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2023年09月29日
【歴史遺産コース】瓜生山キャンパスの歴史遺産 part1
みなさん、こんにちは。京都の暑さも少しずつ和らいできたところですが、夏の疲れも出るころかもしれません。ご体調にはくれぐれもお気をつけください。
さて、これからは本格的な学びの秋。京都瓜生山キャンパスに来られる機会もきっと増えるのではないでしょうか。
突然ですが、ここで問題です。京都瓜生山キャンパスで現存する最も古い校舎は次のうちどれでしょう。
① 至誠館 ②興心館 ③天心館
※答えは本文末尾にあります。
この3年ほどはコロナ禍もあって、キャンパスに通われる機会も少なく、人間館や学食のある至誠館など、限られた校舎での授業経験しかない方も多いかもしれません。
さらに瓜生山キャンパス全体となれば、なおさら行ったことのない場所ばかりという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、キャンパス内にある歴史遺産コースのおすすめの散策スポットのご紹介です。
望天館の裏手、興心館、直心館の前に、御堂があるのはご存じでしょうか。
この御堂は2014年に建ったもので、「天心」という名がつけられており、堂内には石仏が安置されています。
そしてこの石仏が特徴的で、四方に仏像を刻んだ珍しいものです。
元々この石仏は、大学から北に位置する洛北岩倉の大雲寺境内にあったもの。縁あって、本学園の創設者徳山詳直が譲り受けた、という逸話が、お堂横に建てられた掲示板に書かれています。
実はこの大雲寺、いまでこそ往時の勢いはありませんが、来年の大河ドラマの主人公紫式部とも関わりあるお寺と言われます。
大雲寺は紫式部の母方の曽祖父藤原文範が出家した娘婿のために天禄2(971)年に建てられたものといわれており、平安時代中期には天台宗寺門派の拠点として栄えました。
そして古代史研究者の角田文衞は、『源氏物語』の「若紫」巻に登場する「北山になむ、なにがし寺といふ所に、かしこき行ひ人はべる」の記述に着目し、この「なにがし寺」こそが大雲寺であると主張しました。
この「なにがし寺」については、鞍馬寺説も有力であり、依然として未確定ではありますが、興味深いところです。
さてこの石仏に話を戻すと、高さ110センチ、南北面の最大幅52センチ、東西面の最大幅35センチ。加藤詩乃先生によれば、像容の比定は摩耗も進んでいるため慎重な検討が必要ださそうですが、南面は弥勒菩薩坐像あるいは大日如来坐像、北面は十一面観音立像、西面は阿弥陀三尊像(阿弥陀如来坐像・観音菩薩立像・勢至菩薩立像)、東面は薬師如来坐像あるいは釈迦如来坐像ということのようです。諸経典によって尊像は異なりますが、いわゆる東西南北、四方の仏土に住する仏を刻んだ「四方仏」であると考えられます。
在学生の方はweb雲母の【研究室だより】「歴史遺産コース 8月号コラム」に詳細が載せられていますので、ご覧ください。
さらに、もしお時間があれば、直心館や興心館の裏手にある「山」も散策してください。ここは東山三十六峰のひとつ「茶山」になります。
標高180メートルほどの低い山ですが、ここは京都の町衆で著名な茶屋家が別荘を建てたことから、その名前があるとされます。
実は、この別荘は近代以降もある個人に引き継がれ、「茶山園」という山荘として昭和30年代まで存在していたことが、北白川小学校の生徒が地域の歴史を調べてまとめた『北白川こども風土記』(北白川小学校、1969年)に記されています。
そして山荘内には井戸や池、祠があり、石川丈山(1583~1672)が遊びに来たという逸話を古老から聞き取りしていますが、真偽は定かではありません。
いまも直心塔裏の山肌には、この『北白川こども風土記』に記されている祠跡と思われるもののほか、参道にあった灯籠、水鉢などが無造作に転がっています。
歴史を静かに伝えてきた茶山に位置する京都芸術大学瓜生山キャンパス。ぜひ一度、キャンパス中をくまなく散策されてみてはいかがでしょうか。
【クイズの答え】
答えは②興心館でした。1978年5月に建てられました。『瓜生山学園三十年史 資料編』によれば、「荒廃した世の中から、人の心を興すこと、人間の復興を願って名付けられた」そうで、短大創設時の平沢興初代学長の名前から一字をとっています。ちなみに①至誠館は2008年4月、③天心館は1983年4月の竣工です。なお京都芸術短期大学時代に建てられた望天館が1974年9月竣工で、瓜生山キャンパスでは最も古い建物でしたが、2019年7月に建て替えられています。
瓜生山学園三十年史編纂委員会『瓜生山学園三十年史 資料編』学校法人瓜生山学園、2010年
▼オンラインで参加できる11月体験入学で学科の学びを1日体験してみませんか?
