染織コース
子育て中。人生の転機を経験しながら染織を学ぶ
「あまり深く考えずに決めちゃって。でも、考え込んでいたら何もできないままだったかも」。本学に入学してから、転職、結婚、そして出産と、人生の転機をつづけざまに経験した髙橋さん。ちょうど着付け教室の受講が終わったところで、その代わりに、と軽い気持ちで飛び込んだという。「染織コースで、つくる側から着物に関わりたくて」。芸大に憧れたこともあったが、進路としては選べず、気づけば不向きな営業職に悩む日々。「入学して、もっとプライベートを大切にしたいという気持ちが強くなり、自分に合った事務職に転職したんです」。
時間にも気持ちにもゆとりが生まれ、「これで学びに集中できる」と思った矢先、こんどは結婚、妊娠で生活が激変。出産から半年で仕事に復帰したこともあり、「学びまではムリかも」と思いかけたとき、先生とZoomで面談する機会が。「家が手狭でテキスト課題を制作”できない“と相談したのに、”できるできる、やってみよう!“と即答されて」。その勢いに押され、言われるままリビングに板を敷き、おそるおそる布を染めてみたら、「あ、本当にできるもんだ、と」。「遠隔授業で、画面ごしにみんなと自宅制作したことも、支えになりました」。
こうして”家を作業場にする“用意は整ったものの、髙橋さんの場合、そこは育児の主戦場。作りかけた作品を蹴散らされ、締め切り前にぐずられ、「何をやってるんだろう」とため息をつく一方、新たな命に教えられたことも。「おくるみから子ども服へ。成長していく娘を見て、”ひとは布と生きる“という先生の言葉を実感しました」。卒業制作は、そんな娘との思い出を絵柄に染めたワンピース。「ミシンもほぼ初心者でしたが、大学ですっかり、悩む前にやってみるクセがつきました」とほほえむ髙橋さん。布とともに大きくなる娘とのくらしを彩りながら、自身もまた、新しい色へと変化していく。
卒業生インタビュー
髙橋 実幸
染織コース 21年度卒業
東京都在住 35歳
- 卒業制作
- 夜のしゃぼん玉・最高の一日になりそうだね