1998年、日本で初めて通信による芸術教育をスタートし、17000名以上の学生がいる「日本でもっとも大きな私立通信制大学」へ。
その歩みを支えつづける先生方と、佐藤新学長より、芸術を志すみなさんへのメッセージをお届けします。(2025年4月実施)
だれでも、いつでも、どこにいても、芸大生 — 通信で芸術を学ぶということ
大人、だからこそ芸大です。
上村 「なぜ、大人になってから、わざわざ大学へ?」。本課程について、そのような疑問を持たれる方も少なくないでしょう。けれど私たちとしては、むしろ「大人になったからこそ、大学で学ぶ楽しみがある」とお答えしたいです。
上田 社会のさまざまな物事にふれて、これをもっと知りたい、勉強したい、と心の底から思うようになる……それってじつは、卒業してからのことが多いですよね。
藤田 私が担当する学生さんには、「ずっと芸大で学んでみたいと思っていたけれど、当時は親に認めてもらえず、定年後にようやく夢をかなえられた」という方もたくさんいらっしゃいます。だからこうして、何歳からでもチャレンジできる環境が整っているのは、本当に良いことだと感じています。
佐藤 たとえばデッサンひとつにしても、本気で取り組めば、単なる手技の練習をこえて、「いままで見えていなかったものが見える」こともありますよね。何でもわかっていると思い込んでいる大人こそ、あらためていろんなことに気づき、成長できる。それが芸術という学びの魅力かもしれませんね。
この芸大で、得られること。
上田 いま世の中ではリカレント教育、いわゆる「学び直し」が注目されていますが、うちの場合は「学び重ね」という方がしっくりきます。これまで各々が社会人として培ってきたキャリアや技に、芸術をかけ合わせることで、思いがけない化学変化が生まれる。これは、教える側の私たちにとっても大きな楽しみです。
藤田 実際に、上田先生が担当された学生さんにもおられますよね。幼稚園の先生だった方が、課題で考えたアートスクールの企画を実現して、大人気の教室になったとか。全国各地に学生がいる大学なので、卒業後はそれぞれの地元で学びを活かし、イベントや活動をはじめたというお話をたくさん耳にしています。
上村 学術系のコースだと、もともと地域のために働いていた方が芸術を学びにこられるケースもありますよ。「デザイン思考を身につけたい」といった理由で。そうした方々は仕事柄、真面目なタイプの方が多いものですから、この課程でまるで違う思考や立場の人々とつながりあえることが、とても刺激になっているようです。
佐藤 日常的な仕事や生活のつながりって、どうしても決まりきったものになりがちですものね。ここに来れば、いろんな地域、職業、世代の方とともに学ぶことで、まったく思いもよらない発想や価値観にふれられる。そのことが、良い意味でいままでの自分を壊し、無意識に蓋をしてしまっていた、新たな可能性をひらくことにもつながるのではないでしょうか。
上田 そうですね。社会人はもちろん高校生も、この課程で新たな道をひらくことができます。地方にいる人も、そうでない人も、自分らしい学びのスタイルとして、通信の大学を選ぶ時代が来ているので。そうした若い方々にとっても、ここで得た経験や人脈、コミュニケーションが将来の財産となるでしょう。
通信と芸術、じつは好相性。
佐藤 しかも一般的な芸大なら、受験のためのデッサンといった基礎の準備がいりますよね。だけどここは、まったくのゼロから未知の分野に飛び込める。それこそ18歳から90代の方まで。しかも、いったん入ってしまえば、まわりの刺激を受けながら、どんどん成長していける。そんなところが素晴らしいなと。
上村 まったくです。ただ、ゼロからスタートする方をはじめ、経験者でも気になるのが、「通信でどこまで芸術を学べるのか」「自分につづけられるのか」という点でしょうね。その不安をしっかりと受けとめるのが、開設時からこだわってつくりこみ、いまも更新しつづけている独自の教材やカリキュラム、そして添削です。
上田 自宅学習は通信の要ですから。みなさんが忙しい生活や仕事の合間に、コツコツとつくりあげた作品やレポート。そんな情熱のかたまりを添削するのは、大変なプレッシャーです。けれど、その熱意に全力で向き合うことが、本課程のゆずれない部分であり、多くの学生さんに支持してもらえる理由のひとつだと感じています。
佐藤 デザインというものには明らかな目的があるので、「その目的のためなら、こうしてみては」とか「こういう方法もありますよ」といったアドバイスもできるでしょう。けれどアートの場合、自由だからこそいい気もしますし。どう添削して、どのような可能性を引き出すべきか、先生方も悩まれることがあるのでは?
