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日本画コース

2023年01月11日

【日本画コース】制作の豆知識-パネルのアク対策②

こんにちは。日本画コース講師の佐竹龍蔵です。

前回に引き続き、パネルのアク対策についてです。パネルのアクや、捨て貼りについては前回の記事をご覧ください。

▼『制作の豆知識-パネルのアク対策①』                                             https://www.kyoto-art.ac.jp/t-blog/?p=106680

様々なアク対策済みのパネル。それぞれどんな処理がされているかわかりますか?



塗料でのアク止め

今回紹介するアク対策はパネルを塗料でコーティングする方法です。                                   ジェッソなどのアクリル系塗料をラワンベニヤに塗って、アクが本紙に移るのを防止します。捨て貼りと比べると準備するものがシンプルで作業も簡単なので、とりあえずアク対策をしたい場合におすすめです。

・ジェッソ                                                        アクリルエマルジョン樹脂と顔料等を混ぜた下地材です。                                            油性水性問わずあらゆる絵具や画材の下地として使うのが本来の用途ですが、ラワンベニヤのアク止めとしても使用できます。

アクリル絵具を扱う画材メーカーから販売されていて、色や粒子など様々な種類がありますが、アク止めとして使用する場合は白色の微粒子タイプがおすすめです。

・あくとる                                                      マルオカ工業から販売されているアク止め専用の下地塗料です。                                              アク止め塗料としてだけでなく、ジェッソと同じようにそのまま絵具等の下地としても使えます。

左がジェッソ、右がアク止め専用の下地塗料「あくとる」。



それでは、アク止めの基本的な塗り方を紹介します。                                           ジェッソも「あくとる」も水性塗料なので水で濃度調整が可能です。一度に厚塗りせずに複数回重ね塗りするのが基本的な使い方です。

●準備するもの  

  • パネル

  • ジェッソもしくは「あくとる」

  • 刷毛もしくはローラー



今回は「あくとる」を使ってみることにしました。                            ジェッソの場合もやり方は同じです。



塗る前に適度に水を加えよく混ぜます。                                  ジェッソの場合は加えられる水の量の目安がパッケージに書かれています。                                         「あくとる」には記載がありませんが今回は刷毛に含ませた程度の水を加えました。   水を加えなくても大丈夫そうな塗り心地でした。



パネル全体に満遍なく塗っていきます。



パネル側面のアクが気になる場合は側面にも塗ります。 



1回目が完全に乾いてから2回目を塗ります。                                水張りをするのは塗料が完全に乾いてからです。



アク止めの必要がないパネル 

ラワンベニヤのアク対策として捨て貼りと塗料でのアク止め、2つの方法を紹介しましたが、アク対策にはそれなりに手間がかかります。ここから、水張りの前に自分でアク止めをする必要がないパネルを紹介します。

・マルオカ工業「HD-2」パネル                                              ラワンベニヤにペットフィルムと白原紙を貼ったパネルで、パネルからのアクの染みを防ぎ、水張りや制作時の水分がパネル側にしみ込むのも防ぎます。買ってすぐに水張りが可能なので、僕も時間がないときによく使っています。通常のパネルと比べると割高ですが、パネルの品質を考えるとそれだけの価値があります。                                                      注意点としては、HD-2の特性上パネル表面に絵具が定着しないため直接絵を描くことができないので、紙や布など別の支持体を張る必要があります。

・シナベニヤパネル                                                   シナベニヤはラワンベニヤと異なりアクがほとんど出ないという特徴があります。シナベニヤパネルであれば捨て貼りやアク止め処理をせずにそのまま水張りが可能です。()                                                                   取り扱いのある画材店が限られますが、ラワンベニヤの替わりにシナベニヤを使用したパネルを製造しているメーカーが複数あるので問い合わせてみてください。

また、パネルを自作する場合や、パネルのオーダーメイドが可能な木工所などに依頼する場合は、材料にシナベニヤを選ぶのもいいと思います。 ※アクが全く出ないというわけではありません。シナベニヤでもアク止めが必要という考察もあります。)

左がHD-2パネル、右がシナベニヤパネル。                                どちらもこのまま水張りが可能です。



絵を描くための準備が大切です

ここまで紹介してきた通り、パネルのアク対策だけでも手間がかかりますが、日本画制作の場合はここからさらに本紙を水張りしてようやく制作が始められます。

僕はアク対策に普段は捨て貼りをしているのですが、水張りを含めてパネルに2回紙を張る作業ははっきり言って面倒です。ただ、作品を長く保管するため、あるいは作品を安心して購入してもらうためには絶対必要な作業なのでできるだけ丁寧にやっています。               どんなに面倒でもきっちり準備ができた支持体に絵を描くのは気持ちがいいですし、逆に言えば、どんなにいい絵が描けても支持体に問題があれば決して満足することができません。

記事を読んでくださった皆さんも、これから作品を制作するときには描くことだけでなくパネルの準備にもひと手間かけてみてください。

記事トップの写真の答え合わせです。                        下からシナベニヤパネル、HD-2パネル、あくとるを塗ったパネル、新鳥の子紙で捨て貼りしたパネル、でした。ぜひ自分の作品に合ったアク対策を見つけてください。



 

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