
芸術学コース
美術品輸送業に就職。自ら考え、調査する力が支えに
「衣を脱ぎ去った聖人―聖セバスティアヌスの図像表現の変遷―」と題した論文で先生をうならせた渡邊さんは、22歳で入学。「制作は苦手だけど、美術が大好き。一般大学を卒業する頃に、芸術学という分野があるのを知って」。どうせなら幅広い年代の社会人と学び直そう、と本学へ。美術館を訪れるスクーリングで、自分ひとりではなく、さまざまな人の視点から作品をみる面白さを知った。かたや、予想外に手こずったのは、慣れているはずのテキスト科目。「課題の意図を読み解けなくて」。どこか受け身だった現役時代の学びとは違って、すべてをゼロから考え、調べるのが研究の原点。そんな紆余曲折こそが、成長の実感へとつながる。「自分で見つけた!という興奮を味わってからは、レポートが苦じゃなくなりました」という渡邊さん。ついに卒業論文で、惚れ込んでいた聖人の絵と向き合うことに。
出会いは、旅先の美術館。「なぜここに、こんなイケメンが?」という第一印象からはじまった、聖人との恋。論文テーマに決めてからは、日本語の文献が少ないという言葉の壁にぶつかり、好きな気持ちに客観的な思考を邪魔され、空回りばかり。初心を取り戻そうと、ありったけの聖人の絵を集めて見直したところ、不思議な発見をした。「描かれた時代がすすむにつれ、どんどん若く、薄着になっていくんです」。まさに「なぜイケメン?」という初対面での疑問が、先生も認める新たな視点となったのだ。ユニークな論文を仕上げた卒業後は、美術品を運搬する企業に就職し、晴れて社会人の仲間入り。「仕事こそ勉強の連続ですね、いちいち教われないことも多いけれど」。自分から考え、調べる姿勢が、大きな支えになっているという。「これからも考えつづける人生を送り、いつか大学院で学びを深めたい」という渡邊さん。その時は何をテーマに?という問いに、「やっぱり、この聖人かも」と照れながら微笑んだ。
卒業生インタビュー

渡邊 惟紗子
大阪府在住 26歳
芸術学コース
(3年次編入学)
19年度卒業
芸術を学んだことがアピール点となり、志望していた現在の会社に就職。「なぜその位置に展示するのか、理由まで学芸員さんが教えてくださるので、いろんな意味で勉強になります」。