芸術学科

文芸

CREATIVE WRITING

「読むこと」と「書くこと」で、豊饒な文芸の世界を体験。

文芸の広く豊かな世界を深く知るために、さまざまな表現世界を深く読み、理解し、楽しみ、
自らの言葉で表現することに挑戦。人生を豊かにする「伝える力」を身につけます。

コースの特長

01 幅広い授業内容。

エッセイ、小説、批評、古典、トラヴェル・ライティングなど……。ジャンルや時代・国を問わず、さまざまなタイプの文芸に接しながら学ぶことで、自らの表現スタイルを見つけることができます。

02 多彩な講師陣が指導。

小説家、研究者、ジャーナリスト、編集者など、指導にあたるのは、現役の書き手やスペシャリストたち。プロならではの鋭い指摘や深い洞察力で、ひとりひとりの学びを支えます。

〈過年度例〉

  • 近藤 雄生氏(ノンフィクションライター)
  • 山口 由美氏(トラヴェルライター)
  • 池田 雄一氏(文芸評論家)

03 初心者でも網羅的に学べる。

  1. 多彩な文芸の世界に接する科目。
  2. 文芸について語ることを学ぶ科目。
  3. 文章表現力を養い自ら文芸作品を創る科目。初心者でも基礎から創作まで、網羅的に幅広く学べるカリキュラムを用意しています。

※卒業制作は、創作・研究論文のどちらでも可能。

Webだけのスクーリングで卒業可

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学習内容や学習の進め方、入学に関する疑問を解決!

学びのステップ

STEP1

文芸の世界を楽しみながら
表現に対する興味の幅を広げる。
まずはさまざまなジャンルの文芸作品を読み、並行して、文章を書くことの基本を学びます。さらに一歩進んで、作品はどのように作られているのか、書かれているのかを探求します。文芸の秘密を解き明かすわけです。その学習をもとに、自分で作品を書いてみることにもチャレンジします。

【文芸特講1】

「文章表現の構造と技法」
文章とは何か。表現とは何か。その構造を基礎から学び、実際に表現をするために必要な技法について考察します。文章を書いたことがない方でも、動画教材を視聴しながら、ゆっくり自分のペースで学ぶことができます。

【文芸演習1】

「対象を観察して書く」
文章を書くために最も必要なテクニック、それが「観察」です。対象をよく見る目を養い、そこから生まれる思考を豊かにするための理論を学びます。

小説の構造 「表現」の初心者でも大丈夫!文章表現とは限られた才能のある人だけのものではありません。誰もが自由に楽しむことができる、とても素直な社会的行為なのです。

STEP2

文芸で表現できるものを
さまざまに実践する。
文芸の世界は小説だけではありません。
事実をもとにしたノンフィクション文学やエッセイ、詩や俳句・短歌なども文芸です。それらの名作に学び、創作もしてみましょう。
また、豊かな、あるいは特異な経験をした人物にインタビューすることで、文芸作品が誕生することもあります。

【文芸特講2】

「文脈を読む」
文章表現が持つ「文脈」という、より大きく複雑な意味性に触れる練習をする講義です。「文脈」の存在を考えることで、読者に届く言葉の価値を学びましょう。

【文芸演習4】

「エッセイを書く」
多くの読者が言語化された「私」を求めているがゆえに、現代はエッセイの価値がかつてないほどに高まっている時代です。言葉を磨き、「私」を表現する楽しさを学びましょう。

全員で学び合う「相互論評」学生同士がお互いの文章を読み合い、意見を述べ合う「相互論評」は本学の特徴的な学びのスタイルです。書いて終わりではなく、お互いに読者になることで、読まれることの意味と意義とを学びましょう。

STEP3

自分のテーマを見つけ、
それを表現する方法を探る。
「卒業制作準備」でテーマを深め、作品の構想を具体的にします。作品は小説でも詩でも戯曲でもエッセイでも短歌でも俳句でも論文でも……言語を用いた表現であるならば、どんなものでも構いません。教員からの段階的な指導を受けつつ、表現したいという欲求を、思い切り実践しましょう。さらにairU上で他の学生と活発な意見交換を行うことで、各自のテーマをより深く多角的に検証していきます。

【卒業制作準備】

表現は気まぐれや思いつきだけで出来上がるものではありません。誰に・何を・どう伝えるかをよく考えた上で、丁寧な準備と綿密な計画から生み出されるものなのです。特にアイデアを練り上げる準備段階はとても大切です。教員や他の学生と活発な意見交換をしながら、各自のテーマをより深く多角的に検証していきます

