【ランドスケープデザインコース】コロナ禍に足元を振り返り持続可能な社会へ－2021年度卒業制作展

ランドスケープデザインコース業務担当教員の藤津です。2022年3月12~20日に開催した卒業・修了制作展の様子をレポートします。
本コースでは2021年度4年生相当の26名が卒業制作の審査を無事パスし、パネルや模型を本学瓜生山（京都）キャンパス人間館で展示しました。
一年間取り組んできたテーマがA1パネル５～6枚とA1程度の大きな模型となり、ずらりと並ぶ様子はなかなかの迫力。地域、年代、経験の全く異なる学生たちの発表は、幅広くバラエティに富んでいます。
卒業制作では、対象地の緑地環境の整備、保全、改修を通じて空間創造、コミュニケーション促進、地域振興などを提案していきます。思い入れのある場所を対象にして、日本・世界の知られざる場所や思いがけないスポットなどを紹介し、学生独自の視点が光ります。

 



【今年度の傾向１　個人庭園vs.公共空間】
今年の傾向としては公共空間や共有地のプランが多く、明確に個人庭園プランといえるのは１件でした。個人庭園の提案は具体的な要望が明確であり、細やかな配慮や愛着の感じられる提案となります。一方、共有地のプランは社会問題へのまなざしを起点として、問題点に切り込む提案となります。

【今年度の傾向２　都市vs.田園】
対象地の立地状況として都市環境が5件程度。緑地を創造・再発見し整備・保全する、という提案です。また人工地盤の植栽計画は4件ほど。駅や橋、高層ビルなどのランドマークの緑化が今日的です。そして、今年度多かった地方、郊外、里山・里海など田園環境を取り上げた提案は人口減社会に向かう日本の状況を映す鏡となりました。これらはもともとの緑地に魅力があり、経年劣化を整理し、自然の恵みを持続的に維持して利活用することが重要になります。海辺やまちに残る森や山林、再整備の必要な親水空間などみな魅力的で、そこに関わってきた人々のなりわいが風景ににじみ、今後の展開に興味をひかれます。

 



【今年度の傾向３　コロナ禍にあって足元を振り返り持続可能な社会へ】
コンセプトやテーマは、学生自身の問題意識のありようです。農林業、コミュニティ形成、Iターン移住、防災、在来工法、生物多様性保全…現代の多様な価値の重要性が如実に伝わりました。学科賞受賞の「Sun Sui Go Connect」は、河川流路を動線として分散型の拠点を置き、地域活性化をはかるという提案で、最新の高揚感あるデザインに加え、地方におけるモビリティ改革支援についても練り上げています。またアグロフォレストリーと時空デザインを組み合わせた里山再生、コロナ禍にある今の生き方を過去に照らして振り返る史跡公園、自然体験を通じて子どもが成長する庭など、説得力のある受賞作が並びました。
数年前は学生のほとんどが画像編集ソフトや模型を初めて触ったという状況でしたが、今回の展示は細かなところまで気を配ったデザインに自信が感じられ、その成長ぶりには目を見張るものがありました。学生のみなさん、本当にお疲れ様でした。素晴らしい作品をありがとうございました。

【通信制大学院　日本庭園分野から】
会場では、通信制大学院日本庭園分野から2名の展示があり、造園家中根金作の作品が残されている町の景観に関する研究論文、「信州志賀石」に関する研究論文もどちらも大学院研究にふさわしい集大成であり、大変興味深く拝見いたしました。

 



卒業制作はランドスケープデザイナーとしての始まりの大きな一歩です。制作の過程で発見したことは、その人だけが獲得した芽生えの種だと思います。卒業後の歩みはいろいろだと思いますが、目標を見失いそうになった時こそ、この宝物を決して手放さないでいてほしいと切に願います。これからも一緒に歩んでいきましょう。

本コースの卒業制作のアーカイブをウェブ公開しています。通年で作品を閲覧できるので、ぜひブラウザのブックマークに登録してご覧ください。

2021年度の卒制の取組や最終プレゼン・講評の様子もブログで公開中です。「【ランドスケープデザインコース】卒業制作 最終発表・審査」にて津田先生からのレポートもあわせてごらんください。

【ランドスケープデザインコース】卒業制作 最終発表・審査

 

出願手続きは4月7日まで！ですので、まだ間に合います！

～これから本コース入学を検討される方へ～

オンライン入学説明会（コースのカリキュラム説明）はすべて日程終了しておりますが、本学Webサイトや募集要項、本ブログの過去記事、以下のオンデマンド動画などでも説明会の様子をご覧いただけます。ぜひお役立てください。

▼動画：【ランドスケープデザインコース】とは？教員インタビュー



▼動画：ランドスケープデザインコース入学説明会（2021年度1月度のアーカイブです）