
建築デザインコース
IT業界で働きながら、一級建築士資格取得をめざす
「何十年ぶりだろう。こんな風に仕事ぬきで、純粋に何かを学ぶなんて」。多忙なIT業界で働きながら、再び学生になることを決めた藤本さん。学びとして「建築」にふれ、新鮮な喜びをかみしめていた。といっても、それはまだ入学して間もない頃のこと。「正直なところ、通信だから楽にこなせるものだろう、と甘く見ていたんです」。建築デザインの魅力に目覚めたきっかけは、仕事の気晴らしにと手にした一冊の作品集。「いつか小さな別荘を自分で設計できたら、などと妄想していたら、たまたま”通信で芸大“それも建築が学べると知って」。勢いよく飛び込んだのは良かったものの、学べば学ぶほど、建築というものの奥深さに圧倒されていった。
「たとえば窓の高さ、柱の位置など。図面の線をひとつ引くにも”なぜそこなのか、そのかたちなのか“、はっきりした意図がなくては。理由を聞かれて答えに詰まるようではダメなんです」。もちろん「好きだから」「美しいから」といった主観では済まされない。論理的に考えを構築し、相手に伝える力を磨けたことは、仕事にも役立っているという。「最大の難関だった卒業制作も、同じように生活を抱えてがんばる学友たちと声をかけあい、なんとか乗りきることができました」。
かくして、無事に学びを遂げた藤本さん。「人間と建築との関係性を、もっと自分のなかで掘り下げたい」と大学院へ。研究を深めながら、一級の建築士資格取得をめざしている。「いまの仕事にもやりがいを感じているので、すぐに転職を、と考えているわけではありません。ただ、これからの長い人生、ずっと自分なりの形で建築と関わっていけるようにと」。建築の豊かさを学んだからこそ、長い目線での付き合いを考えるようになった、という藤本さん。「やっとドアを開いたら、はるか向こうにまた次のドアが見える。すごい世界に入り込んでしまいました」と晴れやかに笑う。
藤本 英樹
建築デザインコース 18年度卒業
兵庫県在住 47歳
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