STEP4

学びの集大成として、
卒業制作を完成させる。
学んだ成果を表現として完成させましょう。卒業制作は単位取得のためにするのではなく、表現者として歩み続けるための大事な一歩です。限られた時間の中で、どのように作業し、どのように完成させるか。プロセスそのものが表現への学びの場として機能します。

【卒業制作】

卒業制作準備で作成した計画に基づき、作品の完成に向けて、作業をします。制作期間は長くはありませんが、教員からの講評を受けたり、相談をしたりする機会は、複数設けられています。自分自身の表現を突き詰めるために、プロセスそのものをじっくりと楽しむようにしましょう。

入学~卒業までのステップ

4年間で学ぶことがら

  • はコース専門科目、芸術学科専門教育科目(アートライティング、芸術学、歴史遺産、和の伝統文化コースと合同で開講)です。

2022年度 卒業制作の紹介

  • 『ハリー・ポッター』と狼人間への差別
  • 龍の影
  • いちご千日手
  • 羊飼いのビルはウェディングの夢をみるか
  • 夏の余韻

1年間の学習ペース(2023年度)

【1年次入学】専門教育科目の1年間の履修スケジュール例

【3年次入学】専門教育科目の2年間の履修スケジュール例

学びの時間割

時間割

関さん(1年次入学)の単位修得例

1年目
15単位(T4/S10/WS1)
2~3年目
49単位(T21/S18/WS6/GS4)
4年目
36単位(T23/S4/WS8/GS1)
  • Tテキスト科目
  • Sスクーリング科目
  • WSwebスクーリング科目
  • GS藝術学舎科目

時間を有効に活用するため、仕事でも、卒業研究でも実践していたのが、移動する電車内でのスマホwriting。個人的にはかなり集中できました。(図:在学時の1日/平日)
※既修得単位認定制度を利用

関 範子
関 範子
神奈川県在住
2020年度卒業

学費の目安

入学選考料 20,000円
入学金 30,000円
保険料 140円
授業料 348,000円 × 4年間 = 1,392,000
スクーリング受講料 8,000円~16,000円 × 単位数

卒業までの合計金額の目安(4年間)
1,442,140円~

  • ※スクーリング受講料は、科目の種類や開講場所によって料金が異なります。
入学選考料 20,000円
入学金 30,000円
保険料 140円
授業料 348,000円 × 2年間 = 696,000
スクーリング受講料 8,000円~16,000円 × 単位数

卒業までの合計金額の目安(2年間)
746,140円~

  • ※スクーリング受講料は、科目の種類や開講場所によって料金が異なります。

卒業後、通信制大学院 文芸領域で
学びを深めることもできます。

大学、短期大学、専門学校等をすでに卒業している方は、京都芸術大学通信教育部(大学)文芸コースに3年次編入学ができるため、最短2年間で専門分野の基礎を身に付けられます。大学入学から大学院修了まで、最短4年間で学ぶことができます。
また、通信教育部卒業生は大学院入学時に入学金10万円が免除されます。

  • 書類審査

    書類審査
    (大学等の卒業証明書など)

    最短2年

    3年次編入学の出願資格に
    該当しない方は最短4年(1年次入学)

    通信教育部
    文芸コース

  • 書類審査

    書類審査
    (指定提出物など)

    最短2年

    大学院
    文芸領域

  • 角帽

大学院 文芸領域

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教員メッセージ

川﨑昌平専任講師

〈書く〉ことで、
新しい可能性を発見する。

川﨑 昌平
Kawasaki Shouhei
専任講師

1981年埼玉県生まれ。2004年東京藝術大学美術学部卒業、2006年同大大学院美術研究科修了。作家・編集者。主な著書に流行語大賞を受賞した『ネットカフェ難民』(幻冬舎)や出版業界の悲哀を綴った『重版未定』(全3巻、中央公論新社)、他に『労働者のための漫画の描き方教室』(春秋社)、『ぽんぽこ書房小説玉石編集部』(光文社)、『書くための勇気』(晶文社)、『同人誌をつくったら人生変わった件について。』(幻冬舎)、『重版未来 表現の自由はなぜ失われたのか』(白泉社)、『大学1年生の君が、はじめてレポートを書くまで。』(ミネルヴァ書房)、『売れないマンガ家の貧しくない生活』(KADOKAWA)などがある。

