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アートライティングコース

2021年03月03日

【アートライティングコース】惑星の軌道は円ではなく楕円である(ヨハネス・ケプラー)

光の春、3月。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。アートライティングコース非常勤教員のかなもりゆうこです。3月は学業においても節目の時期ですね。1年を振り返って成果を確かめ、新たな気持ちで次なる目標を立てておられることでしょう。陽射しが暖かくなって身体も緩むので、それに連動して発想や思考も伸びやかになっていくように思えます。

さて、冒頭に掲げた自然法則を17世紀初頭にケプラーが導くまで、惑星運動は完全な円であると考えられていました。それは理性が短絡的に推論していたからであり、私たちのなかに対称性を完全性と受け取ってしまう、ある種の傾向があるからです。ところがケプラーは、観測時のわずかな差を誤差と扱わず、桁数の多い計算を厭わぬことで法則の確立に至ったのです。完全な円と近似的な円には根源的な違いがあるという着眼点と、精密な測定によって検証される数学的法則性。それによって、元は占星術や暦のための自然学であった天文学が、数学的な物理学へと大転換しました。

またその時代、観察や測定、数値の把握と記述という実作業をとおして自然や事物と向き合うことの有効性が認識され、学問や言語・文字文化がアカデミズムだけのものではなく、職人や技術者、商業における数理など、職業的な手作業の過程で習得してきた経験知によって世界の理解が進んでいったのです。
「私がこれから述べることを実行しようとすれば、普通は研究など一度もやったことのない職人の技巧に頼らねばならない」
これは思弁家といえるデカルトが、屈折光学の研究について述べるにあたって語った言葉です(『デカルト著作集 1』)。

ところで、なぜ天文学史が興味深いかというと、15世紀にグーテンベルクによって活版印刷術が開発されてから、その有用性を学者たちが受け止め、活用し始めたからです。ケプラーやその師であるティコ・ブラーエなど16世紀後半から17世紀の学者は、自ら印刷物を出版することを念頭において研究に取り組み、紙不足に対応するためにティコは製紙所まで設立しています。最高峰の天文学者であったふたりは印刷者・出版者でもあったのです。

下の写真は、ケプラーがティコから引き継いだ火星の惑星軌道の観測データを用いて、楕円軌道を図示した『新天文学(Astronomia Nova…)』の頁です(『天文学と印刷 新たな世界像を求めて』凸版印刷株式会社/印刷博物館 より)。この図録では、天文学者たちが書物を使って最新の学知を発表していくということだけではなく、高い学識を持った学匠印刷家の存在についても触れています。彼らは印刷技術のみならず、編集や校訂・校正を行って新たな刊行物をつくる能力を持っていました。

自らが取り組んだことを活字で表現し、印刷物として発表するという営みは、この時代から脈々と続いてきたのです。
これらのことは、研究や取材の姿勢そして発信することの、何らかの励みになるのではないでしょうか。折しも近年、読み手に届けるための手段は格段と身近なものになっています。

「放てば手に満てり」(『正法眼蔵』道元)

作品を長い期間あたため、磨き上げていくことはもちろんとても大切なことです。しかしその欲望が過ぎてしまうことがあります。ある時、自分から放ってみるとどうでしょう。放つための心構えに入り、いっそう厳しい目で最終判断をすることで、内容が飛躍的にブラッシュアップされるかもしれません。読んだ人からの反応が参考になり、次の制作の展開に繋がるかもしれません。いずれにせよ自分のなかに新たな視座が生まれることは確かです。それに加え、誰かに何らかの影響をもたらすことになります。

ちなみにケプラーはデカルトからニュートンへと至る光学研究の基礎を与えた人物でもあります。彼は光学に関する書物をいくつか著しており、若き日のニュートンはそれを読んで光について関心を持ち始め、やがて重要な理論が生まれたのです。ニュートンは手作業で非球面レンズを磨いているとき、光がプリズムによって分光されて色のスペクトルが現れること、それを再びプリズムに通すと白色に戻ることを発見しました。

アートライティングの学びのなかの結び目として、成果物の制作、発表を思い浮かべてみるのも楽しいですし、それを踏まえて書くことで、きっと事象の捉え方が広がったり転換したりしてゆくことでしょう。
どうぞのびやかな発想をめぐらせる春をお過ごしください。

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