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染織コース

2020年09月08日

【染織コース】天然染料は二番煎じも美しい –遠隔授業の課題試作を通して–

皆さんこんにちは。通信染織コースの久田多恵です。
引き続き行なっている遠隔授業で、織物制作は腰機(こしばた)を利用します。腰機は後帯機(こうたいばた)とも呼ばれるように、腰の後側に帯状の部品を付け、自分の腰でたて糸を張り、布を織る織機です。
課題の試作を通して天然染料の色や性質、腰機の特徴をご紹介します。

腰機で帯を織る授業



上の画像は以前行なっていたスクーリング科目の「腰機で帯を織る」です。長机にたて糸を取り付け、腰に回したロープで張っぱっています。机に足をかけているのは行儀がわるいのではありません。引っ張ると机が動いてしまうので押さえているのです。
今はこの授業はなく、藝術学舎で東京、京都、それぞれ違った内容で腰機を使った織物の講座を行なっています。

玉ねぎと紅茶で染色



さて二番煎じとは一度煎じたものを再び煎じること。また煎じたもの。そこから転じて以前にあったものの模倣や繰り返しで新味のないもの、といった意味です。あまりいい意味では使われませんね。
しかし天然染料では二番煎じも美しいのです。上の画像は絹糸を玉ねぎの薄皮と紅茶で染めたもので、3年次のスクーリング科目を遠隔化するための試作です。一番左は玉ねぎの薄皮の一番煎じをアルミ媒染したものです。左から二番目は紅茶の一番煎じを鉄媒染したもの。三番目は紅茶の二番煎じをアルミ媒染したもの。四番目は玉ねぎの二番煎じ、鉄媒染です。

串刺しにして整経



課題ではこの4色をたて縞にします。
糸を巻いている枠を串刺しのようにしているのは、糸がすべりやすくて枠からぱらぱらと落ちてしまうので、横向きにしてくるくると回るようにしました。4色の縞として・鮮やかな色 ・暗い色 ・明るい色 ・中間色を作ることにしました。
鮮やかな色と暗い色は一番煎じから、明るい色と中間色は二番煎じから取りました。またアルミ媒染は鮮やかな色、鉄媒染は暗い色が染まりやすいという性質も利用しています。二番煎じの紅茶をアルミ媒染で、4色の中で一番明るい色とすること、玉ねぎの二番煎じを鉄媒染することで中間の暗さとすることを企みました。
こちらの糸は授業で見本として使うために整経(たて糸の準備)のところで中断しています。
狙い通りの縞になるでしょうか。とても楽しみです。

一度使ったコチニール



授業で使う見本は一旦終了。
しかし先の作業もやっておかないと授業中の説明ができません。これは別の色で染めることにしました。
以前から機会があったら使おうと保管しておいたコチニールの出がらしを使うことにしました。
上の画像は一度使った後、乾燥させておいたものです。コチニールは天然染料の中では色味や鮮やかさ、堅牢度の点で貴重なものです。
興味を持たれた方はぜひ調べてみてください。
最初に使ったのはもう20年近く前、着物を織りました。

以前織った着物



20年近く保管しておいたコチニール、それも一度煎じたものからどんな色が出るでしょうか。
だいたいの天然染料は二番煎じ以降、薄くはなりますが色が出ます。二番目以降に出る色もあります。
一番煎じを薄めたものと同じではありません。

美しい色



水に入れて火にかけるとさっそく美しい色が出てきました。
前回のブログ(6月11日)で取り上げた酸性染料のレッドに近いピンク色です。

どんどん濃くなる



時間の経過とともに濃くなってきました。
課題では4カセの糸を染めることになっているので、コチニールでは1カセを鉄媒染、残りの3カセをアルミ媒染にすることにしました。
最初に出る濃い目の染液で染めたものを鉄、その次の染液でアルミ、こちらも濃い色と淡い色の組み合わせにしてメリハリのある縞を狙いました。

アルミ媒染と鉄媒染



アルミ媒染は淡いピンクに、鉄媒染は濃い青紫になりました。コチニールは3回目の煮出しを終え、どうしたかというと…また乾燥させました。

コチニール乾燥中



またいつか染める機会が来ると思います。すりつぶして使う方法もあるのでまだまだ色が出そうです。

腰機で織ります



糸は整経して腰機にセットし、少し織ってみました。
最初の半分はピンク色をよこ糸に、途中から青紫色をよこ糸にしています。どちらで織るか試しているところです。
あまり違いがないのはたて糸が密集している織り方だからです。
たて混みといいますが、よこ糸が少ししか見えないのです。でも微妙に織り上がる色に影響します。耳(端)のところではかなりよこ糸が目立ちます。耳の見え方で選ぶと青紫色、ピンク色を強調するならピンク色のよこ糸がいいですね。どちらかに決めて織り進めたいところですが 短い夏休みが終わり、遠隔授業の準備と実施が始まったので、授業までこのままかもしれません。
二番煎じの色や腰機に興味を持っていただけたでしょうか。授業では学生の皆さんがどんな色でどんな縞を考えられたのか聞くのが楽しみです。

「美に対する企み」という言葉を以前聞いたことがあります。
誰の言葉だったかは思い出せません。色々と企み、どんどん実行しましょう。

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