このコースでは何を学べますか?
「自分」を表現する。
想いや考えを文章でうまく表現したいというのは誰もが望むことではないでしょうか。文芸コースはこの願いを実現するためのコースです。小説やエッセイはもちろんのこと、詩や戯曲、旅行記、さらには文芸評論といったように、ジャンルや時代、国を問わず、さまざまな種類の文芸作品を読みます。それを通して書く技法を学び、文芸作品を書いてみます。卒業制作では、創作物(小説やエッセイなど)を書く人と、既存の作品の研究をする人がいます。読むことと書くことを通じ、自分と向き合い、「自分」を表現する。それが文芸コースの学びです。
通信教育でも、本格的に学べますか?
今、文芸コースだからこそ、通信教育です。
文芸コースの学習は、作品を読んで批評を書く、あるいは自分の作品を書く、それを教員に添削してもらう、ということが中心です。〈読む〉〈書く〉ことが学びの中心の文芸コースだからこそ、文字を媒介とした通信教育は力を発揮します。また、それは様々な外的要因にも対峙できるものです。レポートや作品の丁寧な講評は文芸コースの大きな特長です。また卒業制作では段階的なステップを踏みながら、その都度、教員による指導を受けつつ、じっくりと作品や論文を仕上げていきます。そのため、これまで小説や論文などを書いた経験のない方にも安心して取り組んでいただけます。
入学志望者へのメッセージを。
「伝える力」はあなたの人生を豊かにします。
 現代は「文章による表現」の需要が格段に高まっている時代です。紙の本や雑誌は確かに売れなくなっていますが、ではユーザーが「文章による表現」を欲していないかといえばそんなことはありません。むしろインターネット空間をはじめとして、力を持った言葉がかつてよりもずっと強く求められています。そうした時代にあって「文章による表現」を磨くという行為は、とりもなおさず社会と密接に関係する力を得ることを意味します。優れた「文章による表現」は、そのまま他者へあなたの思考を「伝える力」となり、あなたはよりアグレッシブに、よりアクティブに、社会とコミュニケーションできるようになるのです。文芸コースで「伝える力」を学びとり、あなたの人生を豊かにする新しい可能性を発見してみてください。

井上待子

井上 待子
文芸コース '14年度卒業
染織コース '17年度卒業
京都府在住70歳

定年後

「”なにしてんの、まち子先生!“と大声で昔の教え子に呼びとめられちゃった。せっかくキャンパスでは経歴を隠していたのに」と苦笑する井上さん。高校の体育教員として担任や部活を受け持ち、ほぼ休みなしの37年間。「たいした趣味もないし、定年後は母の世話にあけくれよう」と思っていた矢先、その母が永眠。「これからは、好きにしていいよ」と言われた気がして、一念発起して本学の文芸コースへ。「そういえば若い頃、文学を学んでみたかったなと。最初は不安でしたけどね、クラスメイトが難しい本ばかり読んでいるので」。お堅い文章は最後まで性にあわなかったものの、気どらない語り口のエッセイが高く評価され、卒業研究では優秀賞に。「そこでいただいた自信や、尊敬する作家であり染織家の活躍に背中を押されて」新たに染織コースで、学生ライフを延長することになった。

「じつは七夕生まれで、”織姫“になるのが長年の夢だったんです」。織機の扱いは大体知っていたものの、下絵などの”絵を描く“作業は中学生以来。最初はまるで描けなかったのが、課題で日課のようにつづけるうち、少しずつかたちをつかめるようになったという。また、別の課題で感動したのが、身近な雑草から生まれる色の美しさ。「ちょうど卒業制作にさしかかったとき、かつて住んでいた団地が取り壊されると聞いて」父が植えてくれた笹で糸を染め、着物に仕立てようと決めた。「笹の命を、家族の思い出を、色とかたちで残したいと思ったんです」。 卒業後は小物ばかりつくっていたが、傘寿を迎える姉のため、こんどは自分ひとりの力だけで、着物を織りあげることに。「文芸コースの学びも組み合わせて、小説をモチーフにした着物づくりに挑戦してみます。いつか、手づくりのエッセイ本もつくってみたい」と、たくさんの予定を楽しそうに語ってくれた井上さん。文(ふみ)織姫の冒険は、これからもつづく。

どこにいても×文芸=

佐藤愛子

佐藤 愛子
文芸コース(3年次編入学)
'19年度卒業 石川県在住37歳
佐藤愛子

卒業論文『木地師の台所』はエッセイ。「まだまだ未熟ですが、私の文章で夫の仕事や工房もアピールできたら、と思っています」。
〈木地師のお店 mokume〉
https://mokume-k.jimdofree.com/