藤田 そのとおりです。学生さんが多様なだけに、「これは何だ?」という自分の概念を超えるものがいっぱい出てくるので。もちろん大学としての評価基準に添って点数をつけてはいるものの、作品に込められた魂やパワーをちゃんと受けとめられているか、秘められた可能性を見過ごしてはいないか、自身の感覚が試されている気持ちになります。
上田 開設当初は「通信で芸術教育なんて無理だろう」という声もあったようです。しかし、芸術を学ぶために必要なのは、なによりも自分自身と向き合う時間です。自主学習を軸とした通信のスタイルこそが、むしろ芸術の学びにはふさわしい。いまも増えつづけている学生のみなさんが、そのことを証明してくれていると感じます。
みなさんと私たちの、向かう先。
佐藤 オンラインというコミュニケーションの革新が、このような学びを可能にしたんでしょうね。同じように音楽の世界でも、これまでにない場所や手法から、傑出した作品やクリエイターがあらわれている。じつは私、学生時代にミュージシャンを志した時期がありまして。2026年度に新設される音楽コース、とても楽しみにしているんです。
上田 そうですか! ぜひ学長にも入学していただけたら……通信制芸術大学ならではの新しい音楽カリキュラムを準備して、お待ちしておりますので。この音楽コースを含め、2024年度に開設された映像コースや食文化デザインコースも、美術館の中におさまるだけではない、新たな芸術分野を探求するチャレンジのひとつだと考えています。
佐藤 なるほど。芸術にしても、デザインにしても、確かに奥は深いけれど、入り口はどんなに大きくてもいいですよね。「デザインって、よくわからないから苦手」という方に、「あなたの髪型も、選んでいる服も、デザインと関わりのない生活なんて何ひとつない」とわかってもらいたい。この課程に来ることで、そうした日常生活のなかにある、身近なアートやデザインの楽しみに気づかれる方も多いのでは?
藤田 はい、絵を描くことだって、日常的な楽しみのひとつですから。難しく考える方もおられますが、それぞれに向き合っている目的が違うだけ。本来はペンひとつで、幼い子どもにもだれにもできる、創作の第一歩です。技量ばかりにこだわらなくても、「ものの見方が変わった」とか「ちょっと考えが深まった」とか、得られるよろこびはたくさんあると思います。
上田 ものづくりにおいて、上手い下手というのは本当に後からの話ですよね。たとえ上手くなくても、丁寧に丁寧に突き詰めていけば、作品に力が宿り、メッセージが伝わってくる。味があるとか、愛を感じるって、そういうものだと。手書きが苦手でも、パソコンが苦手でも、それは単なる道具ですから、おいおい慣れていけばいい。自分にあったものを手にすれば、いつでも学びはスタートできます。
上村 直接なにかをつくる学びではありませんが、そういったものづくりへの熱量は、学術分野にも通じる気がします。きっかけは「美術館」や「テレビ番組」だとしても、さらに一歩すすんだ知的な興味を満たそうとすれば、「観てるだけ」じゃすまない試行錯誤や根気強さが求められます。けれど、それを乗り越えれば、知るほど面白い、面白いから知りたくなる、無限の世界が待っていますから。
上田 見つめる時間が重要なのかもしれませんね。対象についても、自身の内面についても。そこから生まれてくる作品や研究はもちろん、向き合っている時間のなかにも、得られるものがきっとあるはずです。
佐藤 みなさんとお話しするうち、これまで以上に、たくさんの可能性が詰まった課程なのだと実感しました。多彩なコース、柔軟なカリキュラムが整い、地域や年齢のみならず、海を飛びこえて学びにくる方も増えるでしょう。質を高めつつ多言語化などにも対応し、「いつでも、だれでも、どこでも」、そして「いつまでも」学べる総合芸術大学として、みなさんと前に進んでいけることを願っています。