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芸術学コース

2022年09月09日

【芸術学コース】お釈迦さまの四大聖地④クシナガラ

 四大聖地の最後となるクシナガラは、インドのウッタル・プラデーシュ州の東端に位置しています。ここで、お釈迦さまは80歳の生涯に幕を閉じます。その様子は、最後の旅について書かれた経典『マハーパリニッバーナ・スッタンタ』『大般涅槃業』『遊行経』(『長阿含経』第二経)『仏般泥洹経』等によってかなり詳しく知ることができます。現代語訳では中村元訳『ブッダ最後の旅:大パリニッバーナ経』(岩波書店、1980年)の文庫本が定番ですね。

 前々回のブッダガヤで35歳の時に悟りを開き、そして前回の初転法輪の地であるサールナートではじめて説法をして以来、お釈迦さまは45年間にわたって弟子達とともに十六王国時代と呼ばれる当時の各国をめぐる布教の旅に出ます。東の大国であるマガダ国の王舎城では竹林精舎に滞在し、郊外の霊鷲山で『法華経』や『観無量寿経』等を説いたと伝えられ、また、西の大国であるコーサラ国には有名な祇園精舎が建てられました。たくさんの人々を救う旅を続け、すでに80歳に達していたお釈迦さまは、マガダ国の西に隣接するヴァッジ国の商業都市ヴァイシャーリー(お釈迦さまが大好きだった街)を訪れた後、生まれ故郷のカピラ国に戻ろうとします。

自らの最期が近いことを知っていたお釈迦さまは、途中で再び訪れることがない街を「象が眺めるように」全身でふりかって眺めたと経典に記されています。よほど名残り惜しかったのでしょう。その時、ヴァイシャーリーのリッチャビ族の多くの人々が見送りにきていましたが、最後に別れた場所に建つストゥーパが、現在のケッサリアの大ストゥーパだと考えられています。

直径約120メートル、高さ約33メートルというインド最大級のストゥーパです。2000年頃から本格的な発掘が開始されました。ここは後に玄奘三蔵も訪れて『大唐西域記』に当時の様子を記しています。

 その後、お釈迦さまと弟子たちはマッラ国のパァーヴァーの町に到着し、マンゴー林に滞在します。そしてその所有者であった鍛冶工のチュンダから食事の供養を受けた後、激しい下痢になってしまいます。恐らく赤痢にかかってしまったと考えられています。しかし、その後も苦痛をこらえながら旅を続け、やがてクシナガラに到着した後、沙羅双樹のもとで枕を北にして、最期を迎えることとなります。その場所と伝えられるのがクシナガラの大涅槃寺です。

写真の中央にみえるクリーム色の建物が涅槃堂です。このお堂のなかに全長6.1メートルの巨大な涅槃像が祀られています。シルクロードの研究で有名な長澤和俊先生が著した『法顕伝』(雄山閣、1996年)によると、お堂は1927年にビルマ僧によって創建されたものですが、巨大な涅槃像は台座に刻まれた銘文からグプタ朝の5世紀の作例と考えられており、1876年にアレキサンダー・カニンガムが近くのヒランニャヴァティー川の河床から発掘したものとされています。

とにかく大きい。その一言に尽きます。お堂のなかはとても静かで、涅槃像の周りには観光の方のみならず僧侶の方も見受けられ、静かに瞑想されていたのがとても印象的でした。ただ実は、この付近からはこれまでの聖跡にみられたアショーカ王柱が発掘されておらず、そもそもここを涅槃の地としてよいのかという議論がかつてありました。しかし、出土資料や周辺の寺院址の存在、また付近の荼毘塚のストゥーパの存在も含めて、現在ではここを涅槃の地とすることが広く認められています。

 最後に、長々とお釈迦さまの四大聖跡についてお話ししてきましたが、これ以外にもお釈迦さまゆかりの聖地はたくさんあります。以前のように気軽に海外旅行に行ける状況ではなくなってしまいましたが、一方、勉強はいつでもどこでもできます。仏教美術にかぎらず、何でも構いませんので、好きな美術作品や自分が気になったことを徹底的に調べてみてはいかがでしょうか。すると、今まで知らなかった世界があなたの目の前にどんどんひろがっていきます。それこそが学問の面白さであり、学ぶことの大きな魅力です。

学問によって得られた豊富な知識とともに、いつか日本を飛び出してください。単なる観光旅行ではない、素晴らしい旅があなたを待っているでしょう。そのためにも、みなさん、しっかり勉強しましょう。芸術について学ぶことは、とても愉しいことなのです。

それでは、また次回!

▼金子典正教員による「お釈迦様の四大聖地シリーズ」①~③

【芸術学コース】お釈迦さまの四大聖地①ルンビニー


【芸術学コース】お釈迦さまの四大聖地②ブッダガヤ


【芸術学コース】お釈迦さまの四大聖地③サールナート


 




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