文芸のある風景

「我ながらヘタクソで、先生にも呆れられて、それがなんだか気持ちよかった」と、入学当初を振り返る佐藤さん。卒業後のいまは、本職のデザインを活かして、地元を紹介する小冊子の編集から執筆までを手がけている。「書くことが苦手な自分を克服したくて入学。でもどこかで、ヘタなりに味のある文章が書ければ、という期待もあったかもしれません」。しかし現実はそう甘くなく、とても奥深いものだった。「泣きながら課題を書いたこともあります。文章を書くとは、自分を飾らず心の底から素直になること。それがすごく難しいのだとわかりました」。社会で過ごすうち、気がつけば、なるべく嫌なことを避け、限られた世界のなかで満足するようになっていた。けれど、ひとたび人に読んでもらう文章を本気でつくろうと思ったら、好きも嫌いもとことん向き合い、悩み抜かなくてはいけない。「さまざまな先生方の言葉に導かれ、人間として成長できたような気がします」。

「先生や学友に教わってばかり」という佐藤さんだが、自分から教えてあげたいこともある。「文芸って、机の前だけでやるものじゃないんですよ」。この街に移り住んで出会った、緑の中の渓谷、お気に入りの店、静かな町並み。自分に書く力をくれる対象をいつも身近に感じたくて、メモを片手に歩き回っているそうだ。「見飽きない自然、優しい人々、消えつつある伝統文化。書く材料はいっぱい揃っているので、あとは、何からどう伝えるか」。じつは、本コースに来たもうひとつの理由が、都会暮らしをやめて木地師(ろくろで椀や盆の木地をつくる職人)となった夫のこと。「ずっと近くで見つめてきた私が、書いて、語り継がなくちゃ、と思っているんです」。苦心の末にまとめた卒業論文も、ほんの序章。何年もかけて、じっくりかたちにしていきたい。緑の中、心の奥から紡ぎだされる佐藤さんの物語は、いつか、多くの人に届けられていく。

自分の可能性×文芸=

中村淳平

中村 淳平
文芸コース(3年次編入学)
'15年度卒業 奈良県在住44歳
中村淳平

本学卒業後は大学院に進学し、中上健次をテーマに研究をすすめている。「研究論文を仕上げたら、中上作品をもとに創作を1本書き上げ、研究のまとめとしたいです。今はまだ、本当にできるのやら……という感じですが」。

私から生まれる物語

1年間の休学をはさみ、コース開設時から学んできた中村さん。もしかすると先生より、本コースで得るものを知っているかもしれない。40歳を前にして「定年を待つより、今の自分にしか書けないものを書いてみたい」と入学。テキスト科目で理論を学び、文章との向き合い方がまるで変わったという。「何より大きかったのは、文学を論じるための言葉を手に入れたこと」。たとえば《語り手》《視点》《ストーリーとプロット》など。小説を組み立てている要素を言葉で理解することで、単に〝面白い〞だけでなく、〝なぜ面白いのか〞を読み解けるようになった。中村さんいわく、それは「文芸を考えるための補助線、ツールのようなもの」。本を読むだけでなく、書いて思いを言葉にするときにも使えるという。「もちろんツールなので、どう使うかは本人次第ですが」。中村さんの場合は、卒業研究のテーマにまでつながった。

一方、スクーリングで得たのは、文章を書き、読んでもらう楽しさ。あるエッセイの授業で「彼女のブラジャーを洗う」話を発表したところ、予想以上の好反応。休学の後でも「あ、ブラジャーの人」と声をかけられ、心に残る文を書くよろこびを知った。「自分の中から物語が出てくる、という初めての感覚も課題で味わえました」。深く読み、書くたびに、知らない世界が開かれる。そこで得た思考は、現実世界にもつながっていく。「より柔軟にものごとを考えられ、生き方が豊かになったと感じます」。

やがて迎えた卒業研究では、《時間》をテーマに小説を創作。「テーマを課すことで、本来なら到達できなかった所まで、物語を運んでいけたと思います」。まずは自分の言葉で書き、読んでもらう。すべてはそこからはじまるから。その環境を与えてくれた本コースに感謝している、という中村さん。これからどう書き、どこまで届くかは分からないけれど、補助線の先にある、自らの物語を追いつづける。

