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文芸コース

2021年11月24日

【文芸コース】草間彌生とイタリア・コミックの世界

文芸コースでは小説、エッセイ、批評、トラベルライティングなど、ジャンルや時代、国を問わず、様々なタイプの文芸に接しながら学ぶことで、自らの「スタイル」を見つけてもらうため、多彩な講師陣がひとりひとりの学びを支えています。

今回のそんな講師陣の中から栗原俊秀先生に翻訳の世界についてお伝えして頂きます。

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文芸コース教員の栗原です。

本学の文芸コースには実作者(小説家)、編集者、研究者など、いろいろな肩書きをもつ教員が在籍していますが、私はふだん、翻訳家として活動しています。ひとくちに「翻訳」といってもいろいろなのですが、私が主な活動の舞台としているのは出版の世界です。イタリア語から日本語への翻訳がメインですが、英語の小説も何冊か訳しています。はじめて訳書が世に出たのは、約10年前の2012年、イタリアに留学しているときのことでした。現在までに、共訳を含めて17冊の訳書が出版されています。

昨年は、念願だったコミック作品の翻訳を手がけることができました。それが、『コバニ・コーリング』(ゼロカルカーレ著、花伝社)というルポルタージュ・コミックです。著者のゼロカルカーレはイタリアを代表する人気漫画家で、日本のサブカルチャーからも大きな影響を受けています。今年の11月からは、彼の作品を原作とするアニメがNetflixで公開されています。(https://www.netflix.com/jp/title/81304528





最新の訳書が、今年10月に刊行された『KUSAMA 愛、芸術、そして強迫観念』(エリーザ・マチェッラーリ著、花伝社)です。これは、日本のアーティスト草間彌生の生涯を、イタリアの漫画家が描いた作品です。「かぼちゃ」や「水玉」など、草間の芸術を象徴するモチーフは、いまではすっかり有名になりました。しかし、彼女の若いころの活動、たとえばニューヨークで「反戦の女王」などと呼ばれていた過去については、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。私が訳した『KUSAMA』は、約130ページという短い紙幅で、この稀有な芸術家の栄光と蹉跌、そして、不死鳥のような再生を活写しています。草間彌生に関心のある方はもちろん、海外漫画の世界を覗いてみたいという方に、ぜひ手にとってみていただきたい一冊です。本書には、草間の故郷・松本の風景も描かれていますが、これがまた、日本の漫画ではお目にかかることのない、独特の味わいを醸し出しています。



 




来年2月には、上記『コバニ・コーリング』、『KUSAMA』の版元である花伝社の編集者もお招きして、「翻訳」をテーマにした特別講義を開講する予定です。こちらはあいにく在学生向けのイベントとなりますが、来年度以降も機会を見つけて、翻訳にかんする特別講義などを企画していきたいと思っています。次の春に入学してくるみなさんと、言葉を交わせる日のことを、いまから心待ちにしています。





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