60歳で小学校教員を定年退職し、本コースへ。生まれて初めてふれる岩絵具や膠に苦労しながらも、その重なる色の美しさに感動。「偶然ではなく自在につくりだせたら」と、やりがいを感じた長田さん。いろいろな先生による指導の違いも、「さまざまなプロの画風にふれられる、大学ならではの貴重な機会」と前向きに吸収することに。「私たちが若い頃に教わりたかったことなど、事前に話し合って教材や指導法を考えている」と先生の裏話を聞き、その学びを受ける贅沢さに、あらためて感じ入ったという。
いろいろなお国言葉のクラスメイトと語らい、通学ついでに京都をめぐり、久しぶりの学生生活を満喫した長田さん。卒業制作では、自分の代わりに家族の息災を祈りつづけた母への感謝を込め、難を転じるナンテンの木を描いた。「切ないほどの美しさは、カタチあるものとは限らない」。日本画を描くようになって、あらためて身にしみたことである。
コースの先生方がよく口にしていたのは、「失敗は、ないんですよ」という言葉。彼らのように、失敗が財産となる経験を重ねていけたら。失敗を恐れて他に救いを求める前に、まずは自分からぶつかっていけたら。なにごとも「学び」に変えれば、失敗はない、そう信じて。長田さんのひたむきな筆づかいが、どこか、祈りのように感じられた。