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芸術学コース

2022年04月26日

【芸術学コース】お釈迦さまの四大聖地③サールナート

 みなさん、こんにちは。芸術学コースの金子典正です。菜の花が咲く季節となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。新年度を迎え、今年も多くの方が芸術学コースにご入学され、大学ならではの体系的な学びを始めています。

 さて、前回の私の記事からずいぶん時間が経ってしまいましたが、今回は、お釈迦さまがはじめて説法をされた初転法輪の地として知られるサールナートについてお話しします。



サールナートは、ガンジス川の沐浴で有名なヒンドゥー教の聖地ヴァーラーナシー(ベナレス)の北方約10kmにあり、高さ約40mのダメークストゥーパ(写真中央)や数多くの僧院跡が残っており、現在は遺跡公園として整備されています。

 前回ご紹介したブッダガヤで悟りを開かれたお釈迦さまは、悟った内容があまりにも難しいため、実ははじめ人々に話すことをためらいますが、やがて梵天に勧められて説法することを決意します。そして、その相手としてかつて苦行林で修行をともにした五人のバラモン僧を選び、彼らが修行を続けていたこのサールナートにやってきて、はじめて説法をしました。鹿が多く住んでいたことから、仏教経典では鹿野苑(ろくやおん)と表記されます。なお、美味しい焼肉屋さんは叙々苑(じょじょえん)ですが、仏教では「苑」は「えん」ではなく呉音の「おん」と読みます。仏教用語の漢字の読み方は、学問上でもとても大切なことですので、ぜひ覚えておいてくださいね。

 さて、お釈迦さまの誕生の地ルンビニーについてお話しした時、アショーカ王柱をご紹介しましたが、実はこのサールナートにもあるんです!なので、初転法輪の場所は確実にここだと言えます。アショーカ王は日本では知名度はあまり高くなく、インドの王様といえば最近ではやはりバーフバリだと思いますが、仏教史やアジア美術ではとっても有名で重要な王様です。この柱には詔勅もしっかり刻まれていますので、気になる方は調べてみてください。古い本ですが、塚本啓祥先生の『アショーカ王碑文』(第三文明社、1995年)がおすすめです。

 さらに、このアショーカ王柱のてっぺんを飾っていた柱頭装飾である四頭立ての獅子の彫刻が発掘されており、それは公園に隣接するサールナート考古博物館でみることができます。この博物館、以前は写真撮影禁止だったのですが、2度目に訪れた2021年には撮影がOKとなっており、興奮しながらカメラのシャッターボタンをバシバシ押した一枚がこれです。この四頭の獅子柱頭はインドの紙幣のデザインにも採用されるほど有名で、もちろんインド美術史でもアショーカ王のマウリヤ朝の彫刻技術の高さを物語る作例として、通信教育部のWS科目「芸術史講義(アジア)2」でも詳しく解説しています。もう、ピッカピカ!本当にピッカピカ。マウリヤン・ポリッシュとよばれる丹念な研磨が施されています。

 そして最後に、サールナート考古博物館を代表する仏像といえば、やはりこの初転法輪仏陀坐像です。サールナートの根本香積堂から出土したもので、グプタ朝の5世紀に制作されたインド仏教彫刻の傑作です。胸元で結ぶ手の印相は説法印であり、台座正面中央には法輪、その両側に法輪に向かう鹿、さらに向かって右側に3人の僧形、向かって左側に2人の僧形と2人の俗人形があらわされています。僧形は左右あわせて5人、鹿がいて、法輪があらわされ、説法印を結び、そしてサールナートで出土したとなれば、文句なしにこの仏像は初転法輪のお釈迦さまの姿であるということができます。コロナ禍が終わって、インドを旅する機会がありましたら、サールナートはベナレスの近くということもあって、アクセスが非常に便利なところですので、ぜひ一度ご覧になっていただきたいと思います。ため息がでるほど美しい仏像です。それではまた!

▼過去記事「お釈迦さまの四大聖地」①②はこちらでお読みいただけます

【芸術学コース】お釈迦さまの四大聖地①ルンビニー


【芸術学コース】お釈迦さまの四大聖地②ブッダガヤ


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