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洋画コース

2019年01月29日

【洋画コース】卒業生紹介 なんでもない画

通信教育部のパンフレットでは毎年卒業生の方に直接お会いして在学時のお話をお伺いしていますが、その内容をこちらのブログでも紹介いたします。

本日は洋画コース。ふるさとで描き続ける絵について。



小さな川、小さな橋。なんの変哲もない路地裏の光景。このなんでもない風景を描くために、宇佐美さんは本学へとやってきた。「ずっと地元で生きてきたので、京都への進学は、人生最大の冒険でした」と笑う。絵を描くのは幼い頃から大好きで、芸大に憧れたこともある。しかし仕事や家事に忙殺され、気づけば30年近く絵筆を握っていなかった。「ようやく自分の時間が持てたのに、一体何をどう描けば…」と困惑。一方で、描けなかった年月に人間として経験を積み、若い頃とは違う絵が描けるのでは、という想いもあった。

「とにかく踏み出そうと入学。全国から集う学友に刺激され、スクーリングを受けるごとに、絵を描く楽しさを思い出していきました」。なかでも衝撃的だったのが「自分の記憶から絵を描く」デッサンの授業。「描いてみてビックリしました。子ども時代の何気ない光景が、あまりにも鮮やかによみがえってきたから」。川面に揺れる七夕の短冊。小窓から覗く人々の営み。朝に夕に通った近所の道。「どれほど深く染みつき、いまの自分のもとになっているか、あらためて思い知りました」。さらに合評で一人ひとりに異なる学友の記憶に触れ、「これこそが自分にしかないものだ」と確信。卒業制作として地元のありふれた風景を選ぶことに、もはや何の迷いもなかった。

「なんでもないようですが、私にとっては、ここにしかない風景なんです」。ときに厳しく批判された先生方からも、思いがけない賞賛や激励を受けた卒業制作。地元のギャラリーで個展を開いたところ、多くの人に「懐かしい」「癒やされた」と喜ばれた。「うれしかったですね。先生にも、その道は間違ってない、と言ってもらえたようで。大学へ行って良かった」。ふるさとはだれの心にもあり、その人生を励ましつづける。同じ場所を描きながら、若い頃よりもずっと明るくなっていた宇佐美さんの画。その風景は、これからも、心の光となっていく。



宇佐美 寿子さん
洋画コース(3年次編入学)’17年度卒業 愛媛県在住 52 歳

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