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染織コース

2023年11月20日

【染織コース】長さの単位は面白い ー正倉院展・卒業制作よりー

こんにちは、染織コースの繁田真樹子です。
2023 年 10 月 28 日(土)~ 11 月 13 日(月)奈良国立博物館で「第 75 回 正倉院展」が開催され行ってまいりました。

秋の奈良公園



公園内の紅葉したナンキンハゼ:種子から蠟が取れる



今年も染織の宝物より色々出陳されておりまして、天平の三纈のひとつ、夾纈(きょうけち)と呼ばれる染色技法で、「鳥草夾纈屏風」(とりくさきょうけちのびょうぶ)の2扇が出陳されておりました。

①夾纈(きょうけち:現在で言うならば板締め染)

②纐纈(こうけち:現在で言うならば絞り染)

③﨟纈(ろうけち:現在で言うならば蠟染)

の3つの技法を合わせて「天平の三纈」と言います。正倉院に収蔵されており奈良時代からこの3つの染色技法がすでに中国から伝わっていたことがうかがえます。

染織Ⅰ-2 藍色絞りの浴衣をデザインするの事前課題



①板締め染め ②絞り染めは 染織演習Ⅰ-2 第2 課題や 染織Ⅰ-2 藍色絞りの浴衣をデザインする、 染織Ⅰ-3藍色絞りの浴衣を染める で学べます(写真は染織Ⅰ-3 )



熱して溶けた蠟を木材等に付けて布に押します



③蠟染は染織Ⅴ-1 で学べます(画像は型蠟技法)



少し前ですが染織コースのホームカミングデー(卒業生が同窓生、先生方と交流するイベント)で石塚宏先生、木内小織をお招きして石塚先生には現在ご研究されていらっしゃることを発表していただき、木内先生にはアトリエのご紹介と地域の習わしのことを見せていただきました。

石塚先生がご研究されていたのは夾纈についてで、とても興味深いものでした。夾纈のことや石塚先生のご研究についてはまた取材してご報告いたします。

 



https://www.uridou.jp/hcd/2023/

さて、正倉院のお話に戻りまして、今回私が注目したのは物差しでした。百牙尺(びゃくげのしゃく)という象牙でできた物差しです。奈良時代の長さの基準で唐大尺(からだいしゃく)で丁度1尺に相当する長さの物差しです。

染織コースでは卒業制作に着物や帯を染めたい、織りたいというご希望をされます。もちろんお教えいたしますが、私が着物を学生時代教わった時、センチではなく尺や寸で教わりました。そしてそのままで覚えましたのでセンチになるとサイズ感をつかみにくいです。

教えるときは尺や寸で数字を教え、学生の方でそのまま尺差しを購入してもらい印をする、または尺や寸を自らセンチに直して印をいたします。もちろん計って印をつけたものをチェックはします。すると、どうも感覚的にですが思っているよりも短く小さいのです。どうやら鯨尺(着物など和装に用いる布類を測る際に用いられる単位)ではなく曲尺(土木建築に用いられる単位)に換算されたようでした。

尺差し(上がセンチで下が尺寸)



そうです。鯨尺と曲尺、この2つは同じように尺や寸と言いながら全くサイズが違うのです。鯨尺で1尺は37.8 センチ、曲尺で1尺は30.3 センチと約7センチも差があります。

鯨尺は竹でできており、曲尺は直角になっており金属製で見た目が違います。これから着物や帯を染めたり織ったりする場合、お伝えするときは「鯨尺で」と言わなければと思いました。

そういったことがあっての正倉院展、出陳されておりました百牙尺(唐大尺)これは1尺が24.5 センチと短いです。同じ時代の唐尺(とうじゃく)は1尺は29.7 センチとサイズは時代によってそして同じ時代でも微妙に違うものなんだと感じました。

数字や単位のお話はとても面白いですね。2023 年もわずかになりました。本当に1年が早いですね。卒業制作もいよいよ大詰めです。皆様頑張ってくださいね。

卒業制作計画書発表



染織コース | 学科・コース紹介



京都芸術大学 通信教育部 染織研究室ブログ
研究室が在学生・卒業生向けに情報発信しているブログです。こちらでも授業の様子や展覧会の情報などが豊富です。
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