
染織コース
ゼロからの染織、卒業後ワークショップや販売を実現
「まさか自分が、着物一反を織ることになるなんて」。華やかな広告の世界で、その裏側を支えるデザイン業務に忙殺されてきたYさん。「つねに新しいものが求められ、世代交代も早い業界。そろそろ〝仕事以外の何か〞を見つけよう、と思ったんです」。どうせなら、新しいことを本格的にやってみたい。そんな気持ちから選んだ染織は、これまでの生き方とは、ほとんど正反対の世界だった。「とくに織物は、何ヵ月もかけてつくりあげていきます。きちんと織物を織りあげるということは、入念な準備や計算が必要なんです」。ずっとスピード感や斬新さを追いかけてきた自分に、こんな途方もない作業ができるだろうか。不安を感じる間もなく、課題をこなしていった。
Yさんのように、ほとんどの同級生は初心者だった。未知の課題にオロオロする学生たちを前に、先生がかける言葉は「まあ、やってみなさい」。仕方なく、どうすれば上手くいくか、あれこれ試す。何度も失敗する。そのことが、〝自分で考える〞という経験をもたらす。「手法を習うだけなら、街の教室でもいいかもしれません。その先生のやり方を習うことになりますが」。自由に挑み、自分なりの答えを見つけられるから、さらに先へと進める。「以前の私なら、途中で嫌になっていたかもしれません。少しずつ、根気がついてきたのだと思います」。織る布が長くなるとともに、気力も技術も伸び、ついに卒業制作では13mもの着尺を織りあげた。
輝く絹糸で描きたかったのは、奄美の離島から帰るプロペラ機の窓から見た、360度ピンク色の空。「藝術学舎で出会った草木染めで、思いがけない自然の美しさを表現したかった」。卒業したいまは、「草木染め」のワークショップや販売に力を入れつつ、「織」ではとことん作品づくりを追求したいというYさん。たぐりよせる糸の先は、無限の可能性につながっている。

C.Y
東京都在住 47歳
染織コース
(1年次入学)
18年度卒業
染織作品はネットの他、セレクトショップでも販売。「作品をつくりつづけるためにも、買ってもらえるとうれしいです。ロゴやHPづくりに本職が役立ちました」。
[セレクトショップのサイト]https://somenaya.amebaownd.com/