教科書などでも有名な山川出版社から、今年3月に発行された「日本の伝統文化」シリーズの『日本の伝統文化5・茶と花』という本です。
2019年8月に発行された五味文彦氏執筆の『日本の伝統文化1・伝統文化』をはじめ、『浮世絵』『歌舞伎』『相撲』『茶と花』『武道』の全6巻から成るシリーズです。山川出版社のホームページでは、「浮世絵・歌舞伎・相撲・茶や花・武道などに代表する日本文化の、生成・継承・変容の過程を追いながら、伝統文化とは何か考えるシリーズ」と紹介されています。
「伝統文化」というフレームの下それぞれの分野の第一人者が執筆を担当し、このような網羅的な概説書が新たに出版されたことは、たいへん意義深いことだと思います。和の伝統文化コースで学ぶ皆さんは自分の関心のある分野はもちろん、時間がありましたら、全巻読んでみるのもよいかもしれません。

今回ご紹介する『茶と花』は、井上先生と熊倉功夫先生の共著書となっています。
ご存じの方も多いでしょうが、熊倉先生は主に茶文化や食文化研究の分野で多くの業績を残して来られた研究者です。この『茶と花』では、前半熊倉先生が茶文化史について、後半で花道史について井上先生がそれぞれ執筆を担当されています。茶道史と花道史の体系的な通史を一冊にまとめた書籍ということ自体がまず貴重ですが、最新の研究成果をふまえながら、それぞれ一人の研究者の一貫した視点から書かれているという点もこの本の大きな魅力です。

熊倉先生は、喫茶文化のはじまりから、茶の湯の成立、遊芸化、そして近世後期以降の「改革」について、単に芸道としての「茶道」という狭いフレームではなく、「生活文化」として茶の湯の伝統を捉える視点から書かれています。とくに、茶の湯という伝統文化を単に静的に「継承」されてきたものとしてではなく、「変革」があったからこそ現代に受け継がれているというストーリーが大変わかりやすく、興味を引きつけます。

一方の井上先生は、日本の花文化の歴史を古代から現代まで概観されていますが、芸道としての「花道」の形成を軸にして書かれています。2016年の『花道の思想』では哲学的な視点からの花道研究でしたが、今回は花道の通史をまとめられています。
さらに、従来の花道史において主流であった「様式」ではなく、宗教、装飾、作品などといったような花の「性質」で分類するという独自の視点から書かれているところが一番の特徴でしょう。

このようにお二人の論考はそれぞれのカラーが出ていて面白いのですが、それは「生活文化」という側面を重視する熊倉先生と「芸道」という側面を重視する井上先生のスタンスの違いもさることながら、「茶」と「花」の性質の違いも関係するのでしょう。
「はじめに」の中で熊倉先生は、「茶、花、香といった文化は限りなく芸能に近いものがありながら、日常性を強くもっているために他の芸能とはどこか異なる性格があろう」と書かれています。その上で、「ただしいけばなは、ある時代から茶の湯と別の性格をもつようになった」として、17世紀初めの池坊専好から生活から離れた造形作品を志向するようになったとの見方を示されています。
この本を通して、「茶」と「花」の文化について新しい観点から見直してみることも有意義ではないかと思います。

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