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和の伝統文化コース

2021年02月02日

【和の伝統文化コース】春節によせて、紬地人形手金襴と「九羊啓泰」のはなし

『古今名物類聚』の「紬地人形手金襴」



立春を過ぎたとはいえ一段と寒い日々ですが、それゆえ「下萌」の季語がキュンとくる時期ですね。和の伝統文化コースの中村幸です。

さて、現代は1月や4月を一年の始まりとするため、この時期、学生の皆さんには、どこか年度のはざまのような気分かもしれません。しかし伝統文化的にみてみると、ながらく2月は旧暦新年の始まりでした。そこで今回は、春節(今年は21117日)に因んだお話を。

日本では古くから唐物が貴ばれ、中でも染織品は重要な交易品でした。そして茶の湯では、舶載された裂(きれ)を選定して、表具や仕覆といった茶道具に仕立てていきました。そうしたなかで、名前が付けられた人気の一群の裂を「名物裂」と称して珍玩されてきました。

そんな名物裂を松平不昧らが集成した、『古今名物類聚』にも収載される「紬地人形手金襴」は、鶯の鳥籠を吊るした梅枝を担ぐ胡童が、羊に乗って遊牧する印象的な金襴です。

 

前田家伝来の「紬地人形手金襴」復元品



 

また染織品名を「騎羊人物椿梅折枝文様金襴」というように、蘇芳地に二種類の人物文が、まるで左右に行きかうように配置され、その間に椿や梅枝、宝文を配する構成は、待つ春の訪れを連想させます。

右向きと左向きの騎羊人物が段違いに繰り返されて織出されている



というのも、この騎羊人物椿梅折枝文は、中国古事を意匠化したものと考えられるのです。

では、その古事と画題の全貌を「刺繍九羊啓泰図軸」(台北國立故宮博物院蔵)から見てみましょう。「九羊啓泰図」とは、宋・元代によく描かれた画題で、「九陽消寒 春回啓泰」という吉祥を表す古事の絵画表現です。その絵は、中国の正月である「春節」に飾られるものでした。ここには、三太子(三泰)、九羊(九陽)、松竹梅(三友)が描かれており、九つの太陽が照らし、陰から陽へと幸運の兆を象徴しているといいます。

また、牧童の赤い上着には、胸に龍文が施されているので、これはなんと君子だったのです。清宮廷では、この巨大なタペストリーを毎年正月に掛けました。

 

「刺繍九羊啓泰図軸」部分 台北國立故宮博物院ポストカード



数年前、私は台北國立故宮博物院で、この展示に出会った瞬間、その鮮やかさと大きさに圧倒されると同時に、「えっ!もしや…⁉」と、これまで何も知られていなかった名物裂「紬地人形手金襴」の意匠のルーツに気づいた衝撃で、かの有名な「翠玉白菜」の記憶も吹き飛んでしまったのでした。

今回、ちょうど季節の話題として、初公表させていただきました。

 

それにしても「紬地」の素朴なひびきからは思いもしなかった、壮大で晴れやかなドラマを秘めていた金襴は、新春の席や、お祝いの気持ちを表すにもぴったりの裂と言えそうです。

寒さの厳しい時期ですが、春の訪れに好奇心に満ちた学生生活をお過ごしいただきたいと、皆さんのご健勝をお祈り申し上げます。

立春大吉!

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