考古学好き×文芸=

譽田亜紀子

譽田 亜紀子
文芸コース(3年次編入学)
'12年度卒業 奈良県在住41歳
譽田亜紀子

本学卒業後、出版社への持ち込みで14年『はじめての土偶』を上梓。15年『にっぽん全国 土偶手帖』(共に世界文化社)、16年『ときめく縄文図鑑』(山と溪谷社)につづき、今後も続々と刊行予定。

文芸が開いた新しい扉

「この2年間の学生生活で、本当に人生が変わった」と、力強く語る譽田さん。卒業後に執筆した〝土偶〞の入門書が、同ジャンルでは異例の売れ行き。現在も次々に新作を手がけ、メディアからも注目されはじめている。入学前から企業の広報部で宣伝文などを書いていたが、誰かに文章を教わった経験はゼロ。「知人にすすめられて、軽い好奇心で跳び込みました」。

入学してまず驚いたのは、クラスメイトの読書量。「追いつかなきゃ、という思いと課題をこなすため、人生で一番、本を読みましたね」。そこで、自分からは手にしない本が新たな世界の扉を開いてくれることを知った。「後の執筆活動を支える本にも出会えました」。さらに意外だったのが、学びの幅広さ。「作家だけじゃなく、研究者や編集者の話も聞ける。それぞれの立場から、文芸のリアルな世界を教われて、すごく貴重な体験でした」。やがて、共通科目の授業で興味のあった「考古学」を選んだことが、譽田さんの運命を大きく動かす。「先生の話がすごく面白くて、授業終わりに『私、土偶の本をつくりたいんです!』と、いきなり告白したんです」。親身な先生のおかげで、さまざまな専門家と出会い、5〜6年かけて本の出版にこぎ着けることができた。

また、文章を書くスキルにおいても得るものがあった。「あまり長文を書いた経験がなくて。400字から800字、1600字と、少しずつ長文に慣れさせるカリキュラムは、巧みだなと感心しました」。「作家である先生方の赤裸々な苦労話をうかがって、やはり創作は尊い仕事だと感動。入学したときはまったく頭になかったけど、いつか、物語を書いてみたいと思っています」。この大学で未知の本と出会い、人と出会い、それを生かす自らの努力で、運命をつかんだ譽田さん。新しい夢との出会いが、またつぎの扉を開いていく。

報道の仕事×文芸=

伊東秀一

伊東 秀一
文芸コース(3年次編入学)
'10年度卒業 長野県在住 50歳
伊東秀一

卒業後は大学院へ。仕事ではテレビの報道局に勤めるかたわら、地元の大学でメディア論を指導。「文字通り、本学の教えを〝ぬすんで〞フル活用させてもらっています」。

ペンよりも強く

「言葉って、重いんだ」。本コースに来て、自分が向き合うものの難しさをあらためて思い知らされた伊東さん。仕事面でもプライベートでも、本学でふれるすべてのことに多くの刺激を受けたという。まずは文芸の幅広さ。「じつはドキュメンタリーに関心が強くて、小説とか創作ものは書くどころか読むことさえあまりなく」。あるスクーリングで、創作文を即興で書くお題を出され、原稿用紙を前に七転八倒。「800文字を埋めるのがこんなに大変だとは!と思いましたね」。一方では、雑誌の編集者や作家など多彩なジャンルのプロから、制作現場の話を聞ける楽しみも。「〝書く〞という行為の裏側に何十倍もの〝見る 聞く 知る〞努力が必要だと知りました」。多彩なクラスメイト、おもちゃ箱のようなキャンパス、情緒豊かな京都の街にも始終ワクワクさせられた。

とはいえ、働きざかりの学生生活は決して甘いものではない。睡眠時間を削り、早朝や帰宅後の深夜に1時間ずつ、本とパソコンに向かう日々がつづく。忙しくてめげそうになったとき、頭に浮かぶのは先生の言葉。「プロは書けない日も必ず机に向かいペンを持つ」。そうして卒業段階に至り、言葉をテーマに研究をまとめあげた伊東さん。「仕事ではついマニュアルどおりに受け流していた言葉のひとつひとつを、よく考え、選んで使うようになりました」。言葉で伝える難しさ、そして、伝えられることの大きさを知り、表現者としての新たな意欲が芽ばえた。「あいまいな使い方で言葉から逃げずに、もっと人にはっきり伝える努力をしていきたいです」。その手には、剣よりペンよりなお強い、言葉への想いが握られている。

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学習内容や学習の進め方、入学に関する疑問を解決!

卒業生の声
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