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和の伝統文化コース

2021年03月19日

【和の伝統文化コース】四月八日のお花まつり

【高幡不動尊のお花まつりのお釈迦様 2019年4月8日筆者撮影】



野山が若草色に染まり、早春の息吹を感じる季節となりました。

お元気でお過ごしでしょうか。和の伝統文化コースの雨宮智花です。

皆さんは、どんな瞬間に春の訪れを感じますか?
お花見をした時、公園で福寿草を見つけた時、ふきのとうを食べた時、プロ野球やJリーグが開幕した時など…沢山あるのではないでしょうか。

私は、四月八日にお花まつりをお祝いしている寺社に伺った時に、春の到来を感じます。今回は「お花まつり」について、お話させて頂きます。

【高幡不動尊のお花まつりの花御堂 2019年4月8日筆者撮影】



 

【高幡不動尊のお花まつりの甘茶の説明 2019年4月8日筆者撮影】



お花まつりは、四月八日の釈迦の誕生を祝う仏教行事であり、灌仏会の俗称とされています(註1)。寺院では、花御堂という小さなお堂を用意して花で飾りつけをします。花御堂の中には、甘茶が注がれた盥が置かれ、その中に釈迦の誕生仏の像を安置します。甘茶は、ユキノシタ科の落葉灌木「アマチャ」の葉を乾燥させた茶葉を使用します。寺社では茶葉を煮詰めて甘茶を準備します。甘茶は参詣者にも振る舞われることが多いようです。甘茶は、釈迦が誕生した時に天の龍神が香油を注ぎ祝福した、或いは天から甘露の雨が降ったという古傳が由来とされています。

ここで『日本書紀』推古十四年(六〇六)四月八日条を見てみましょう。

【国会デジタルコレクション「日本書紀 国宝北野本 巻第22」(16コマ)】



十四年夏四月乙酉朔壬辰、銅繡丈六佛像並造竟。是日也、丈六銅像坐於元興寺金堂。時佛像、高於金堂戸、以不得納堂。於是、諸工人等議曰、破堂戸而納之。然鞍作鳥之秀工、不壞戸得入堂。卽日、設齋。於是、會集人衆、不可勝數。自是年初毎寺、四月八日・七月十五日、設齋。

 推古十四年(六〇六)四月八日に元興寺金堂において(註2)、銅仏・繡仏の完成に際しての斎会が行われ、 是の年より寺毎に四月八日、七月十五日に斎会が執行されるに至ったとあります。この「設齋」は灌仏会と孟蘭盆会と考えられています。また奈良時代には花御堂に誕生仏を設置し五香水(註3)をかけたことが伝わっています。灌仏会は、華やかに花御堂を飾り、甘茶が振る舞われる子供中心の行事であったことから、近年になってから「花まつり」という呼び方が用いられるようになりました。

日本において、キリストの誕生を祝うクリスマスは一般に知られており、もうすぐクリスマスだね、いう言葉が日常に使われているように思います。「もうすぐ花まつりだね」という言葉も、春先に溢れたら楽しいのではないでしょうか。

今回ご紹介した写真は、東京都日野市の高幡山明王院金剛寺(通称、高幡不動尊)の花まつりの様子です。古文書によれば大宝年間(七〇一)以前の創建、あるいは奈良時代に行基菩薩が開基したとも伝えられています。平安時代初期に慈覚大師円仁が、山中に不動堂を建立し、不動明王を安置し、大寺院の形態が整えられたとされています。三万坪の敷地では四季を彩る自然や景観風情を望むことが出来ます。不動明王像や不動堂、仁王門など多くの文化財が現存しています。

まだ少し落ち着かない日々が続きますが、四月八日にお近くの寺社の「お花まつり(灌仏会)」を尋ね、鮮やかな花を愛で、甘茶を味わい、子供のような気持ちでお釈迦様のお誕生日をお祝いされてみてはいかがでしょうか。どうかお元気でお過ごしくださいね。

〈 註釈 〉
(註1)地域や寺院によっては、降誕会、卯月と呼ばれています。地域によっては五月八日に開催されています。
(註2)飛鳥寺(法興寺)と考えられています。
(註3)五種の香料を加えた五色の香水。青、黄、赤、白、黒。

〈 参考文献 〉
木村雄四郎「甘茶」薬局4月号、南山堂、1953年
伊藤新之輔「卯月八日の甘茶」東アジア文化研究第3号、國學院大學大学院研究科発行、2018年
中村直勝「中宮寺のお花まつり」茶道月報七月號、茶道月報社、1948年
辻村全弘「熱田神宮灌仏会の変遷」儀礼文化第二号、一般社団法人儀礼文化学会、2014年
小林真由美「百日讃嘆と灌仏会」成城國文學論集第二十六輯、1999年
遠藤滋「花祭り」仏教行事歳時記〈四月〉花祭り、第一法規出版、1989年

 

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