『源氏物語』や王朝文化と聞いてイメージするものは何でしょうか?「十二単」「和歌」「寝殿造」… 、さまざまなキーワードが思い起こされるかと思います。
今回の体験授業では、嫌いだった?!〈 暗記の日本史〉から一歩踏み出して、王朝文化が誕生する下地となる平安貴族たちの美意識や信仰についてお話ししたいと思います。また本学が所在する京都はまさに『源氏物語』の主たる舞台となった土地。いまに伝わる『源氏物語』ゆかりのかくれた史跡もあわせてご紹介できればと思います。
歴史遺産コース|学科・コース紹介
大学パンフレット資料請求はこちらから
さて、これからは本格的な学びの秋。京都瓜生山キャンパスに来られる機会もきっと増えるのではないでしょうか。
突然ですが、ここで問題です。京都瓜生山キャンパスで現存する最も古い校舎は次のうちどれでしょう。
① 至誠館 ②興心館 ③天心館
※答えは本文末尾にあります。
この3年ほどはコロナ禍もあって、キャンパスに通われる機会も少なく、人間館や学食のある至誠館など、限られた校舎での授業経験しかない方も多いかもしれません。
さらに瓜生山キャンパス全体となれば、なおさら行ったことのない場所ばかりという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、キャンパス内にある歴史遺産コースのおすすめの散策スポットのご紹介です。
望天館の裏手、興心館、直心館の前に、御堂があるのはご存じでしょうか。
この御堂は2014年に建ったもので、「天心」という名がつけられており、堂内には石仏が安置されています。
そしてこの石仏が特徴的で、四方に仏像を刻んだ珍しいものです。
元々この石仏は、大学から北に位置する洛北岩倉の大雲寺境内にあったもの。縁あって、本学園の創設者徳山詳直が譲り受けた、という逸話が、お堂横に建てられた掲示板に書かれています。
実はこの大雲寺、いまでこそ往時の勢いはありませんが、来年の大河ドラマの主人公紫式部とも関わりあるお寺と言われます。
大雲寺は紫式部の母方の曽祖父藤原文範が出家した娘婿のために天禄2(971)年に建てられたものといわれており、平安時代中期には天台宗寺門派の拠点として栄えました。
そして古代史研究者の角田文衞は、『源氏物語』の「若紫」巻に登場する「北山になむ、なにがし寺といふ所に、かしこき行ひ人はべる」の記述に着目し、この「なにがし寺」こそが大雲寺であると主張しました。
この「なにがし寺」については、鞍馬寺説も有力であり、依然として未確定ではありますが、興味深いところです。
さてこの石仏に話を戻すと、高さ110センチ、南北面の最大幅52センチ、東西面の最大幅35センチ。加藤詩乃先生によれば、像容の比定は摩耗も進んでいるため慎重な検討が必要ださそうですが、南面は弥勒菩薩坐像あるいは大日如来坐像、北面は十一面観音立像、西面は阿弥陀三尊像(阿弥陀如来坐像・観音菩薩立像・勢至菩薩立像)、東面は薬師如来坐像あるいは釈迦如来坐像ということのようです。諸経典によって尊像は異なりますが、いわゆる東西南北、四方の仏土に住する仏を刻んだ「四方仏」であると考えられます。
在学生の方はweb雲母の【研究室だより】「歴史遺産コース 8月号コラム」に詳細が載せられていますので、ご覧ください。
さらに、もしお時間があれば、直心館や興心館の裏手にある「山」も散策してください。ここは東山三十六峰のひとつ「茶山」になります。
標高180メートルほどの低い山ですが、ここは京都の町衆で著名な茶屋家が別荘を建てたことから、その名前があるとされます。
実は、この別荘は近代以降もある個人に引き継がれ、「茶山園」という山荘として昭和30年代まで存在していたことが、北白川小学校の生徒が地域の歴史を調べてまとめた『北白川こども風土記』(北白川小学校、1969年)に記されています。
そして山荘内には井戸や池、祠があり、石川丈山(1583~1672)が遊びに来たという逸話を古老から聞き取りしていますが、真偽は定かではありません。
いまも直心塔裏の山肌には、この『北白川こども風土記』に記されている祠跡と思われるもののほか、参道にあった灯籠、水鉢などが無造作に転がっています。
歴史を静かに伝えてきた茶山に位置する京都芸術大学瓜生山キャンパス。ぜひ一度、キャンパス中をくまなく散策されてみてはいかがでしょうか。
【クイズの答え】
答えは②興心館でした。1978年5月に建てられました。『瓜生山学園三十年史 資料編』によれば、「荒廃した世の中から、人の心を興すこと、人間の復興を願って名付けられた」そうで、短大創設時の平沢興初代学長の名前から一字をとっています。ちなみに①至誠館は2008年4月、③天心館は1983年4月の竣工です。なお京都芸術短期大学時代に建てられた望天館が1974年9月竣工で、瓜生山キャンパスでは最も古い建物でしたが、2019年7月に建て替えられています。
瓜生山学園三十年史編纂委員会『瓜生山学園三十年史 資料編』学校法人瓜生山学園、2010年
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『源氏物語』や王朝文化と聞いてイメージするものは何でしょうか?「十二単」「和歌」「寝殿造」… 、さまざまなキーワードが思い起こされるかと思います。
今回の体験授業では、嫌いだった?!〈 暗記の日本史〉から一歩踏み出して、王朝文化が誕生する下地となる平安貴族たちの美意識や信仰についてお話ししたいと思います。また本学が所在する京都はまさに『源氏物語』の主たる舞台となった土地。いまに伝わる『源氏物語』ゆかりのかくれた史跡もあわせてご紹介できればと思います。
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