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書画コース

2022年10月25日

【書画コース】文房四宝、さまざまな「筆」のご紹介

書画に欠かせない文房四宝である筆、墨、硯、紙。前々回の書画コースのBLOGでは、墨について特集しました。

前々回の記事はこちら↓

【書画コース】文房四宝、墨を訪ねて


本日は、筆に注目してお送りしたいと思います。担当は、書画研究室の前川です。

さて、皆さんは、筆に色々な種類や分類があるのはご存じでしょうか。本日は、書に用いる筆に焦点を当て、その種類や分類について紹介したいと思います。筆は、姿や形、穂の素材、用途、伝来などによって分類されています。

◎穂の長さによる分類【短鋒・中鋒・長鋒】


上から                                          【短鋒】小号「玉筍」博印堂製                              【中鋒】純羊毫小「飛翔」一休園製                           【長鋒】極品八号最長鋒「清雅」清雅堂製



 短鋒中鋒長鋒は、「穂の直径に比した穂の長さ」によって区別されています。目安として、穂の直径に比した穂の長さが3倍以下のものを「短鋒」、6倍以上のものを「長鋒」、長鋒と短鋒の中間くらいのものを「中鋒」といいます。

 短鋒は、長鋒に比べると腰が強いため、書きやすい筆となっています。篆書や隷書、楷書などのがっしりとした書体を書くのに適しています。

長鋒は、腰が弱いため慣れるまでは扱いにくさがあります。しかし、穂先を自在に操れるようになると線に様々な表情を持たせることができるようになります。

 ◎筆の大きさによる分類【小筆(細筆)・中筆・大筆(太筆)】


上から                                          【小筆】「嵯峨野」龍枝堂曠市作                              【中筆】五号「梧竹清玩」平安堂製                           【大筆(太筆)】中号兼白「永昌」神枝堂製



目安として、14号が「大筆」、57号が「中筆」、810号が「小筆」です。書く文字の大きさによって使い分けられます。

 ◎軸の形による分類【だるま筆・普通軸筆】


上から                                          【だるま筆】小「花意竹情」博文堂製                                                        【普通軸筆】入木「宜大宜小」大 博文堂製



だるま筆」は、穂の太さに対して持ち手部分が細くできています。そのため、多くの墨を含むことができるのが特徴です。

普通軸筆」は、穂の根元の直径(穂径)と持ち手部分がほぼ同じです。そのため、書く線の太さをそのままに感じ取ることができます。

 他にも、筆の形から、「雀頭筆」(雀の頭のような姿をした穂の筆)、「柳葉筆」(柳の葉のような姿をした穂の筆)、「面相筆」(穂先が極めて細く長い筆で、穂元を2段に仕立てているもの)などにも分類されます。

 

上から                                          【雀頭筆】「写経筆」神枝堂作                             【柳葉筆】「嵯峨野」龍枝堂曠市作                           【面相筆】「紫光」中 龍枝堂百錬作



雀頭筆」は筆の腹の部分が膨れているので、多くの墨を含むことができます。そのため、写経などの多字数を書くのに適しています。

穂先が極めて細く、細かい描写が可能な「面相筆」は、眉や鼻など顔の細部の面相書きに用いられることから、その名が付けられました。

面相筆には、軸から小軸を抜き、緒(下に出ている糸)によって穂の長さを調整できるものもあります。

紫光」中 龍枝堂百錬作



 このように、同じ小筆であっても、どのような表現を目指すかによって用いる筆が異なります。

 ◎穂の素材のかたさによる分類【柔毫筆・兼毫筆・剛毫筆】


上から                                          【柔毫筆】純羊四号「求聞」菊壽堂作                              【兼毫筆】「龍」小 龍枝堂製                                【剛毫筆】「山馬勾綫」富祥筆荘製



柔毫筆」は、ヤギなどの柔らかい毛で作られるため、白い色をしています。

剛毫筆」は、主に馬や豚、鹿の毛で作られるため、茶色っぽい色をしています。

兼毫筆」は、剛毫筆と柔毫筆の素材を混ぜて作られます。

 筆のかたさや弾力によって、可能な表現が異なります。どんな線を書きたいかによって、使い分けると良いでしょう。

 ◎穂の素材による分類【羊毛筆・鼬毛筆・鶏毛筆】


上から                                          【羊毛筆】純羊毫小「飛翔」一休園製                              【鼬毛筆】鼬毛「夕桐」一休園製                           【鶏毛筆】文林堂製



羊毛筆」はその名前から、羊の毛によって作られていると思われがちですが、実際にはヤギの毛からできています。

穂の素材による筆の種類は、他にも様々あります。山馬と呼ばれる鹿の毛を使った「山馬筆」、馬の毛を使った「馬毛筆」、兎の毛を使った「紫毫筆」など各種の獣毛名による名称のほか、竹の繊維でできた「竹筆」、木の繊維でできた「木筆」など、その素材ごとに名が付けられています。

 ここまで、筆にまつわる様々な分類を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

他にも、伝来や用途、製法上によってもさまざまな分類がなされています。それぞれに特徴がありますので、色々な筆を試してみてください。

 最後に、筆選びのポイントを紹介して締めくくりたいと思います。筆は、「」の4条件が備わっているものが良いと言われています。

【尖】穂先がとがってまとまりのあること

【斉】穂先全体がよくまとまっていること

【円】穂先がきれいな円錐形であること

【健】穂先のコシが程よく弾力があること

 筆を選ぶ際には、このポイントを意識してみてください。

 

 ・参考文献一覧
榊莫山著『文房四宝 筆の話』(角川書店、昭和56年)
広島筆産業株式会社ホームページ(https://www.artbrush-hiroshima.com/choicebrush/、令和41018日アクセス)

 

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