
陶芸コース
初の陶芸。苦悩を乗り越えて実りある卒業制作を完成
窯から出てくる直前まで、それは「悩みのタネ」だった。もともと初心者だった土岡さんを一年間、悩ませつづけた卒業制作。本コースに来るまでは、そんな創作の苦しみどころか、土にふれた経験すらなかった。自宅で制作中に土が割れて途方にくれ、メールで先生に救いを求めたテキスト科目。人生初のろくろに振りまわされ、最後の最後でなんとか仕上げたスクーリング。未経験ゆえの苦労は数えきれないが、少しずつ、手の中の土が思うようになっていくことに、かつてない気持ちの高まりを感じた。「とにかく毎日、土にふれない日はありませんでした。ふれるのが安らぎでもあったし」。けれど卒業制作だけは、そんな安らぎさえも吹き飛んでしまう、苦悩の連続だったという。
「いま振り返ると、背伸びしすぎていたんでしょうね」。大好きな小説をテーマにしたものの、実体験とはかけ離れた世界を、どうしても上手くかたちにできない。「ちょうど私生活でも心配ごとがあって、家族にきつく当たってしまい、そんな自分にも嫌気がさして」。中間発表が迫るなか、夜中まで思い詰めて、ふと気づいた。「私にはタネがある」。ずっと好きで集めていた植物の種子、何度かモチーフにしていたのに、あまりにも身近で忘れていたのだ。「いまのトゲトゲした自分や、その殻を破りたいという想いを、ありのまま表現してみよう」。新しいテーマに力を得て、醜い殻に包まれた美しい実を、丹精込めてつくりあげていった土岡さん。焼成で窯から出てきたその姿を見て、考えが180度変わってしまった。「トゲを立てたその殻さえ、懸命に私の成長を守る、愛おしいものとして感じられたんです」。そんな想いを映すように、彩色を変え、名前を変えた作品は、自己最高の評価をもらえた。「一年かけて取り組んだからこそ、ここまで突き詰めることができました」。卒業制作「希望のタネ」は、これからも、土岡さんの中で育ちつづける。
ギャラリーまで確保していたグループ展が、コロナの影響で延期に。「来年まで開催が延びたぶん、いっぱい制作することに。いまは掻き落としの花器に取り組んでいます」。